ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2000年11月14日

必殺仕掛人

(ひっさつしかけにん) 1972年

掲載2000年11月14日

 池波正太郎の傑作をもとに許せぬ悪を挑む殺し屋の姿を描く。
 元締めで島帰りの夫婦(山村聡・中村玉緒)、鍼医梅安(緒形拳)、浪人、西村左内(林与一)らの表と裏の顔、仕掛の技など、必殺シリーズ元祖の面目はさすが。11月13日の放送は記念すべき第一回「仕掛けて仕損じなし」。ヒールの浜田寅彦、高品格の悪辣ぶり、深作欣二監督の緊迫感あふれる演出が冴える。深作監督といえば最新作「バトルロワイアル」が公開中だけど、仕掛人の必殺技はそっちでも生かされているのかしらん?
 演出の深作監督が意気昂揚なら、主演の緒形拳も相変わらず元気で、競馬のCMで松嶋菜々子と共演しているし、今秋には紫綬褒章も受けている。「仕掛人」当時は三十代で、立ち回りも濡れ場もノリまくりだった。母親に捨てられ、鍼の師匠に拾われたのはいいが、女に裏切られ、初めて殺しに手を染めた梅安。殺しで得た金を花街で散財する刹那的な生き方を、緒形拳は調子よく演じていた。まさにハマリ役ってヤツ。講談社から出ている原作文庫本のカバーに描かれている梅安のイラストも、緒形拳そっくりだもんね。まあ、褒章もいいけど、あんまり偉くなってほしくないというのが、ペリーを含めたファンの本音かも。
 各ストーリーの充実ぶりはシリーズ屈指だが、とくにオススメなのは、田村高廣がゲストの21話「地獄花」。必見なのだ!

掲載2000年11月07日

必殺必中仕事屋稼業

(ひっさつひっちゅうしごとやかぎょう) 1975年

掲載2000年11月07日

 そば屋の半兵衛(緒形拳)と侍くずれの政吉(林隆三)は博打好きの飛脚屋、おせい(草笛光子)の下の殺し屋。剃刀の半兵衛と女用の懐刀を使う政吉。懐刀は、おせいが別れた息子に託したもの…。ギャンブルと殺し。ふたつの非情な世界を描き、必殺ファンを唸らせた名作。母と名乗れぬおせいの心情、幸薄い半兵衛の女房(中尾ミエ)の描写もすべてが絶妙。
 本作では、緒形拳も林隆三も、殺しに関してはどこか危なっかしいアマチュアだ。そのヒヤヒヤ感は、必殺シリーズのなかでは新しかった。筋立ても凝ったものがおおく、悪人を殺すのではなくて博打で”殺す”という痛快なもの。林隆三が転がり込む情婦の、芹明香のうらぶれたカンジ
”半ちゃん、元気?”
と、にじりよってくるオカマ岡っ引きの大塚吾郎、草笛光子の忠実な番頭で、実は元盗賊の岡本信人ら、ワキ役の充実ぶりも見逃せない。とくに工藤栄一監督が演出した最終回はお見逃しなく!

掲載2000年07月10日

風鈴捕物帳

(ふうりんとりものちょう) 1978年

掲載2000年07月10日

 岡っ引きの新吉(西郷輝彦)が、おりん(水沢アキ)という娘を助ける。実はおりんは、忍者、服部半蔵の孫娘で縁談嫌さに飛び出したのだった。新吉の長屋に転がり込んだおりんは、得意の忍者姿となって、江戸の悪と戦うことになった。原作は石ノ森章太郎の劇画作品だから、ストーリーの面白さはたっぷり。美男の岡っ引きとキラッとお色気の光るくノ一の活躍は世代を超えて楽しめる。新吉の持つ70センチの超ロング十手、やたら元気のいいくノ一など、若さあふれる娯楽時代劇。
 当時、西郷輝彦は「どてらい男」で役者として躍進中。初の岡っ引き役に大乗りだった。一方、さわやかな存在感が人気の水沢アキも、初のくノ一役に大暴れ宣言。若いふたりのキャラクターどおり、後味のいい作品に仕上がっている。伴淳三郎と片岡千恵蔵の出演もファンにはうれしい。ちなみに脚本は現在「水戸黄門」など長寿番組を執筆する葉村彰子(数人の脚本家共有のペンネーム)。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。