ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2021年01月22日

「スローな武士にしてくれ~京都 撮影所ラプソディー~」
伝統ある京都の撮影所に、時代劇オタク技術者が最新映像機器を持ち込んで新企画スタート
悪戦苦闘しつつも作品作りに燃えるスタッフ、キャストの熱き魂を描く新感覚ドラマ

(すろーなぶしにしてくれ~きょうと さつえいじょらぷそでぃー~ ) 出演者:内野聖陽、柄本佑、中村獅童、水野美紀、本田博太郎、伊武雅刀、石橋蓮司、里見浩太朗 ほか  2019年

掲載2021年01月22日

スローな武士にしてくれ~京都 撮影所ラプソディー~
「スローな武士にしてくれ~京都 撮影所ラプソディー~ 」
©NHK

 ある日、NHK技術者(柄本拓)から歴史ある京都の撮影所にNHKから新企画が持ち込まれた。海外育ちの彼は最新技術でコテコテの時代劇が撮りたいと張り切る時代劇オタク。撮影所所長(伊武雅刀)はじめ、監督(石橋蓮司)、キャメラマン(本田博太郎)らベテランスタッフが協議し、大部屋俳優シゲちゃん(内野聖陽)を主役に新選組ドラマを撮影することになる。とはいえ、アナログ人間のスタッフは、ドローンなど最新機器の扱いに戸惑い、ズッコケ連発。肝心のシゲちゃんも「殺陣は超一流だが、セリフはまったくダメ」という男で、結局、一言もしゃべらない近藤勇が斬りまくる展開に。最先端のハイスピードカメラとワイヤーアクションの「池田屋階段落ち」など名場面は、実現するのか!?

 私はたまたまこの撮影現場に居合わせた。現場は「水戸黄門」はじめ、数々の名作が撮られたオープンセット。すっと現れた内野は、大河ドラマの主役も演じた時代劇大好き俳優だけに、貫禄十分の近藤勇。ただし無言。殺陣も素晴らしく、試し斬りで水を入れた氷枕を斬るシーンは息をのむほどの美しさだ。そんなシゲちゃんは元アクション女優の妻(水野美紀)に頭が上がらず、大部屋の後輩(中村獅童)からも叱られるハメに。思わぬ結末になるコメディだが、その奥底にいい作品のために情熱を燃やす面々の熱き魂が感じられて、時代劇好きにはたまらない。気持ちいい新感覚ドラマだ。

掲載2021年01月15日

「サムライマラソン<PG-12>」
日本初のマラソン大会「安政遠足」の裏に藩取り潰しを狙う陰謀が!
秘密をもつ藩士ランナーの佐藤健はじめ、長谷川博己、豊川悦司ら豪華キャストによる大作

(さむらいまらそん ) 出演者:佐藤健/小松菜奈/森山未來/染谷将太/青木崇高/竹中直人/豊川悦司/長谷川博己 ほか  2019年

掲載2021年01月15日

サムライマラソン<PG-12>
「サムライマラソン<PG-12> 」
©“SAMURAI MARATHON 1855”Film Partners

 時は幕末。ペリー率いる黒船来航で日本中が大騒ぎになる中、「アメリカは和平ではなく、侵略を目論んでいる」と確信し、国を守るためには「心身の鍛錬が大切」という藩主・板倉勝明(長谷川博己)が率いる安中藩では、十五里の山道を走る遠足が開催されることに。「優勝者はどんな願いも叶えられる」という藩主の言葉を信じた藩士たちは張り切る。そんな中、芸術が大好きな雪姫(小松菜奈)は、江戸、さらには異国を目指すため、こっそり城を抜け出す。一方、行き違いから幕府はこの遠足を「謀反」と解釈。幕府大老・五百鬼祐虎(豊川悦司)は、安中藩を取り潰すべく、凄腕の刺客を放った。妻(門脇麦)にも上司(青木崇高)にも言えないある秘密を抱えた藩士・唐沢甚内(佐藤健)は、老中の陰謀を悟り、悩んだ末に密かに動き出す。そして、スタートの太鼓が鳴った!

 原作は「超高速!参勤交代」の土橋章宏。監督は「アンナ・カレーニナ」のバーナード・ローズ。日本初のマラソン大会といわれる安政遠足の史実をもとに、佐藤はじめ、傲慢な重臣の息子・平九郎(森山未來)、優勝候補の足軽(染谷将太)、心に痛みを抱えた老藩士(竹中直人)ら豪華キャストが疾走する。みどころのひとつは、多くの犠牲を出しながらも、まとまっていく藩士たちの姿と山野での激しい闘い。騎馬を駆使した緊迫感あふれるアクションを織り交ぜた大型エンターテインメント。

掲載2021年01月08日

「剣客商売 婚礼の夜」
北大路欣也の秋山小兵衛、貫地谷しほりのおはるのほっこりした日々に事件勃発
大治郎役の高橋光臣、佐々木三冬役の瀧本美織ら新レギュラーの成長ぶりもみもの

(けんかくしょうばい こんれいのよる ) 出演者:北大路欣也 貫地谷しほり 瀧本美織 高橋光臣 古谷一行 國村隼 2020年

掲載2021年01月08日

剣客商売 婚礼の夜
「剣客商売 婚礼の夜 」
©フジテレビ/松竹

 剣の達人、秋山小兵衛(北大路欣也)が、道場を息子の大治郎(高橋光臣)に譲り、年の離れた女房おはる(貫地谷しほり)と隠宅で悠々自適の暮らしをしながら、事件に向き合う池波正太郎原作の人気時代劇。本作は、剣の弟子でもある目明かしの弥七(山田純大)らが追う僧侶の殺害事件と、その犯人とおぼしき凶悪な浪人たちに大治郎の親友・浅岡鉄之助(内田朝陽)が狙われていることを知った小兵衛が、調べを進めていく。一方、大治郎が師範代を務める老中・田沼意次(國村隼)の道場では、意次の妾腹の娘である女剣士・佐々木三冬(瀧本美織)が稽古に励んでいた。

 みどころは、めでたい婚礼の準備と同時進行で悪人退治が進むこと。小兵衛や大治郎の人を思う姿があたたかい。また、北大路小兵衛は、友との交流もていねいに描かれるところが味でもある。冒頭、「古い友がまた一人減った」とぼやきながら墓参りをした小兵衛は、独り者の医師の小川宗哲(古谷一行)を訪ね、「おお月だ」と縁側で月見酒としゃれこむ。そのしみじみしたシーンは、「剣客商売」ならでは。山下智彦監督のこだわりだ。

 高橋と瀧本はこの作品からレギュラーに。高橋はNHKBS「神谷玄次郎捕物控」に主演し見事な殺陣を披露、瀧本も「妻は、くノ一」で忍びアクションに挑んでいる。今後の時代劇の柱となる若手俳優陣がベテランとの共演で、どう成長していくかも楽しみになる。

掲載2021年01月01日

「旅がらす事件帖」
小林旭TV時代劇初主演作。影の道中奉行が渡世人姿で旅をしながら悪を斬る!
「まじめに地獄へ行けよ」の決めセリフと阿木燿子・宇崎竜童コンビの主題歌も聴きモノ

(たびがらすじけんちょう ) 出演者:小林旭/夏純子/叶和貴子/尾藤イサオ/三浦洋一/長門裕之/小沢栄太郎 ほか  1980年

掲載2021年01月01日

旅がらす事件帖
「旅がらす事件帖 」
©国際放映

 世が乱れ、庶民が困窮した天保年間。老中首座となった阿部伊勢守(小沢栄太郎)を叔父に持つ旗本の神保直次郎(小林旭)は、幕府から「影の道中奉行」の密命を受け、渡世人に身をやつし、関八州、東海道と旅に出る。彼と道連れになったのは、尾上兵佐衛門(長門裕之)と娘の志寿太夫(夏純子)の旅芸人・湯島天神太鼓一座。実は兵左衛門には元お庭番という過去があった。直次郎は、諸国にはびこる悪を退治していく。

 日活映画のスター・小林旭のテレビ時代劇初主演作。直次郎は渡世人のときは白の着物の裾をからげ、涼し気な二枚目。そして悪人の前にたつときも颯爽として武家マゲと白い着流しで登場する。悪に「何者?」と問われれば、「三途の川の船頭だ!」と答え、最後は「まじめに地獄へ行けよ」のセリフで決める。手にした将軍拝領の刀をよく見れば、クロスした十手に葵の御紋が!! 精悍なスタイル、早変わり、決めセリフ、葵の御紋と時代劇ヒーローの要素をすべて持った直次郎。もちろん、阿木燿子・宇崎竜童による主題歌「みだれ雲」はアキラ節炸裂だ。脚本は「水戸黄門」の宮川一郎、「鬼平犯科帳」の安倍徹郎、「眠狂四郎」の星川清司らが手がけた。岡江久美子、加賀まりこ、栗田ひろみら毎回共演の女優陣も演技派が揃う。ナレーションは日下武史。マキノ雅弘が演出した最終回「直次郎 暁に旅立つ」では、凶悪なニセ直次郎が出現。その裏に大物の存在が浮かび上がる。

掲載2020年12月25日

「散り椿」
亡き妻の願いを叶えるために剣をとる男、彼を思う人々、うごめく黒い影...
木村大作監督が富山の自然を活かし、オールロケで挑んだ「美しい時代劇」

(ちりつばき) 出演者:岡田准一 西島秀俊 黒木華 池松壮亮 麻生久美子 緒形直人 柳楽優弥 芳根京子 駿河太郎 渡辺大 2018年

掲載2020年12月25日

散り椿
「散り椿」
©2018「散り椿」製作委員会

 かつて藩の不正を訴えたが受け入れられず藩を出た瓜生新兵衛(岡田准一)は、死期の迫った妻・篠(麻生久美子)に、篠の元許嫁で親友だった采女(西島秀俊)を助けてほしいと頼まれる。突然帰郷した新兵衛に戸惑う篠の妹(黒木華)らだが、次第に彼の生き方に共感するようになる。だが、不正の闇が新兵衛に迫る...。

 監督は黒澤明監督作品で撮影技師として腕を磨き、09年「劔岳 点の記」から映画監督としてこだわりの作品作りを続ける木村大作。「散り椿」は念願の初時代劇監督作だ。「この人でなきゃ」と自身がオファーした豪華キャストと「俺がやるからには、まったく新しい時代劇、美しい時代劇を創ろうと思った」という監督が手がけた撮影は、富山を中心としたオールロケ。冒頭、雪の中で新兵衛が追手と遭遇するシーンでは泡でできた人工の雪を大量に降らせ、とても五月に撮影されたとは思えない。また、監督自身も采女の父親役で出演。散り椿のもとでの新兵衛と采女のずっしりと重みのある殺陣は、大きなみどころだ。エンドクレジットが各人の自筆というのもこだわりのひとつ。岡田は主演、殺陣、撮影と三か所に名前が出る。四季の景観や歴史ある家屋など、こだわりの映像美と人間ドラマは高く評価され、第42回モントリオール世界映画祭では「審査員特別賞」を受賞した。強きサムライの秘めた純情や男の友情がしみじみと伝わる感動作。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。