ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2020年10月30日

「関の彌太ッぺ」
妹思いの心優しき男を人斬りに変えた残酷な運命を中村錦之助が魅せる
原作・長谷川伸、監督・山下耕作。美しい色彩、しみるセリフ満載の東映股旅時代劇の傑作

(せきのやたっぺ ) 出演者:中村錦之助[萬屋錦之介]/十朱幸代/木村功/月形龍之介/夏川静江/大坂志郎/安部徹/堀正夫 ほか 1963年

掲載2020年10月30日

関の彌太ッぺ
「関の彌太ッぺ 」
©東映

 十年前、親と死に別れ、祭礼の最中に妹のお糸と生き別れてしまった渡世人の彌太郎(中村錦之助[萬屋錦之介])は、妹を探す旅を続けていた。途中、妹によく似た少女・小夜が川でおぼれかけたところを助けた彌太郎だが、妹のために大切にしていた五十両を盗人であるお小夜の父・和吉(大坂志郎)に盗まれてしまう。だが、和吉は森介(木村功)に斬られ、金を奪われる。瀕死の和吉は、彌太郎にお小夜を品川の旅籠「沢井屋」へ連れていってほしいと頼む。沢井屋はお小夜の祖父母の家だった。「おとっちゃんは」と聞くお小夜を「辛いことは忘れるこった」と励ましつつ、名前も告げず、送り届けた彌太郎。それから十年。苦労した糸が病死していたことを知った彼の心は荒み、人斬りと呼ばれる男になっていた。再会したお小夜(十朱幸代)に思わぬ危難が迫っていると知った彌太郎は...。

 原作は股旅ものの名作家、長谷川伸。監督は山下耕作。赤い風車、むくげの花、彼岸花、シルエットでみせる哀愁など、色彩の美しさは格別。十朱はふっくらとしたほほも初々しい娘・お小夜に。「どうか、お名前を」「渡り鳥に名前はありません」そのあとに続く、彌太郎の「たったひとつの願い」が切ない。人を思いながら、分をわきまえて身を引く彌太郎の心中が心に響く。明るい印象の錦之助が、凄みのある渡世人に見事に変化してみせた。昭和映画全盛期の股旅ものの傑作。

掲載2020年10月23日

「精霊の守り人Ⅱ 悲しき破壊神」
綾瀬はるか演じる女用心棒が守る少女には不思議な破壊力が!彼女に陰謀が迫る
人と精霊が共存する世界で戦いを続ける者たちを描く大河ファンタジー第二弾

(せいれいのもりびとⅡ かなしきはかいしん ) 出演者:綾瀬はるか/東出昌大/真木よう子/柄本明/橋本さとし/中村獅童/鈴木亮平/高良健吾/伊武雅刀 ほか  2017年

掲載2020年10月23日

精霊の守り人Ⅱ 悲しき破壊神
「精霊の守り人Ⅱ 悲しき破壊神」
©NHK

 人と精霊が共存する異世界。父を殺され、短槍の遣い手である養父ジグロ(吉川晃司)に育てられた主人公の女用心棒バルサ(綾瀬はるか)は、実父の帝(藤原竜也)に狙われた新ヨゴ国の第二王子チャグムを守って旅をした。それから四年、父の敵・腹黒男ログサム(中村獅童)を狙ったことでお尋ね者となったバルサは、恐ろしい能力を秘めた少女アスラ(鈴木梨央)を守ることになる。ふたりの前に現れる怪しい女シハナ(真木よう子)。シハナの狙いは、アスラの力を利用してロタ王国の二枚目王弟イーハン(ディーン・フジオカ)を王にすること。一方、成長したチャグム(板垣瑞生)は、タルシュ帝国の密偵ヒュウゴ(鈴木亮平)に捕えられ、ロックスターのような帝国の第二王子ラウル(高良健吾)に「父を暗殺し、次の帝にならないか」と恐ろしい誘いを受ける。

 作家・文化人類学者の上橋菜穂子による原作は、野間児童文芸新人賞をはじめ、アメリカ図書館協会バチェルダー賞などを受賞。英語・スペイン語・イタリア語・中国語などに翻訳され、世界中にファンを持つ。NHKは大河ドラマで培ったノウハウと最新の映像技術を駆使し、4K撮影の実写ドラマとして制作。また、各国を参考に、架空の国の文化や生活を想定、衣装もセットもゼロから専門チームがデザインした。筋を通す綾瀬VS陰謀をめぐらす真木、ワイルドな衣装に身を包んだ身体能力抜群女優の戦いも大きな見どころ。大河ファンタジーの醍醐味が詰まった大作だ。

掲載2020年10月16日

「火怨・北の英雄 アテルイ伝」
不屈の魂で故郷を守るために戦った古代東北の英雄・阿弖流為を大沢たかおが熱演
東北ロケで豊かな自然の情景を織り込みつつ、愛と平和、侵略の非情を描く歴史巨編

(かえん・きたのえいゆう あてるいでん ) 出演者:大沢たかお/北村一輝/内田有紀/大杉漣/髙嶋政宏/石黒賢/近藤正臣 ほか  2013年

掲載2020年10月16日

火怨・北の英雄 アテルイ伝
「火怨・北の英雄 アテルイ伝 」
©NHK 原作/高橋克彦「火怨 北の燿星アテルイ」(講談社刊)

 奈良時代末期、東北の蝦夷(えみし)と呼ばれる一族は、稲作や狩猟を共同で行いながら平和に暮らしていた。しかし、日本全土の平定を狙う大和朝廷は彼らに移住、従順を迫る。胆沢・大墓の族長の息子、阿弖流為(あてるい・大沢たかお)は弓の名手で、ヤマトに無理に連れて行かれた妹・阿佐斗(あさと・高梨臨)の奪還のため、呰麻呂(あざまろ・大杉漣)の乱に加勢、ヤマトの城に火を放つ。記憶を失った阿佐斗を目の当たりにした阿弖流為は、朝廷の力と理不尽さに怒り、「里人の命を捨てさせるわけにはいかない」と移住を主張する父(神山繁)と対立。族長となった阿弖流為は、一度は奇跡的に勝利したものの、山野は荒れ果て、犠牲も出して危機は広がるばかりだった。やがて彼は、多くの民を逃がすため、盟友・母礼(もれ・北村一輝)とともに宿敵・坂上田村麻呂(高嶋政宏〈現:髙嶋政宏〉)に最後の戦いを挑む。

 原作は東北在住の作家・高橋克彦。盛岡市、奥州市、遠野市など東北の地でロケを敢行、美しい自然が織り込まれ、おおたか静流の幻想的な歌声と響き合う。大沢は馬上から弓で矢を放ち、大刀を掲げて戦う熱演。大友氏の裏切りを伝えるなど阿弖流為を支える妻役の内田有紀、田村麻呂の部下となる阿弖流為の兄役の石黒賢らが脇を固める。中でも「海の蝦夷は虫の息じゃ。次は山の蝦夷じゃ...」と東北を律令国家に取り込む野心を抱く桓武天皇役の近藤正臣は迫力。大杉漣、斎藤洋介、江波杏子など今は亡き名優たちの古代人演技も見逃せない。歴史冒険巨編。

掲載2020年10月09日

「戦国自衛隊」
敵兵二万!若き自衛隊員が戦国時代へタイムスリップし、川中島の戦に挑む
戦車、ヘリを駆使した大規模ロケと体当たりアクション、主題歌も人気となったヒット作

(せんごくじえいたい ) 出演者:千葉真一/夏木勲/渡瀬恒彦/江藤潤/竜雷太/三浦洋一/成田三樹夫 ほか  1979年

掲載2020年10月09日

戦国自衛隊
「戦国自衛隊 」
©KADOKAWA 1979

 日本海側での演習に向かっていた伊庭三尉(千葉真一)ら21名は、不思議な光に照らされ、戦国時代にタイムスリップしてしまう。長尾景虎(のちの上杉謙信・夏木勲〈夏八木勲〉)と出会い、「同族じゃ」と意気投合した伊庭は、最新兵器を駆使して景虎を助け、勝利を得た。やがて景虎と天下を狙いたいと考え始めた伊庭は、川中島で武田信玄(田中浩)率いる二万の敵兵と激突する。

 原作は半村良のSF小説。千葉真一がアクション監督を務め、広大なロケ地での大迫力のアクションシーンが続く。千葉は高速ヘリにロープ一本でつかまって飛び、武田勝頼役の真田広之は地上からヘリにぶら下がって操縦者を抹殺、味方が広げた旗に飛び降りるという離れ業を見せた。「俺たちの旅」で知られる鎌田敏夫が脚本化したことにより、各隊員のエピソードを追った群像劇になっているのも大きな特長。現代に恋人(岡田奈々)を待たせている菊池(にしきのあきら)、村娘・みわ(小野みゆき)と恋に落ちる三村(中康次)、武器を駆使して村人たちを襲う矢野(渡瀬恒彦)、伊庭もまた戦いのため現代に戻らないと宣言し、平和を望む部下と対立する。キャッチフレーズは「歴史は俺たちになにをさせようとしているのか?」終盤、景虎の微妙な表情の変化が武将の厳しさをにじませる。それぞれの末路は松村とおるの主題歌「戦国自衛隊のテーマ」ジョー山中の「ララバイ・オブ・ユー」とともに深い印象を残す。

掲載2020年10月02日

「勢揃い清水一家 次郎長売り出す」
松方弘樹の次郎長親分に水谷豊の森の石松など個性派子分たちが大暴れ
恋女房のお蝶(古手川祐子)との哀しい別れとともに清水一家が大きくはばたく姿を描く

(せいぞろいしみずいっか じろちょううりだす ) 出演者:松方弘樹/古手川祐子/水谷豊/石立鉄男/松村雄基/京本政樹/桂ざこば/真田広之/柏原芳恵 ほか  1992年

掲載2020年10月02日

勢揃い清水一家 次郎長売り出す
「勢揃い清水一家 次郎長売り出す」
©東映

 腕と度胸で売り出し中の若親分、清水の次郎長(松方弘樹)のもとには、元武士の大政(石立鉄男)、小政(松村雄基)、追分の三五郎(京本政樹)、法印の大五郎(桂ざこば)ら威勢のいい子分たちが集まった。そこにおっちょこちょいだがどこか憎めない森の石松(水谷豊)が現れ、一家に居座った挙句、ちゃっかり子分におさまる。そんな折、次郎長の兄弟分である森の五郎(渡辺裕之)が十手持ちの保下田の久六(石橋蓮司)と猿屋の勘助(菅貫太郎)のワナによって殺されたことがわかる。たった一人で敵討ちに向かった五郎の舎弟・浅吉(真田広之)を助けるため、清水一家は浅吉のもとに駆けつけるが...。

 「トラック野郎」シリーズの監督で知られる鈴木則文の原案を「太陽にほえろ!」の小川英らが脚色、「座頭市」「子連れ狼」の池広一夫が監督。前半は、男気あふれる浅吉の大立ち回りがみもの。白い着物を鮮血に染め、髪もざんばらの浅吉は、次郎長に「うちの親分のかわりに、きっと日本一の親分になっておくんなさいよ」と言い残して息を引き取る。後半は勘助を斬って凶状持ちになった清水一家の苦闘が続く。厳しい旅の中で、次郎長の恋女房・お蝶(古手川祐子)の病が悪化し、哀しい別れが訪れる。松方弘樹は迫力たっぷりの親分。石橋、菅の悪役ぶりもさすが。17年ぶりの時代劇出演となった水谷は、軽快な動きで笑わせる。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。