ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2011年08月12日

『功名が辻』
山内一豊(上川隆也)と千代(仲間由紀恵)
ナイスカップルが戦国乱世を乗り切る!

(こうみょうがつじ) 2006年

掲載2011年08月12日

両親を亡くした千代(仲間由紀恵)は、仕官の口を捜す山内一豊(上川隆也)に救われ、ふたりはやがて夫婦に。木下藤吉郎(柄本明)の配下となった一豊の「一国一城の主に」という夢をかなえるため、千代は奮闘する。
 原作は司馬遼太郎。脚本家・大石静は、「命の持ち帰りこそ」と戦においても、生きて変えることが大切だと千代に繰り返し言わせる。生きることを大切にした夫婦であることを強調。裕福ではなかったが、夫に優秀な馬を持たせ、出世につなげたというエピソードの他、まな板がないために鍋のふたを裏返して使っていた(それを見たお嬢様育ちのお市の方が驚く)など、ユニークな場面を盛り込み、千代の人柄を見せた。
 見せ場のひとつとなる「本能寺の変」では、「敵は天魔信長である!!」と檄を飛ばし、攻める明智光秀(板東三津五郎)と「よかろう、光秀。しばし相手をしてつかわそう」と不敵に笑う信長(舘ひろし)の壮絶な戦い。信長は、火縄銃をまるでライフルのようにぶっ放し、お濃(和久井映見)に「お濃、あの世でまた、見えようぞ」と炎の中で自刃する。
 一豊の弟役に玉木宏、千代が育ての親となった男子に三浦春馬と、時代劇には新鮮なイケメンも登場、前田吟らベテランも戦国のナイスカップルを支える。無残な話が多い戦国にあって、ほのぼのとした場面も多い。

掲載2011年07月08日

『怪談百物語』
四谷怪談、雪女、耳なし芳一、番町皿屋敷…
名作を菅野美穂、岸谷五朗ら斬新キャストで

(かいだんひゃくものがたり) 2002年

掲載2011年07月08日

蘆屋道三(竹中直人)は、超有名陰陽師・蘆屋道満の末裔ながら、いまいち能力を発揮できない臆病者。娘の小夜(大村彩子)と長屋暮らしをしているが、なぜか、次々奇怪な事件に遭遇する。オムニバス式の怪談シリーズで、CGだけでなく、手作り感覚も活かしたスーパー時代劇。演出に80年代にトレンディドラマで話題作を世に出した河毛俊作、美術に「鬼平犯科帳」「剣客商売」で腕をふるう大御所・西岡善信があたっている。このシリーズは、「京都で西岡さんと仕事がしたい」という河毛プロデューサーの強い希望で実現したもの。
 なんといっても、話題になったのは、キャスト。現代ドラマの主役たちが、特殊メイクも怨念顔を厭わず、恐ろしい世界を作り出す。第一話「四谷怪談」では、菅野美穂、原田龍二の顔合わせで、おなじみの因縁話がじっくりと描かれる。他にも、悲しい運命を背負った雪女に松雪泰子、姥捨ての習慣に悩み苦しむ男にユースケ・サンタマリア、かなり怪奇ムードのかぐや姫にりょうなど、想像しただけでわくわくする顔ぶれ。ペリーが特にお薦めなのは、大河ドラマ「江」で、ハイテンションな秀吉を演じて注目されている岸谷五朗の「耳なし芳一」。落ち武者に囲まれた芳一の運命。そしてもう一本は、窪塚洋介の「狼男」。変身する過程と男の切ない遠吠えが耳に残る。

掲載2011年06月24日

『狐のくれた赤ん坊(主演:田村高廣)』
父・阪東妻三郎の当たり役を田村高廣が熱演
ラストシーンに父子の情愛たっぷりの感動編

(きつねのくれたあかんぼう) 1981年

掲載2011年06月24日

大井川金井宿の張り子の寅八(田村高廣)は酒と喧嘩とは縁が切れない、自他共に認める暴れん坊だが、どこか憎めない純情な男。そんな寅八が、街道筋に狐が出るという話を聞いて、飛び出すが、そこにいたのは、赤ん坊だった。仲間の前で育ててみせると啖呵を切った手前、引き取ったはいいが、女手もない中で赤子を育てるのは、並大抵の苦労ではなかった。しかし、博打とも縁を切り、病になったなれば、名医のところまで何里も走るほどの子煩悩男に変身した寅八。それほどまでに可愛がって育てた息子は、どこか品格があり、大将の気質が備わっているような? やがて、息子の出生の秘密が思わぬところから、もたらされる。ラストは寅八の仕事が深く関わり、育ての父子の情愛が伝わって、感動させる。
 必殺シリーズの「助け人走る」とは一味違うが、威勢がよくておっちょこちょいこんな役をやらせたら、魅力抜群の田村高廣(この作品と同時期に名作映画『泥の河』に主演)。実はこの作品は、戦後、チャンバラ映画が難しかった頃、高廣の父・阪東妻三郎主演で、戦後時代劇映画の復活に華を添えた人情物語。共演は、浜木綿子、伴淳三郎(本作が放映された81年に死去)、加藤武、山田吾一、加藤嘉と達者な顔が揃う。また、近年ヒットドラマ「JIN〜仁」で、久坂玄瑞を熱演した林泰文が、子役として登場する。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。