ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2010年07月16日

『元禄名槍伝 豪快一代男』
酒と博打、借金に女癖。豪快すぎて困った奴。
俵星玄蕃を近衛十四郎が豪快すぎる熱演。

(げんろくめいそうでん ごうかいいちだいおとこ) 1955年

掲載2010年07月16日

俵星玄蕃といえば、三波春夫の浪曲歌謡でもおなじみ。槍名人で、赤穂浪士の討ち入りの際には、体を張って、彼らを邪魔するやつらを追い払ったという豪傑だ。
しかし、この作品で描かれる玄蕃は、正義の味方というよりは、人生の迷った一匹狼。そもそも膳所藩にいた玄蕃は、主君から藩内きっての美女との縁談を勧められたが、拒否する変わり者。しかも、酒で不祥事を起こして、藩から飛び出し、江戸で道場を開く。しかし、生来の酒飲みで門人に酒屋への使いまで頼み、道場はどんどん不人気に。ついには、門人がゼロになり、やくざ者に賭博場として貸し出す始末だ。おまけに美人の姐さんにもてもて。そこに故郷から、嫁さん候補の美人が現れて、ほとほと困ったことになる。
豪快すぎてダメな男・玄蕃を、近衛十四郎は、適当に応援しながらも深入りはしない。
そして、ついに赤穂浪士討ち入り日。玄蕃は、雪の中に飛び出した!
近衛十四郎は、マネのできない豪快な立ち回りを披露。「毎日酒一升!」と言って、暴れまわる。千鳥足の演技も抜群。それにしても、玄蕃は、剣の腕は一流だが、生活態度は悪役の面々並みに荒れ放題。しかし、どこか憎めないのは、近衛十四郎らしさともいえる。
なお、主君・本多内膳正役は、先ごろ亡くなった藤田まことさんの父・藤間林太郎。

掲載2010年06月18日

『影武者 織田信長』
藤田まことが天才武将と農民の二役に。
寧々の沢田亜矢子、濃姫の名取裕子もいい味

(かげむしゃ おだのぶなが) 1996年

掲載2010年06月18日

天正9年、織田信長(藤田まこと)は、三河の徳川家康と同盟を結び、着々と天下統一の準備を進めていた。しかし、敵は多く、秀吉(片岡鶴太郎)は、信長に影武者を勧める。そこで選ばれたのは、農民の左平(藤田二役)。多額の報酬と妻子を人質にとられた脅迫により無理やり影武者にされた左平には、過酷な運命が待ち受けていた。
仏像の首を落とし、「坊主どもは皆殺しじゃ!!」と比叡山焼き討ちなどを命ずる狂気じみた信長と、「ウリ買うて~」とお調子者の左平。この二役をできるのは、「必殺シリーズ」で中村主水という“ふたつの顔を持つ男”以外にいない。
左平は、秀吉の妻寧々(沢田亜矢子)に、武将としての作法を仕込まれる。「食べ物はまず、山のもの、ついで海のものを食す!!」とばしばしたたかれ、信長が得意の♪人間五十年~の能までこなさなければならない。逃げ出したくても、怖い顔をした甲賀の忍び黒蜘蛛(根津甚八)がしっかり監視しているのだ。しかし、外見はごまかせても、夫婦の間ではとても無理。左平は、信長の妻濃姫(名取裕子)と顔を合わせることになり、緊張する。しかも、信長は毒殺、射殺と次々命を狙われ、ついには明智光秀(夏八木勳)の謀反が。
ラストは、思わぬ展開に。戦国の裏側を笑いと涙で描く、大型時代劇。

掲載2010年04月16日

『幻十郎必殺剣』
北大路欣也が、死んだはずの男に!
尾美としのり、中村敦夫もいい味を出す

(げんじゅうろうひっさつけん) 2008年

掲載2010年04月16日

元南町同心・神山源十郎(北大路欣也)は、同僚を斬った罪で五年間投獄され、死罪となった。しかし、実際に処刑されたのは別の罪人。深い眠りからさめた源十郎は、市田孫兵衛(笹野高史)から、五年前の事件の真相を探るよう言われる。すでに死んだ者となった源十郎は、「死神幻十郎」となり、悪と対峙する。
初回、五年間牢獄にいたため、北大路欣也は頭もひげもぼーぼーのすごい姿。それが死神となって、再び二枚目になっていく過程も描かれ、興味深い。ちなみに北大路欣也は、市川崑監督と組んだ「赤西蛎太」では思いっきりあばたメイクをし、「はんなり菊太郎」でも老人メイクでカメオ出演するなど、凝ったメイクはお手の物(というか好き?)である。
幻十郎が事件探索をするための強い相棒が、彼の世話役の伊佐次(尾美としのり)。無口に幻十郎と愛嬌ある伊佐次のバランスがいい。
また、彼が生き残った事情の裏にいる謎の老人・楽翁(中村敦夫)も渋くていい味。ゲストには、北原佐和子、高橋和也、平泉成、上杉祥三、鶴田忍などが登場。
「死神幻十郎が地獄へ送ってやる!」
幻十郎の鋭い推理と、剣で追い詰められるのは誰か。
誰にも縛られない立場の幻十郎は、どんな権力者も恐れない。死神だからこそ、できる正義の剣を堪能したい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。