ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2009年08月07日

『怪談<PG-12>』
「リング」の中田秀夫監督の怖すぎる映像
呪われた男女の因縁、さびた鎌の恐怖

(かいだん) 2007年

掲載2009年08月07日

日本の夏といえば、怪談!噺家・三遊亭圓朝が世に送り出した噺の数々は、人間の深い業を鋭く描く名作ばかり。ここで紹介する「怪談」は、圓朝の「真景累ケ淵」が原作。
 ある雪の夜。深見新左衛門(榎木孝明)が、借金取りに現れた皆川宗悦(六平直政)を斬殺。赤子であった深見の息子は、使用人の勘蔵(光石研)に育てられる。時がたち、煙草売の新吉(尾上菊之助)は、富元(とみもと)の師匠豊志賀(黒木瞳)に呼び止められる。このふたりこそ、深見の息子と宗悦の娘だった。ともに暮らすふたりだが、日に日に嫉妬深くなる豊志賀を新吉は「あんなに弱らせる女はいない」と重荷に思うように。顔の傷が悪化し、恐ろしい顔になった豊志賀は、「女房をもらえば、必ずやとり殺すからそう思へ」と置手紙を残して死ぬ。そして、恐ろしい因縁が巡り、新吉の周囲で惨劇が繰り返される。
 新吉をからめとるように自分のものにする豊志賀のねっとりした色気。「ひと目見て忘れられなくなりました」と長いまつ毛で告白する新吉。最近、カレーのCMでも注目される菊之助は、「どうしてこんなにきれいなの」と次々女に言い寄られ、悲劇へと突き進む。突然、手が出たり、蛇が出たりとビジュアルの怖さとともにじっとりした湿気の気持ち悪さは中田監督の得意技。さびた鎌が恐怖を駆り立てる。瀬戸朝香の悪女も秀逸。

掲載2009年03月19日

『斬り捨て御免!』
「御免!」の掛け声とともに悪を斬る。
「鬼平」以前の若きリーダー吉右衛門の活躍

(きりすてごめん) 1991年

掲載2009年03月19日

江戸の治安を独自のやり方で守る「三十六番所」頭取・花房出雲(中村吉右衛門)と部下たちの活躍を描く。「御免!」と悪を一刀両断する吉右衛門は、後に「鬼平犯科帳」でも見せる、べらんめえで粋なリーダーをぶりを発揮。好評を得たシリーズは3作まで続いた。
その第一シリーズの最終話「江戸城危機一髪」では、上様御落胤を名乗る照千代なる若者が登場。上様から配領したという証拠の品も揃い、幕府として放っておけない状況に。便宜を図ってもらおうと商人たちは照千代一派に献金を行い、一派は次第に傍若無人な振る舞いをするようになる。出雲と親しい勘兵衛(小島三児)の抱え遊女も一派にいたぶられた上に殺された。照千代の出生に疑問を抱く出雲は探索を進めるが、照千代の後見人・橋場右京(平泉成)らに阻止される。そして、裏にはさらに大きな悪が。出雲配下の熱血漢・松波蔵人(伊吹剛)は、単身敵地に乗り込むが、それはワナだった。
最終話らしく息もつかせぬ展開が続く。緊迫感の中、三十六番所の名物オヤジ関大介(長門勇)の飄々とした存在感がいい。
続いてスタートする第二シリーズには、松本白鸚が登場。さすがの貫禄を見せる。さらに清純派の岩崎良美、妖艶な妙秀尼(日向明子)、元気のいい三島ゆり子、岩井友見ら女優陣の活躍も見逃せない。

掲載2009年02月20日

『侠客 幡隨院長兵衛』
池波正太郎が描く侠客一代!
村上弘明VS渡瀬恒彦 熱い男の友情と戦い

(きょうかく ばんずいいんちょうべえ) 1995年

掲載2009年02月20日

歌舞伎や講談などでおなじみの侠客の元祖・幡随院長兵衛と旗本・水野十郎左衛門。ふたりの出会いと運命の結末を、池波正太郎がじっくり描いた原作を、村上弘明と渡瀬恒彦が体当たりで演じる。
 塚本伊太郎(村上)は、ある晩、目の前で父を斬殺される。恐ろしい刺客に囲まれて、危機一髪のところを助けに入ったのが、水野十郎左衛門(渡瀬)だった。父が殺されたわけもわからず、困惑する伊太郎は、人入れ屋山脇宗右衛門に助けられ、孫娘お金(野村真美)と恋に落ちる。しかし、父の死に唐津八万石の悪殿様・寺沢兵庫が関わっていると知り、敵討ちを決意した。彼を見守る水野と後に侠客として頭角を現す伊太郎改め長兵衛。しかし、彼らは、対立する運命にあった。
 村上弘明は、困惑する若者から、親分的貫禄まで変化しつつ、さまざまな顔を見せる。敵討ちのシーンでは、やりを振り回し、豪快な立ち回りも披露。ご本人のインタビューでは、大技も楽しんで撮影していたとか。一方、近年、刑事ドラマなどでは渋い上司役が多い渡瀬恒彦も歌舞伎もびっくりのゴージャス衣装と派手な髪型で登場。やんちゃ旗本のリーダーになりきっている。
結末は明るくはないのに、どこかスカッとする。男の友情と意地を見せる、ふたりのぶつかりあいに拍手したい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。