ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2008年11月14日

『剣と風と子守唄』
三船敏郎が天才子役斉藤こず恵と苦難の旅
ダイナミックな殺陣と心優しき父の顔が見物

(けんとかぜとこもりうた) 1975年

掲載2008年11月14日

お庭番支配・砦十三郎(三船敏郎)は、「将軍家に申し上げる!内憂にして外患のこのとき、徳川の威信すでに地に墜ち、信ずるに足りず。恐れ多くもあえて申し上げる。徳川の幕政、不要なり!!」と、とんでもない発言をして姿を消す。彼のひとり娘小雪(斉藤こず恵)は、元配下あかねの左源太(中村敦夫)に預けられていたが、幕府はお庭番たちに十三郎を討つように命令を下す。
 第一話「ひとり戦争」では、圧政と飢饉に耐えかねた百姓の一揆の指導をする謎の鬼面男が出てくるところから話が始まる。幕府側の裏をかき、勢いをつけた農民たちは、鉄砲にまで手を出してしまう。一方、十三郎を慕いながら、命狙うことになったお庭番たち(伊吹吾郎、尾藤イサオ、丹古母鬼馬二ら)の苦悩。小雪を人質にされた十三郎の決意とは。第二話「ふたり父さま」では公儀隠密一派と戦うなど、戦いは苛烈さを増していく。
 脚本は杉山義法、小川英(『太陽にほえろ』でもおなじみ)、監督に池広一夫、降旗康雄、田中徳三など気合の入った顔ぶれ。三船敏郎時代劇といえば、荒野がつきもの。初回から荒涼とした風景の中で、ダイナミックな立ち回りを見せまくる。また、当時八歳の天才子役・斉藤こず恵は、小林亜星による「小雪のわらべ唄」を披露。かなげで可憐な可愛らしさを見せる。

掲載2008年10月10日

『剣客商売 春の嵐』
大治郎が辻斬りを疑われ投獄?
ゲストに松方弘樹も登場するスペシャル

(けんかくしょうばいすぺしゃる はるのあらし) 2008年

掲載2008年10月10日

松平定信(福士誠治)の家臣が「あきやまだいじろう」と名乗る辻斬りに一太刀で殺される。頭巾で顔を隠した下手人をまさか秋山大治郎(山口馬木也)ではないと知りつつ、北町奉行所の同心・永山精之助(梨本謙次郎)は、四谷の弥七(三浦浩一)に探りを命ずる。そんな中、またも松平家中の者が同じ辻斬りに襲われ、ついに大治郎は、評定所へと連行される。これは何者かの陰謀と確信した小兵衛(藤田まこと)だが、真犯人の手がかりはない。弥七、傘徳(山内としお)、太次郎(蟹江一平)らは、必死に張り込みを続ける。
 大治郎の危機に、小兵衛、妻の三冬(寺島しのぶ)らも懸命に動く。いつもは明るいおはる(小林綾子)も、「たったひとりの息子だから」と肩を落とす。その願いが通じて、事件は動きだすが、そこにも哀しい父と子が。
 ゲストに登場した松方弘樹は、このドラマのファンで、超ベテランの小野田嘉幹監督ということもあり、撮影を楽しみにしていたと語っている。男手ひとつで育てた息子を案ずる父という役柄に「子育ては難しい」との本音も見せた。
 また、緊迫した展開の中、ドラマにほのほのとした雰囲気をもたらすのが、大治郎・三冬の息子の小太郎くん。ずっと同じ子役が演じていて、番組の歴史とともに成長。現場のアイドル的存在だという。

掲載2008年10月03日

『剣客商売 辻斬り』
中村又五郎の小兵衛と加藤剛の大治郎
眉墨の金ちゃんの地井武男にも注目!

(けんかくしょうばい つじぎり) 1982年

掲載2008年10月03日

若い女房と悠々自適に暮らす父・秋山小兵衛(中村又五郎)から道場を譲られたものの、堅物すぎて入門者が集まらない大治郎(加藤剛)。ある夜、大治郎は、三人組の辻斬りに襲われた。その正体は幕府御目付衆永井十太夫(武内亨)の息子右京(伊藤高)とその家来だった。翌日、大治郎のもとに見知らぬ武士が「名前もわけも聞かず、ある人物の腕を折ってくれ」と十両を差し出す。その裏には、老中・田沼意次(小沢栄太郎)の娘三冬(新井春美)と右京の縁談がからんでいるらしい。
 このドラマで光っているのは、加藤剛の持ち味である「堅物」ぶり。せっかく入門者がいたのに指導が厳しすぎて「またも逃げたか…」と残念がる息子に、父は「何本かに一本は打たせてやって弟子の機嫌をとるものだ」などとにこにこする。さらに「ある日、剣術よりも女のほうが好きになった」と告白する父に、困惑する大治郎。親子の場面が実に味わい深い。
 また、大治郎を狙う一派に加担するのかしないのか。顔を白塗りにして眉墨を塗ったか不思議な剣客“眉墨の金ちゃん”こと三浦金太郎役で地井武男が出演していることにも注目。身を持ち崩しながらも、剣客ゆえに捨てられない闘争心。こうしたユニークかつ哀しさを秘めたキャラクターが登場するのが池波作品の人気の秘密といえる。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。