ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2008年08月01日

『金さんVS女ねずみ』
松方金さんと古手川女ねずみが手を組む?
嫁とパワフルママに困惑の金さんにも注目

(きんさん たい おんなねずみ) 1998年

掲載2008年08月01日

遊び人の金さんこと北町奉行の遠山金四郎(松方弘樹)もついに年貢を治めて(?)結婚。その相手は美人の奈津(水野真紀)だった。しかし、ふたりを心配して、しばしば母(草笛光子)も登場して、嫁姑の間にはさまった金さんはおろおろ。おまけに死んだはずのねずみ小僧まで現れ、調べてみれば、父である先代の遺志を継いだ女ねずみ(古手川祐子)と判明。なんと彼女はいきつけの飯屋の女将お小夜だった。あっちを向いてもこっちを向いてもパワフルな女たちに囲まれて困惑する金さん。さらには、お小夜に気があるくせに、女ねずみ捕縛に執念を燃やす岡っ引きの勘平(前田吟)の面倒を見なければならない。これで事件はどうなっちゃうのか!?
 このシリーズの特長は「おさわり茶屋殺人事件」「恐怖の三味線通り魔」など事件に現代性と複雑さがあること。「笑う真犯人裏切られた金四郎」の回では、仮面の盗賊「櫓の九蔵」一味を追う目明しが殺され、狙われた店を奉行所総動員で警戒するが、まんまと一味に裏をかかれる。内通者か?一方、あこぎな商売をする駿河屋を懲らしめようとした女ねずみは、そこに先客の盗賊がいることを知って驚く。いよいよ悪を追い詰めたはずの金四郎だが、相手は予想以上の強敵だった。
「悪の限りの仮面の下が…」五七調の金四郎の名調子が気持ちいい!

掲載2008年05月16日

『怪談雪女郎』
「この姿を見た以上、命はないぞえ」
田中徳三監督が大映特撮技術を駆使した階段

(かいだんゆきじょろう) 1968年

掲載2008年05月16日

あるとき、仏師の師匠と弟子の与作(石浜朗)が、雪深い山で道に迷ってしまう。その前に現れた美しい雪女郎。透き通るような白い肌と金色の目を持つ雪女郎は、師匠にそっと白い息を吹きかけ、凍てつかせてしまう。しかし、与作を見つめた雪女郎は、「お前は若く美しい。お前を殺さないかわりに、今日見たことはただの一言ももらしてはならぬ…」
 時を経て、ゆき(藤村志保)という女と夫婦になり、太郎というひとり息子も得て、幸せに暮らす与作。だが、ゆきの美貌に目をつけた悪地頭が、与作に無理難題を押し付ける。やがてそれが恐ろしく悲しい結末に…。
 有名な「雪女伝説」を題材にしながら、人間の欲望と純粋な愛をテーマにした作品。光と影、吹雪のすさまじさ、金色に光る目など、CGのない時代にていねいに撮られた映像は美しい。市川雷蔵の「眠狂四郎」シリーズを手がけた田中徳三大映映画の特撮技術を駆使して、怪しく悲しい雪女郎の姿を描いている。
清純な美人役が多かった藤村志保は、独特の低音で「命はないぞえ」と凄みを出す。「ぞえ」の「え」が怖い。さらにベテラン女優原泉が巫女役で出演。ゆきが恐れる「炎」を前に一心不乱に祈祷する原泉巫女は、人間なのに雪女郎よりも迫力あるかも。「都で女を漁りつくしたが、ゆきほどの女はいない」という悪地頭(須賀不二男)の悪人ぶりにも注目。
役・市川かつじがいい表情を見せる。ラストシーンの余韻は、股旅ものならでは。

掲載2008年04月18日

『風と雲と虹と』
加藤剛演ずる平安の風雲児・平将門
瀬戸内の暴れん坊藤原純友の緒形拳も大暴れ

(かぜとくもとにじと) 1976年

掲載2008年04月18日

平安前期。坂東の武士・平将門(加藤剛)は、朝廷からしかるべき身分を得るべく、京都に出る。しかし、田舎者扱いされて屈辱の日々。思い人の貴子(吉永小百合)も、いとこの太郎(山口崇)に奪われ、失意の将門は坂東へ帰る。しかし、そこで彼を待っていたのは、一族間の争いであった。憤った将門は、ついに武力で立ち上がる。
 大河ドラマ史上、初の古代をテーマにしたこの作品。原作者の海音寺潮五郎は、ドラマ化にあたり「娘を嫁に出すよう」と語ったという。オンエアは1976年で、長らく放送素材が保管されていないといわれてきたが、奇跡的に発見され、ワンカットずつの修復という大変な作業を経て、今回全52話が放送される運びとなった。この時代のドラマが始めてということで、衣装はすべて新調。当時の金額で100万円単位が費やされた。また、時代考証にも時間をかけ、衣装では、貴子と侍女の着物が当時の復元となっている。
 キャストでは、将門と心を通じ、西海で朝廷に立ち向かう藤原純友(緒形拳)、くぐつの女(太地喜和子)、謎めいた玄明(草刈正雄)なども大暴れをする。が、本当に怖いのは、影で戦をあおる女(星由里子)や貴子を少しでもいい身分の男に添わそうと企む侍女(奈良岡朋子)かも?名優たちの熱演が楽しめるぜいたくな作品。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。