ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2007年05月31日

『斬り抜ける』愛のために故郷を捨てたふたりラブストーリー&冒険活劇の隠れた名作

(きりぬける) 1974年

掲載2007年05月31日

藩の命令により、親友森千之助を斬った美作藩士・楢井俊平(近藤正臣)は、この裏に藩主・松平丹波守(菅貫太郎)が、千之助の妻・菊(和泉雅子)を妾にしようとしたいきさつを知る。俊平は藩主の非道を幕府に訴えようと、菊と幼い息子太一郎を連れて、藩を出奔。しかし、藩主は俊平と菊の不義密通をでっち上げて、千之助の父・嘉兵衛(佐藤慶)と弟・伝八郎(岸田森)に追い討ちを命ずる。ふたりは、よろず屋の弥吉(火野正平)や仕官を夢見る暴れん坊の道家鋭三郎(志垣太郎)らに助けられ、逃亡の旅を続けるが…。
「不義と呼ぶなら呼ぶがいい!!」
 いわれのない罪を着せられ、男と女であることを忘れようとしても、お互いを思いあう俊平と菊。やがて、心をひとつにしたふたりには大きな試練が。俊平は、逃亡資金を得るため、ある宿場では悪人を斬り、ある宿場では陰謀を命がけで阻止する。そのカッコよさは、ただものではない。密かにふたりを抹殺しようと迫る思いつめた表情の岸田森の怪演もみもの。また、近藤正臣の衣装がデニム生地で、現代調なのも、数々の異色ヒーローを世に送り出した「必殺スタッフ」による作品ならではの味といえる。
ふたりの純愛とギリギリに追い詰められるサスペンスが多くの視聴者をひきつけた名作。哀愁漂う主題歌も忘れられません!

掲載2007年04月06日

『風の隼人』呪いの泥人形で暗殺!?薩摩藩お家騒動。サスペンスタッチの展開に目が離せない。

(かぜのはやと) 1979年

掲載2007年04月06日

嘉永年間。薩摩77万石はお家騒動に揺れていた。現藩主・島津斉興(中村俊一)の側室お由羅(南田洋子)を中心とする保守派武士層と、次期藩主候補で斬新な改革を目指す島津斉彬(津川雅彦)を支持する下級武士一派が対立していたのだ。ある日、斉彬の子が怪死。お由羅の命を受けた牧仲太郎(柳生博)が呪殺の術を使ったらしい。江戸の薩摩藩邸に住む下級武士団の仙波小太郎(勝野洋)は、相棒の益満休之助(西田敏行)と、お由羅の屋敷に潜入、呪いの証拠である泥人形を床下から発見するが、事態は収まらなかった。仙波一家は藩を脱出。母は居酒屋で働きながら情報収拾、妹綱手(夏目雅子)は、お由羅一派の薩摩屋に下女として潜入して敵の動きを探る。もうひとりの妹・深雪(名取裕子)は、お由羅の側近となって、彼女を襲った下級武士を手にかけてしまう。密偵家族と成り果てた仙波一家の哀愁。小太郎の心の支えは、「留学させる」という斉彬の口約束だが…。
 変装、密書、呪いの人形とサスペンスいっぱいの展開。西田敏行の冷静なスパイや柳生博の野心家術師、村野武範のインテリな策略家など、芸達者たちの競演もみもの。敵に偽情報を出され、翻弄される夏目雅子の美しいスパイも忘れられない。やっぱり下女としては目立ちすぎ!?原作は直木賞でおなじみの直木三十五「南国太平記」、脚本は市川森一。

掲載2007年02月15日

『恋しとよ 君恋しとよ』身分違いの姫に恋した純情侍。若山富三郎の大久保彦左衛門の渋い味。

(こいしとよ きみこいしとよ) 1991年

掲載2007年02月15日

三代将軍家光の時代。旗本の三男坊・五橋数馬(田中実)は、武芸で名をとどろかせたいと夢見ていた。有り余る力を金の賭けての試合で紛らわせていたが、大田原(高田淳次)との試合の最中、ふと目に入った美女に心を奪われ、立会いどころではなくなってしまう。その美女こそ、十万石の大名・奥平家のちずか姫(田中美奈子)であった。
 身分違いもなんのその、猛アタックを開始した数馬は、姫の屋敷の門前の錦木に恋文を結んでの百夜通いを始める。一方で、数馬は叔父の大久保彦左衛門(若山富三郎)を担ぎ出して、なんとか身分違いの壁を破ろうと考えていた。そんなとき、ちずか姫がお家騒動に巻き込まれて、誘拐!? どうする数馬!
 原作・山本周五郎。脚本・筒井ともみ。面白いのは、天下のご意見番として知られる彦左衛門が、実は縁側でのんびり日向ぼっこをしているようなもの静かな老人として描かれていること。眉毛も垂れ下がった若山富三郎の渋い演技が楽しい。男気を見せる水野十郎左衛門(中村橋之助)、困惑する姫の父(伊東四朗)、「あー、ハシタないったらありゃしない」と物語をテンポよく進行する戯作者(室井滋)、数馬の父の再婚相手で「うふふ、数馬さん、背中を流しましょうね」と色っぽい義母(川上麻衣子)など、ユニーク顔ぶれが揃うのも見どころ。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。