ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2006年11月16日

『剣客商売スペシャル 女用心棒』三冬が大店の孫娘の用心棒に。娘の恋心が凶悪な事件を呼ぶ!

(けんかくしょうばい) 2006年

掲載2006年11月16日

知る人ぞ知る剣の達人・秋山小兵衛(藤田まこと)と、40歳年下のお茶目な妻・おはる(小林綾子)、あいかわらず道場の経営はいまひとつだが、次第に貫禄がついてきた息子大治郎(山口馬木也)、その妻三冬(寺島しのぶ)、さらには可愛い孫の小太郎も加わって、ほのぼの度が増した「剣客商売」の家族。今回は、三冬が、無頼者に誘拐されそうになった娘・お雪(大西恵麻)の危機を救ったことから物語が始まる。江戸でも指折りの小間物問屋・山崎屋の跡取り娘だとわかったお雪。三冬は、そのまま彼女の用心棒代わりとなるが、肝心の娘は、頑固な祖父(大滝秀治)が勧める縁談に気が進まず、密かに誰かに恋している様子。それが再び事件を呼ぶ。
 剣術が苦手で町人になろうかという人柄のいい若侍に「あなたは剣術の腕を別にしたら、とても素晴らしい人です」と思ったことを口に出してしまう大治郎の素直さ(素直すぎ!)、恋に悩むお雪を見守る三冬の優しさも光る。また、池波作品ではおなじみの蟹江敬三の子息・一平も事件探索に活躍する。
 できちゃった結婚した婿養子の夫(江藤潤)に冷たい視線を向けるお雪の母(姿晴香)の控えめながらキツい性格表現。かつては京都で本格的に殺陣の稽古を積んだ寺島進の立ち回り、一癖ありそうな近藤芳正の怪しさなど、ゲスト陣のいつもと違う演技も見もの。

掲載2006年09月14日

『御用牙』地上波未放送渡辺謙のハードボイルド時代劇。津川雅彦の奇怪奉行にもご注目。

(ごようきば) 1994年

掲載2006年09月14日

北町奉行所の隠密廻り同心・板見半蔵(渡辺謙)は、“かみそり半蔵”と呼ばれるやり手だが、存在を疎ましく思う者も少なくない。
あるとき、過酷な幕府の倹約令に異を唱えたことから、半蔵の父は切腹、自身は左遷される。五年後、やっと奉行所に復帰した半蔵は、江戸の闇の世界に、奇怪な男の存在を知る。しかし、半蔵は、敵の手に落ちて…。
 原作は「子連れ狼」の小池一夫。劇画では、半蔵が女容疑者をすさまじい業で責めつける。エロチック&バイオレンス路線が強調されており、ペリーもびっくりだったが、本作では、渡辺謙の男ぶりが光る。94年に制作されながら、諸事情により、地上波では未放送。04年に本チャンネルで初放送され、反響を呼んだ作品でもある。
拷問、殺し、極限まで追い詰められた半蔵の激しい憎悪が、やがて爆発する。過酷な中、清らかな心を見せる女、荻野目慶子の熱演がいい。(それにしても、どうして荻野目さんは不幸の役ばかりなんでしょうか? )また、微妙な立場で登場する地井武男、織本順吉、当時、時代劇に多く出演していた沖田浩之の姿も。
 インタビューで渡辺謙ご本人も語っていた通り、この番組では、悪役津川雅彦の役作りはすさまじい。シッシッシ!!という不気味な笑い声と残忍なまなざし。久しぶりに夢に見そうな悪役に出会える長編。

掲載2006年08月25日

『剣客商売 誘拐』三冬の危機に堅物大治郎が動く!中村又五郎・加藤剛のコンビで描く剣客商売。

(けんかくしょうばい かどわかし) 1983年

掲載2006年08月25日

何者かに襲われた女から、いわくありげな革袋を渡された佐々木三冬(新井春美)。その中身は、南蛮渡来の麝香(じゃこう)だった。三冬から事情を打ち明けられた秋山大治郎(加藤剛)は、大掛かりな密貿易の関わりを察知して、父・秋山小兵衛(中村又五郎)に相談。岡っ引きの弥七(近藤洋介)が探索にかかった途端、三冬が行方不明に。抜け荷一味が、証拠の品を取り返すために、誘拐したのであった。三冬を救い出すべく、わずかな手かがりを頼りに、大治郎たちの必死の追跡が始まる。
 中村又五郎・加藤剛コンビによる「剣客商売」の長編。原作者・池波正太郎が、又五郎をイメージして、小兵衛のキャラクターを創作したのは、有名な話だが、素顔の又五郎本人もおしゃれで、美味しいものが大好きだとか。加藤剛は、連続シリーズでも山形勲の小兵衛と組んで、大治郎役を好演。「堅物で一本気」な大治郎を定着させた。現代ドラマのイメージが強い新井春美が、フレッシュな三冬に扮し、大治郎とほのかに心を通わせる。
 なお、当時の京都は、現在よりロケ可能な地も多く、セットもかなり大掛かり。現在の藤田まこと版は、小兵衛の隠宅の場面がメインだが、加藤剛版では、大治郎の道場も、一軒丸ごと建てて撮影していたという。現在では失われた風景も味わえるという点では、ぜいたくな「剣客」といえるかも。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。