ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2006年06月01日

『五右衛門』大泥棒誕生の意外ないきさつとその顛末 鶴太郎、財前、柄本の技がぶつかる異色作

(ごえもん) 1994年

掲載2006年06月01日

信長が去り、いよいよ豊臣秀吉(中村嘉葎雄)が天下統一を目指して、動き出す。反抗勢力に徹底的な弾圧をする秀吉の軍勢は、紀州山中の伊賀の忍びの村も急襲し、焼き払ってしまう。忍びの男・土ぐも(片岡鶴太郎)は、頭の娘おさん(堀江奈々)とともに、忍びの女枯葉(財前直見)を救出して脱出するものの、瀕死の枯葉は自ら顔をつぶして死ぬ。忍びの世界に嫌気がさし、堺の町に出た土ぐもはその華やかさに驚き、おさんといっしょにおまん(木の実ナナ)の店に居つくが、そこの常連のひとりは、村を焼き払った牛島龍一郎(柄本明)だった。秀吉に見初められた枯葉にそっくりな利休の娘と通じた土ぐもは、ひょんなことから「石川五右衛門」を名乗り、忍びの技を活かした盗賊のリーダーになっていく。
 「化けているてめえのことは何にもわかりはしない」自分は誰?熱血でもなく、クールでもなく、不思議なテンションで生きた五右衛門が、釜茹でになる瀬戸際の啖呵は必見。また、「茶の湯とはなんでゃあ?」名古屋弁丸出しの秀吉と、権力に取りつかれる息子をたしなめる老いた大政所(鈴木光枝)らベテランのぶつかり合いにはさすがの迫力、柄本明、六平直政ら当時の小劇場のニオイを感じさせるキャストも目立っている。
 それにしても、なぜ「土ぐも」が「五右衛門」になったのか?意外すぎる理由にも注目を。

掲載2006年05月25日

『剣客商売スペシャル 決闘・高田の馬場』人の命を軽んずる武士に小兵衛が渇っ!!今年、舞台化もされた人気作品。

(けんかくしょうばいすぺしゃる けっとう たかたのばば) 2005年

掲載2006年05月25日

若い妻おはる(小林綾子)と悠々自適の隠居生活を送る剣客・秋山小兵衛(藤田まこと)は、ある日、浪人・羽賀儀平(宍戸開)が見事な剣さばきで不逞の輩を打ち倒す場に行き合わせる。たまたまそこにいた旗本・久世帯刀(立川三貴)の用人は、これぞ殿様の眼鏡にかなう剣客だと、さっそく儀平をスカウト。久世は、同じ剣術好きの旗本寄合組の高木筑後守(菅野菜保之)に羽賀の腕を自慢する。が、高木も負けじと自分の臣下・吉村弥惣治(内藤剛志)の強さを強調。意地になった久世・高木は、ついに羽賀と吉村の真剣勝負を決める。吉村の師である小兵衛は、なんとか無駄な命のやりとりを止めようと図るが…。
 決闘の発端を作った久世家・高木家の用人はどちらも殿のご機嫌とりばかりしている小心者。そこにつけこんだ小兵衛の作戦とは?殿をたきつけたり、ごまかしたり、石倉三郎、石丸謙二郎の用人コンビの珍妙なやりとりは見もの。また、主人の無体な命令にも背けない、羽賀の光と影のある人物像、愛する家族との別れを覚悟する吉村の苦悩など、人と人とのつながりを鋭く描写するのは、池波正太郎作品ならでは。
 なお、この作品は、今年舞台化され、藤田まこと、小林綾子、大治郎役の山口馬木也も出演。おはるは舞台でも小兵衛を乗せて巧みに船を操り、拍手を浴びていた。

掲載2006年05月08日

「影狩り」影一味(公儀隠密)VS影狩りの決戦!さいとう・たかをの劇画原作を仲代達矢熱演。

(かげがり) 1983年

掲載2006年05月08日

財政難の幕府は、弱小藩の手落ちを追求して取り潰しを画策。その作戦を担うのが、“影”すなわち公儀隠密の一団だった。
 諏訪高島藩の幼君・忠丸が江戸へ向かう途中、影一味に襲撃される。世継ぎが定まらないまま忠丸が亡くなれば、藩の取り潰しは必定。家臣たちは瀕死の幼君を守り、無事江戸入りを目指すが、敵の追及はやまない。そこに登場したのが、影を迎え撃つ三人の浪人、室戸十兵衛(仲代達矢)、日下弦之助(隆大介)、乾武之進(伊藤敏八)。彼らは“影狩り”と呼ばれていた。
 かつて上司の陰謀で、将軍家ゆかりの壷を割ってしまった幼君を死に追いやった過去を持つ十兵衛(仲代達矢)。三つの鎧櫃のどれかに忠丸を入れて敵の目を欺くことにするが、関所ではそのふたを開けるよう命じられ…。緊迫の関所越え。いったいいつ隠れていたのか?土の中から、水の中から次々襲い掛かる影。さいとう・たかをの原作らしいハードボイルドタッチの展開に、十兵衛の過去との決着という筋もからんでくる。
 女とのいきさつを引きずる十兵衛、酒好きの弦之助(隆大介得意の無表情演技!)、女好きの武之進と三人のキャラクターはバラバラだが、ひとつの目的を持つと、ものすごく強い影狩りのメンバー。幕府側の黒幕、老中の小沢栄太郎の存在感もさすが。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。