ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2005年12月08日

「元禄繚乱」中村勘三郎の人間味あふれる大石内蔵助。石坂浩二の吉良上野介にも注目。

(げんろくりょうらん) 1999年

掲載2005年12月08日

五代将軍徳川綱吉(萩原健一)の治世。赤穂藩主・浅野内匠頭(東山紀之)は、指導役の高家筆頭・吉良上野介(石坂浩二)の意地悪に悩まされていた。信頼できる家臣たちのとりなしでなんとか気持ちを支えていた内匠頭だったが、とうとう松の廊下で刃傷事件を起こし、身は即日切腹、浅野家は取り潰しに。しかし、この裁きに憤りを感じた浅野家の志士たちは、ひそかに結束を誓う。
 ご存知「忠臣蔵」に、嫁のりく(大竹しのぶ)が、「男はこれが肝心でございます」と夫のふんどしを締めるシーンがあるなど、大石家のホームドラマ的要素も取り入れ、普通の生活の楽しさ、それを失う悲しみなどが際立つ展開になっている。また、柳沢吉保(村上弘明)の道具のようにされる女・染子(鈴木保奈美)と、架空の人物である恋人(吉田栄作)の恋物語などもからめ、話が奥行きができている。私は、撮影当時、東山、吉田、鈴木と若手にインタビューしたが、東山内匠頭は、妻役の宮沢りえと息もぴったり。また、これが本格的時代劇デビューとなった吉田栄作は、役柄上、武士、町人両方のカツラをかぶることになったが、「自分でも意外なほどにあったのでうれしい」とやる気満々であった。一線から退く直前の鈴木保奈美も気負いなく、時代に翻弄される女性をしたたかに演じていると抱負を語っていた。

掲載2005年12月01日

「子連れ狼 冥府魔道」若君は実は姫!秘密を守るため、雇われた一刀親子に裏柳生が迫る!

(こづれおおかみ めいふまどう) 1973年

掲載2005年12月01日

若山富三郎の代表作となったシリーズ。デビュー当時はなかなか作品に恵まれず、敵役(市川雷蔵の『眠狂四郎』シリーズ第一作には、なぞのカンフーの達人として登場)などで活躍したが、近年、その立ち回りの迫力は再評価されている。
 また、大五郎の箱車に機関銃のごとき連発銃を仕込み、ときにはスキーのごとく雪山を滑走するシーンは、人気番組「トリビアの泉」にも取り上げられ、その発想のすごさもまた、再評価されている。が、はっきり言って、この作品の発想のすごさは箱車の改造だけではない。
 シリーズ第五弾にあたる本作でも、藩の存亡の鍵となる秘密を守るために、拝一刀が雇われるが、その秘密というのが、なんと「若君が実は姫」というとんでもない事実なのであった。筑前黒田藩からの依頼は、その秘密を知った菩提寺の住持・慈恵和尚の抹殺と密書の奪還。実は和尚は、一刀の生涯の敵・裏柳生の一門で、公儀隠密黒鍬衆の総領なのだった。お家騒動と、一刀の復讐劇。黒鍬衆との死闘に挑む一刀だが、それだけですまないのが刺客稼業だった…。
 シリーズ第六弾となる「子連れ狼 地獄へ行くぞ!大五郎」では、トリビアでも話題のスキーシーンが登場。ほとんどスノーモービルのような箱車にも注目を。

掲載2005年11月10日

「快傑黒頭巾」若山富三郎がひとり三役!金田龍之介の西郷どんもぴったり。

(かいけつくろずきん) 1981年

掲載2005年11月10日

昼間は「天命堂」という手相見で、虫眼鏡で自分の手相を見ながら、「あー、われながらいい相をしている」などとのんきな商売をしている若山富三郎。またひとつの顔は、「榊原のだんな」として、人々(特に女子)に頼りにされる存在なのだった。
 時は幕末。動乱の中、江戸には混乱に乗じて金品を強奪する悪人も増加している。その凶悪な連中をひそかに退治している正義の人こそ、快傑黒頭巾。奪還した庶民の金を前にして、「役人よ、取るな、(持ち主に)返せよ」などと役人批判も見せる痛快な活躍を見せる。それにしても、役人が追っかけるべきなのは、黒頭巾じゃなくて、強盗団の方では? 江戸の治安がますます心配だ。
 もちろん、黒頭巾の素顔は、やっぱり若山富三郎! 戦前から愛される時代劇らしい時代劇のヒーロー快傑黒頭巾を、のびのびと演じる若山先生には、とぼけたユーモアもにじみでて楽しい。
 今回は、江戸城にある七つの隠し口を巡って、善悪入り乱れての捜索が続く。べらんめえの知識人・勝海舟の西村晃、どっしり感のある西郷隆盛の金田龍之介、テンションの高い親王の石橋蓮司など、幕末らしいキャストも揃う。船宿の女将(二宮さよ子)にほれられて、榊原のだんなは、ついに居候に? 正義の味方の意外な私生活も興味深い。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。