ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2003年12月26日

「奇兵隊」志半ばに散る者、生き残って新しい世で光る者。剃髪&減量した松平健の幕末青春劇。

(きへいたい) 1989年

掲載2003年12月26日

 黒船来航で大騒ぎの江戸末期。開国だ、尊皇攘夷だと幕府をゆさぶる動きが活発化する中、長州藩士・高杉晋作(松平健)は、幕府の軍艦で上海を視察。ヨーロッパ列強に支配され、植民地のようになった状況にショックを受けた高杉は、「国を守らねば」と決意する。しかし肝心の日本国内では、尊皇攘夷を唱える志士たちと新選組が殺しあい、薩摩と長州の関係も悪化。あげく、長州征伐まで実施されてしまう。
 踏んだり蹴ったりの中、歯を食いしばって耐えた高杉は、桂小五郎(中村雅俊)、村田蔵六(片岡鶴太郎)、伊藤博文(堤大二郎)、久坂玄瑞(永島敏行)ら、藩内の優秀な人物たちと、日本の近代化に尽力する。そのひとつが、「奇兵隊」だった。士農工商の身分を取っ払った画期的な軍隊は大活躍するものの、高杉は病に倒れる・・・。
 グラグラ幕府から、いかに外国に付け入るスキを与えず、維新に至ったか?最近人気の「新選組」とは違う角度で、幕末を見られる。飄々と動乱を生き抜く桂(中村雅俊好演!)らに比べ、病でどんどんやつれていく高杉の悲しさよ。さだまさしの主題歌「冬の蝉」も涙を誘う。ハイライトシーンでは1500万円かけて製作した「蛤御門」を一気に爆破。出家シーンでは剃髪し、病気役のためには大減量した松平健の迫力演技にも注目。

掲載2003年10月03日

「御家人斬九郎」祭りDVDじゃ見られない!豪快な殺陣と独特のユーモアのある人気作、50話一気に放送。

(ごけにんざんくろう) 1995〜2001年

掲載2003年10月03日

 剣の達人だが、堅苦しい生活が苦手な松平残九郎。通称・斬九郎(渡辺謙)。家柄はいいが、御家人としては最下級。超貧乏なのに美食好きの猛母・麻佐女(岸田今日子)に「八百善で食したい」などとわがままを言われ、仕方なく禁じられた副業をする。その副業は、罪人の斬首。そんな斬九郎のところには、なぜか、事件が舞い込んでくる・・・。
 かの「眠狂四郎」の作者・柴田錬三郎が、晩年、最も力を入れた作品と言われる。「狂四郎」は、本人が妖気を漂わせ、女関係も好き嫌い問わず手を出したりするニヒリストだった。一方、斬九郎は体はでっかいが、女心をつかむのは下手なやつ。ヤバい副業をしているものの、堂々と日の当たる場所を歩く、度胸と明るさを待ち合わせている。原作のタイトルも「男ってえ奴はこんなもんさ」「二兎を追ったら二兎をとるさ」「正義の味方にだってなるぜ」「女の嫉妬はこうして斬るのさ」など、イカしている。(新潮文庫より)相思相愛?の芸者・蔦吉(若村真由美)、薙刀を振り回し、鼓をズポポン!と打ち鳴らす母、おっとりしているがじーっと斬九郎を観察している許嫁など、どうも女難は避けられない斬九郎。がらりと厳しい顔で悪人たちに立ち向かう姿は、やっぱり文句なくカッコいい!DVDにもなっていないシリーズなので、一気に50話、楽しみましょう。

掲載2003年08月08日

「怪談一つ目小僧」地蔵、化け猫にご存じ、お岩さままで。真夏の夜は、やっぱりコレでしょの怪談特集。

(かいだんひとつめこぞう) 1959年

掲載2003年08月08日

 「怪談一つ目地蔵」は、水芸師の美人太夫をめぐる因縁話。少年時代、自分が斬った盗人の娘とも知らず、水芸の竹本小浪太夫(千原しのぶ)と恋仲の京之介(若山富三郎)。
 金に困った京之介は、死んだ盗人の元相棒の娘(花園ひろみ)に乗り換える。邪魔者とされた太夫は、かつて自分が捨てられていた一つ目地蔵の近くの古池に突き落とされて殺される。以後、夜な夜な太夫の幽霊が・・・。悪役・若山富三郎の恐怖の表情を見ていると、やっぱり怪談には濃いめの顔だちが必須条件だとわかるはず。幽霊と水の組み合わせは絶妙で、さらに目がピカーッと光る地蔵は、怖いというより懐かしい忍術のようでもある。
 またご存じ「四谷怪談」は、仲代達矢・岡田茉莉子ほか、豪華キャストでお届け。妻お岩(岡田)の父を殺害してまで離縁を拒否した民谷伊右衛門(仲代)だが、美女お梅(大空真弓)と結婚し、さらに出世まで約束するという男(小沢栄太郎)の誘いに乗って、岩を殺害してしまう。その祝言の夜、恐ろしいできごとが・・・。「私を見捨てるつもりかえ?」と振り向く茉莉子の怖いこと!そしてそれに驚く仲代のリアクションもまた怖い!
 このほか、有名な化け猫騒動を描く「怪談 鍋島の猫(鍋島怪猫傳)」、怪談映画の巨匠・中川信夫の「怪談かさねが渕」など、名作が連発。部屋を暗くしてお楽しみください!

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。