ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2002年08月30日

「荒野の素浪人」三十郎の三倍強い!剣豪と泥棒見習いとガンマンの三人組が行く。ちょんまげ西部劇。

(こうやのすろうにん) 1972年

掲載2002年08月30日

 三船敏郎といえば、もちろん、黒澤映画の主演男優「世界のミフネ」として知られているが、テレビでは、映画とはひと味違ったユニークな活躍を見せる。
 そもそも「荒野の素浪人」の主人公・峠九十郎というキャラクター誕生のきっかけは、映画「用心棒」の桑畑三十郎や「椿三十郎」の“三十郎”の三倍強い、ことから命名されたという。名前を倍掛けする発想もすごいが、なんで「三倍」だったのか。二倍で六十郎も、四倍で百二十郎も、ゴロが悪いというのはわかるけど。その倍掛けネームを世界のミフネがオッケーと承諾したというのも、なかなかいい話だと思う。
 そんな九十郎がいかに強いか。それは一度に三人以上を殺傷するすごいオリジナル必殺剣「八方達磨返し」に現れる。この技、前を斬った瞬間、太刀を左手に持ちかえて、後ろを刺し、同時に右手の小刀で前のもうひとりを攻撃するという瞬間技。さすがに三船敏郎以外にできる技じゃない。
 この番組のもうひとつの魅力は、九十郎のふたりの相棒だ。忍術の心得があるらしき泥棒見習いの香具師の二郎吉(坂上二郎)と、五連発銃をぶっ放す“五連発の旦那”こと鮎香之介(大出俊)。宿場の悪と対決する三人にヒューッとからっ風が吹く。これはまさに西部劇。理屈抜きで楽しみたいシリーズ。

掲載2002年07月13日

「御金蔵破り」 若山富三郎の隠れた人気シリーズ。富三郎VS花沢徳衛の“執念対決”に注目。

(ごきんぞうやぶり) 1981年

掲載2002年07月13日

若山富三郎の時代劇というと「子連れ狼」シリーズやテレビの「唖侍・鬼一法眼」「賞金稼ぎ」などがあるが、実はこの「御金蔵破り」も隠れた人気シリーズ。
伝馬町の牢で五年のつとめを終え、婆姿に出た土蔵破りの名人・大蛇の富蔵(富三郎)。佐渡金山で非業の死をとげた父の恨みを晴らそうと、五年の間に練りに練った計画は、「江戸城の御金蔵破り」だった。相棒に選んだのは、牢で知り合った二枚目の遊び人の半次(林与一)だが、この半次には、賭場を荒らされてつけ狙う弥太五郎一家という敵がいた。さらに富蔵の動きを執拗に追う目明かしの勘兵衛(花沢徳衛)。富蔵は、人々の目をくらますために花火大会を計画実行の日に選ぶが・・・。
己の技を駆使して、天下の御金蔵を狙う富蔵と自分のカンを信じて張りつく勘兵衛。お互い一歩も譲らない、執念親父と執念親父の対決は決着は?また、あっと驚く盗賊の仕掛け技もこのシリーズならでは。共演は他に宇津宮雅代、岸田森、岸田今日子。
弟・勝新太郎に比べ、アクは強くないが、実は殺陣のうまさには定評があった富三郎。この番組でもとても60代とは思えない活躍ぶりを見せる。さらに独特の低音で「俺がいただく」なんて言われると、ぞぞーんと背中に響く。味のある俳優であった。

掲載2002年04月12日

「ご存じ金さん捕物帳」道を歩きながら、いきなり歌うお陽気奉行。笑って踊れる橋幸夫版金さん。

(ごぞんじきんさんとりものちょう) 

掲載2002年04月12日

 長寿時代劇の中でも、ひとつの役をいろんな役者が演じたという点では「金さん」シリーズが一番。中でも、もっとも若々しい金さんとして登場したのが、この橋幸夫版だ。
 初代中村梅之助、二代目市川段四郎と、ポッチャリおとな顔が続いたのに対して、三代目の橋金さんは、顔はすっきり面長で肌もつやつや。町人姿になっても、足元軽やかで、道を歩きながら、突然♪生まれついての一本気〜、お江戸お江戸八百八町〜などと歌いだす。まるでミュージカルのようなこの展開。歴代金さんの中でも、もっともお陽気な奉行なのだ。テレビ朝日系で制作されたリシーズの中では、唯一の歌手出身者で、カルト的注目度も高い。しかもただお陽気なだけではない。立ち回りでは、ピピーッと花札を投げて武器にする。金さんに特定の技がある設定も珍しい。お侍育ちのくせにいつ花札投げの技など取得したのか...底知れない力を秘めた奉行なのである。いよいよお白州では「白だか黒だか知らないが、この桜吹雪を散らせそこなったのが運の尽きでい!」と啖呵一発。悪者どもを黙らせる。
 この他、ねずみ小僧志願の山田太郎、珍妙な発明家の柳沢真一、お奉行が心配でたまらないじいの大友柳太朗など、コメディ的場面が多いののも、橋版金さんの特長。細かいことは気にせずに、カラッと笑って一件落着。ぜひ、金さんとお陽気に歌い踊りたい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。