ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2002年04月05日

「雲霧仁左衛門祭り」山崎努の渋さが最高に活きた一本。池上季実子の変身ぶりとスペシャルトークも楽しみ。

(くもきりにざえもんまつり) 

掲載2002年04月05日

 山崎努は最近、ビールのCMなどで「渋いのにコミカル」な面が浸透しているが、この「雲霧」では、渋さの本道を見せつけている。“犯さず、殺さず、貧しい者からは盗まず”の掟を守り、江戸から上方までの大仕事をしてのける大盗賊・雲霧仁左衛門。その手口は巧妙を極め、例えば一味の美女・七化けのお千代を堂々と大店の後妻に嫁がせ、後に盗むというロングラン&超大作だ。おかげで代々の火盗改めも手も足も出なかったが、ここで協力なライバルが登場した。火盗の新長官・阿部武部(中村敦夫)だ。正義のためならカッと熱くなるのは、中村敦夫にぴったり。
「わたしは丸裸になろうとも雲霧一味を捕らえてみせる!!」と宣言すると、いままでダレてた同心や密偵たちもやる気を出し、とうとう雲霧一味のしっぽをつかまえてしまう。
 しかし、そこで芋づる式にならないのが、雲霧。今度は火盗のひとりスパイに引きずり込み、阿部式部、雲霧と対立する凶悪盗賊団と対決することに...。
 ひたすら雲霧を慕うお千代のむせかえるほどの色香や、一味の小頭(石橋蓮司)のぞくっとする怖い顔など、キャストは豪華版。地上波では見られなかった雲霧最後の大勝負は必見。池上季実子のスペシャルインタビューでは、公家の女から女盗賊に早変わりするなど「お千代の世界」を堪能できる。画面から再び、むせかえる色香が...。お楽しみに!

掲載2002年02月15日

「帰ってきた木枯らし紋次郎」二十年分の渋みを加えた敦夫紋次郎。岸部一徳、鈴木京香も共演の長編。

(かえってきたこがらしもんじろう) 

掲載2002年02月15日

 上州新田郡三日月村に生まれた天蓋孤独の渡世人、人呼んで木枯し紋次郎。かつては口には長い爪楊枝が目印の、腕のたつ旅人だった。その紋次郎が五年前、壮絶な戦いの末に木曽川の谷底に消えた。てっきり死んだと思っていた紋次郎が、実は木こりの頭に助けられ、木曽山中で木こりとして生きていた!
 谷底に転落、実は生存というパターンは少なくないが、その後、木こりになっていたとは...。テレビ初登場(72年)から二十年以上もたって「帰ってきた」中山敦夫紋次郎。刻み込まれたしわや貫禄は、リアルで渋い。
 定職を得、ひとつところに落ちついたのも束の間、木こりの頭の息子が渡世人になって悪事に加担。連れ戻して欲しいと頼まれた紋次郎は、再び渡世の道へ舞い戻るハメに...。
 以前も長患いをして、そこに腰を落ちつけるのかと思ったら、やっぱり旅に出た紋次郎の話があった。その時も今回も新品がないわけでもないのに、結局、いつもの破れ三度笠と汚れ縞合羽を選ぶ紋次郎。彼なりのコーディネイトでないと落ちつかないのか、それともジンクスなのか。実は時代劇の主役の中でも密かに衣服にこだわる男なのである。
 市川崑演出は、若くはない紋次郎の悲しみまでも画面に出し、泣ける。岸部一徳、鈴木京香、加藤武、石橋蓮司ら共演者もいい味、股旅好きにはたまらない長編。

掲載2002年01月03日

監督「岡本喜八」時代劇大全集 新作「助太刀屋助六」でも大暴れ!アクションとユーモアのあふれる時代劇に注目。

(かんとく「おかもときはち」じだいげきだいぜんしゅう) 

掲載2002年01月03日

現在の日本の映画監督の中で、もっともユーモアにあふれ、アクションと洒落のわかる作風の人、それが岡本喜八監督だ。
監督は58年第一回監督作品「結婚のすべて」を発表、続く「独立愚連隊」(59年)で人気を博し、やがて独特な味の時代劇も作り上げていく。
今回は、加山雄三が逃亡忍者に扮して、最新兵器の争奪戦に巻き込まれるアクション作品「戦国野郎」(そもそも“戦国に“野郎”をつけちゃうこのセンスがナイス。もちろん脚本は監督)、三船敏郎が“桜田門外の変”に係わった無名の浪人に扮した「侍」(脚本は橋本忍)、妖刀を操り殺人を繰り返す剣豪・机龍之介(怖い顔の仲代達矢)の狂気を描き、アメリカ公開時にも話題となった「大菩薩峠」、座頭市シリーズ最高の観客動員数を記録した「座頭市と用心棒」(用心棒は三船敏郎)、そして、幕末、領内に流れ着いた三人の黒人とともに夜な夜なジャムセッションを繰り広げる音楽好きの殿様(古谷一行)の奇想天外な物語「ジャズ大名」(原作・筒井康隆、音楽・山下洋輔)など、オカモトテイストいっぱいの作品が大集合。
立ち回りや人情など、時代劇本来の面白さと「こんなこともできたか」と新しい可能性を感じさせる作品の数々。たっぷり楽しみたい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。