ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2001年12月15日

「剣客商売」若き加藤剛と山形勲が剣客親子に。池波正太郎ファンにはたまらないシリーズ

(けんかくしょうばい) 

掲載2001年12月15日

娘よりも若い女房をもらい、気楽に生きる老剣客・秋山小兵衛(山形勲)と、剣ひとすじ、まじめ一本やりの息子大治郎(加藤剛)。太平の世に、剣をしていかに生きるか。世を知り尽くした小兵衛と、不器用な大治郎は、さまざまな事件に巻き込まれる。時には剣にまつわる恨みもあり、時には男と女の情愛が事件のカギともなる。一対一の真剣勝負もあれば、多勢での闇討ち、弓矢などを使った卑怯な相手にも、ひるまず戦いを挑む親子のすがすがしい活躍ぶりがいい。そして、父親と女房の仲のよさに赤面するなど、大治郎のウブなところには、思わず笑いがこみあげる。大治郎は「まじめ」な加藤剛にぴったりで、原作者の池波正太郎も認める存在だったという。(ちなみにこの役を演じている時に誕生した加藤家の長男は「大治郎」と名付けられ、11月公開の新作映画「伊能忠敬」では親子の役で共演している)
今回放送される中には、池波作品の「にっぽん怪盗伝」の中の「市松小僧始末」を脚色した「男まさり」も入っており、この同じ原作は「鬼平犯科帳」でもとりあげられている。見比べるのも一興。
大治郎の一本気もいいが、原作よりも貫禄がある感じの小兵衛・山形勲の笑顔が心に残る。見応えのあるシリーズ。

掲載2001年10月12日

「剣」映画と対等のスタッフ、キャスト。ペリーも号泣の傑作オムニバス。

(けん) 1967

掲載2001年10月12日

「俺は名刀だ 少なくとも自分ではそう思っている しかし銘がない そのためか常に持人定まらず よく切れる故をもって持人さらに定まらず」 小沢栄太郎の名セリフで始まる異色のオムニバスシリーズ。主人公は「俺」こと一本の刀だ。その切れることといったら、触れただけで大木の幹がまっぷたつという具合。が、銘がないために有名無名さまざまな人の手に渡ることになる。切れすぎる刀を手にした人間の欲望と悲喜劇...。
 まず脚本陣がすごい。黒澤映画を支えた橋本忍、菊島隆三、小國英雄、井手雅人。当時まだ新鋭だった早坂暁、国弘威雄、野上龍雄らも執筆。監督も工藤栄一、篠田正浩、渡辺裕介、小野田嘉幹らが勢ぞろい。キャストも田村高廣、山崎努、平幹二朗、加藤剛、島田正吾、辰巳柳太郎、フランキー堺など主役級から志村喬、藤原鎌足を脇に持ってくるぜいたくさ。制作費は映画並み、仕上がりと人気は映画以上!?と伝説を作った。
 ストーリーを少し紹介すると、第一話では天下一の剣豪(丹波哲郎)が地道に修行しているのに、そのニセ者がちやほやされて大金を得ているという皮肉、第二話では、一攫千金を夢見たギラギラ野武士(三國連太郎)と百姓(緒形拳)のユーモアと悲劇。モノクロ画面(制作は67年)を見ながら、思わず泣ける名演技の数々。お見逃しなく!

掲載2001年10月05日

着ながし奉行 曲者俳優大集合。岡本喜八監督の痛快編

(きながしぶぎょう) 1981

掲載2001年10月05日

 政治腐敗で町奉行が一年のうちに三回も変わった西尾藩。今も昔も構造改革は大変ということだが、江戸の領主は「こういう時こそ、変わり者リーダーを」と、どこかの国のような発想から、「着ながし奉行」の異名を持つ、望月小平太を町奉行として抜擢する。
が、この新奉行。さすが「裃&袴拒否」の「着ながし奉行」だけあって仕事ぶりも型破り。第一、全然役所に出てこない。どうやら悪の巣窟、通称“壕外”に乗り込んでいるらしい。抜け荷、売春、人殺し、なんでもありの壕外の大掃除はできるのか、その黒幕は誰なのか...。
 ふだん低い声で重厚なイメージの仲代達矢が男気あふれるモテモテ町奉行を熱演。ただカッコいいヒーローの活躍話ではなく、とぼけたユーモアも感じさせる演出、最後の粋などんでん返しには、さすが岡本喜八監督、と拍手を送りたくなるようなテンポのよさ。
 配役も中谷一郎、近藤洋介、神崎愛、岸田森、小沢栄太郎、殿山泰司、草野大悟、天本英世、益岡徹と、曲芸役者大集合という感じ。さらに後に同じ山本周五郎の原作「町奉行日記」を「どら平太」として主演することになる役所広司(若い!)も若侍役でチラッと出演するのもお楽しみだ。
 原作の面白さと演出の巧み、さらにキャストの楽しさが堪能できる。贅沢な長編。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。