ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2001年07月13日

「剣客商売」 軽妙酒脱。これぞ理想の隠居ライフ

(けんかくしょうばい) 1998年

掲載2001年07月13日

 池波正太郎特集の夏。代表作の一つ。
 知る人ぞ知る剣の達人・秋山小兵衛は、息子大治郎に道場を譲り、40歳も年下の娘を女房にして、悠々自適の隠居生活。が、人々に「大先生」と慕われ、剣の修羅場をくぐってきた小兵衛は、数々の事件に遭遇する...。
 この物語の面白さは、なんといっても登場人物にある。剣の道に行きながら、ふと若い女おはる(小林綾子)に「手を出して」しまう小兵衛(藤田まこと)の人間臭さ、対照的に女っ気がいっさいない堅物の息子大治郎(渡部篤郎)。権力者・田沼意次(平幹二朗)の娘で、これまた剣に生きようとする美人剣士・三冬(大路恵美)。その三冬が実は大治郎にちょっと気があるというのも興味深い。堅物同志の恋は実るのか...(原作では結婚しますが)他にも小兵衛を慕う岡っ引きの弥七(三浦浩一)や下っ引きの傘徳(山内としお)の町人気質、抑えた色気のある料亭不二楼の女将(梶芽衣子)などなど配役も豪華。
 真剣な立ち回りの場面もあり、焼きもち焼きのおはるに小兵衛がやりこめられるなどユーモアある場面もあり。もちろん、池波作品に欠かせない料理の数々も登場。
 現在、地上波で放送中の新シリーズでは、大治郎が「恩師の墓参に」旅に出ていることになっており、不在。このチャンネルでは大治郎ファンにはうれしい第一シリーズ、第二シリーズの一挙放送。存分にお楽しみを!

掲載2001年06月30日

「雲霧仁左衛門」地上波未放送の3話は必見!!

(くもきりにざえもん」ちじょうはみほうそうの3わはひっけん!!) 1995

掲載2001年06月30日

 7月の特集は「映像で綴る「池波正太郎の世界」第2章」ということで、注目作品が勢ぞろい。中でも「雲霧仁左衛門」は、通の池波ファンの間でも大人気の作品だ。
 享保年間。入念な準備と完璧な組織力で、「犯さず、殺さず、貧しき者からは奮わず」人を傷つけることなく大きな盗みをやってのける大盗賊“雲霧仁左衛門”。その探索を司るのは、火付盗賊改方だが、常に雲霧一味に出し抜かれ、煮え湯を飲まされてきた。が、新任の火盗の長官は、「全財産をなげうってでも、雲霧一味を捕縛する」と宣言。今までやる気のない長官にイライラしていた同心、岡っ引きたちを叱咤激励する。
 これと目をつけた商家に女賊“七化けのお千代”らを潜入させる雲霧。密偵を使い、雲霧一味の下っぱを追い詰める火盗。凶悪な盗賊一味との対決や、女につけこまれる火盗役人の裏切りもからみつつ、いよいよ押し込みの当日がやってくるが・・・騙し、騙されの緊迫感は、この作品ならでは。
 配役は、雲霧一味に山崎努、小頭の木鼠の吉五郎に石橋蓮司、お千代に池上季実子。火盗方は、長官に中村敦夫、与力山田藤兵衛に西田健、同心高瀬に鷲成功、密偵に増田恵子。
とにかく「なんとしてでも!!」とテンションの高い敦夫長官と、沈思黙考型の努雲霧の対決は見物。さらに大きな仕事を決意した雲霧との最終決戦をにおわす最終3話は地上波未放送のお宝編。これは見逃せない!

掲載2001年03月29日

昨日消えた男

(きのうきえたおとこ) 1941年

掲載2001年03月29日

 天下の二枚目、長谷川一夫扮する遠山の金さんが、謎の難事件に挑む。長屋の嫌われ者が殺される。長谷川“金さん”が探索に乗り出すと、彼に恨みを持つ者たちの怪しい行動が次々と明るみに。下手人は一体? 
 原作は、ハリウッドの人気探偵シリーズ「影なき男」。お白洲に登場した金さんが、絡み合う事件の糸を見事な推理で解き明かす。ミステリー・ファンにもオススメしたい本格推理時代劇。
 複雑な人間関係と、長屋の人情、金のいざこざなどから、死体は動かすわ、ポーズはとらすわ、金は盗むわの複雑な事件。にこにこしているだけで本当に推理してるのか? と思わせる“長谷川”金さんではあったが、そこはさすがに名奉行、ちゃんと真犯人にも目星をつけていたのであった。
 マキノ正博監督は、この作品を隣のセットで撮影中の渡辺邦雄監督に対抗して、9日間で撮ったという。映画全盛期ならではのエピソードも残る。艶っぽい山田五十鈴もいい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。