ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2000年07月05日

木枯し紋次郎

(こがらしもんじろう) 1972年

掲載2000年07月05日

 無口で無愛想。口癖は「あっしには関わりのねえことでござんす」。破れた合羽と三度笠、くわえ楊枝で孤独の旅を行く紋次郎。市川崑監督の凝った演出と中村敦夫の体を張ったリアルな殺陣がいい。豪華女優陣の悪女ぶりも見どころ。特別番組「中村敦夫の紋次郎5分劇場」では裏話も披露。紋次郎の楊枝の秘密が今、明かされる!
 ちなみに、紋次郎の苦手なものは「こんにゃく」。生まれたとき、自分がこんにゃくで間引かれそうになったからだという。その命を救ったのが12歳年上の姉。紋次郎が年増女と関わることが多いのは、姉の面影を見るからかもしれない。その姉が亡くなったとき、故郷を捨てた。紋次郎、十歳。「その後、一家は離散したと伝えられ、天涯孤独な紋次郎がどういう経路で無宿渡世の世界に入ったかは、定かでない」(芥川隆之のエンディング語りより)。

掲載2000年07月05日

着ながし奉行

(きながしぶぎょう) 1981年

掲載2000年07月05日

 江戸から新奉行として丹後田辺藩に赴任した望月小平太は武芸よりも遊芸に通じる遊び人。奉行所には一度も顔を出さず、悪の巣窟である歓楽街で遊興三昧。が、その腹には藩の重役も巻き込んだ、悪の巣窟の大掃除という決意があった。原作は5月に公開された映画「どら平太」と同じ山本周五郎の「町奉行日記」。主演は仲代達矢。共演の岸田森、草野大悟、天本英世、殿山泰司ら通にはたまらない俳優の名演怪演、岡本喜八監督らしいユーモアとキレのある演出。最後の最後の仕掛けもお見事!な長編。
やたら主人が手を洗ったか気にする小平太の供の小者(殿山泰司)、見た目ブラック・ジャックのような怖いやつ(岸田森)、トイレが近い美人芸者(神崎愛)、大酒飲みのうわばみ娘(浅茅陽子)など、わき役キャラも強烈。ほかにも小沢栄太郎、中谷一郎、近藤洋介、「どら平太」に主演した役所広司や益岡徹がチョイ役で。義理人情に厚く、時には悪人相手でも義理を通して見せる、懐の深い男。多くの映像作家が、この原作を愛した理由がよくわかる。

掲載2000年07月05日

木枯し紋次郎

(こがらしもんじろう) 1972年

掲載2000年07月05日

 薄汚れた風貌、無表情。走り、転び、よろける殺陣。市川崑監督と中村敦夫の傑作は、今も斬新。十朱幸代、市原悦子ら豪華ゲストを配し、人間の強欲や悪女、虐げられた人々…リアルな描写と紋次郎の孤独が胸に迫る。当時熱狂した人も、一度見てみたかった人もぜひ。ほかに裏話満載の「中村敦夫の紋次郎5分劇場」も楽しい。そのなかでは、撮影のハードさを物語る紋次郎骨折事件の真相も明らかに!?
ハードな撮影といえば、以前インタビューした阿藤海さんが、殺陣を振り返って
「事実上のデビューが『木枯し紋次郎』のちんぴら役でさ、田んぼを走り回ってすぐ斬られちゃうんだけど、とにかく大変なんだよ田んぼを走り回って斬り合うってのは。でも、それをすごく誇りに思っているんだ。」
と、語ってくれたのが印象的だった。役者が惚れこむ番組でもあったのである。中村敦夫はじめ、新人たちが体当たりで演じる現場の熱気は、今見ても画面からひしひしと伝わる。
阿藤さんも、大変だったわりにはうれしく懐かしそうだったのだ。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。