ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2008年07月11日

『物書同心 いねむり紋蔵』
舘ひろしがさえないお父さん同心に。
心がほっとする事件解決の秘訣とは?

(ものかきどうしん いねむりもんぞう) 1998年

掲載2008年07月11日

藤木紋蔵は43歳。町奉行所例繰方(れいくりかた)で書記として、過去の判例などを整理する地味なお役目を30年も務めている。同じ同心でも外回りならば、「付け届け」などで実入りがあるが、内勤の紋蔵にはそれがない。家には恋女房お里(風吹ジュン)と五人のこどもがいるから、家計は楽ではなのだ。とはいえ、マイペースな紋蔵さん、奉行所でもいびきをかいて、ついたあだ名が「いねむり紋蔵」…。
 そんな紋蔵のところにも、いろいろな事件が持ち込まれることがある。旗本の息子が奪われた刀を取り返せとか、記憶を失った男の身元を調べろなどなど、調べていくうちに意外な「裏」が出てきて、紋蔵を悩ませる。第七話では、見習い同心になった息子(山本耕史)が、将軍御側御用取次(竜雷太)の嫡男ともめごとを起こす。相手に非があると怒る息子をなだめ、ひたすら謝罪のために先方に出向く紋蔵。その真摯な態度こそ、彼の事件解決の秘訣ではと思わせる。
 連続時代劇初主演の舘ひろしは、刑事ドラマでおなじみのアクションを控え、普通のお父さんに徹しているのが面白い。臨時収入があれば、こどもたちと魚を食べて「ほんの少し、ツイてたというか」と含み笑い。ただし、紋蔵は実は剣の達人!?というシーンもちらりと出てくるので、お見逃しなく。

掲載2008年07月04日

『紫頭巾』
田沼意次の陰謀をぶっつぶせ!
浜畑賢吉の表の裏の顔の変化にご注目

(むらさきずきん) 1972年

掲載2008年07月04日

紫頭巾こと扇喬之介(浜畑賢吉)は、元勘定吟味役・扇紋太夫の嫡男。田沼意次(渥美国泰)の不正を摘発しようとして殺された父の復讐を果たすため、田沼一派と戦っていた。そんな喬之介の表の顔は、深川だるま横丁に住む売れない浮世絵師狩田秀麿なのだ。
「こんなまねはしたくはないが、許せ」と颯爽とした紫頭巾が、秀麿になった途端、「そりゃあたしだって、絵描きのはしくれだよ」と、なよなよしてしまうのが面白い。浜畑賢吉は、劇団四季でも活躍したこともあり、ダイナミックな演技と、コメディセンスはさすが。
 第七話「暗殺の赤い矢」では、江戸に出てきた弓道の名人(戸浦六宏)に田沼の魔の手が。汚い手を使って、名人を悪の道に引き込もうとする田沼のやり方に怒った紫頭巾は、大胆な勝負に出る。紫頭巾は、白昼、屋根の上から飛び降りつつ、悪人たちを斬ったり、「心配ご無用!」とポーズを決めたり、動きやセリフが芝居かがっているのも大きな特徴。そしていざとなれば、出た!「秘剣修羅八双」。
彼を追う若き岡っ引き早縄の左平和次(和田浩治)が、秀麿とは将棋仲間という設定も面白い。彼の手下のとんがり松(東八郎)のすっとぼけぶりも毎回のお楽しみ。「大岡越前」「ルパン三世」でもおなじみの音楽山下毅雄も、得意の口笛を響かせている。「大岡越前」の紫頭巾(松坂慶子)のルーツはここかも?

掲載2008年02月29日

『水戸黄門海を渡る』
長谷川一夫が白髭の黄門様に!
助さん(市川雷蔵)格さん(勝新太郎)大活躍。

(みとこうもんうみをわたる) 1961年

掲載2008年02月29日

諸国漫遊の旅を楽しむ黄門様(長谷川一夫)と助さん(市川雷蔵)、格さん(勝新太郎)は、仙台で謎の幽霊船の事件に遭遇。船が蝦夷松前藩の御用船と知り、さっそく乗り込む。すると船底には瀕死の若い武士が。なんとそれは格さんの友人で松前藩士の砂田重助だった。重助の話で、ご公儀に献上するはずの蝦夷の測量図が奪われたことを知った黄門様は、事件のカギは蝦夷にあると直感。現地ら乗り込むが、助さんとははぐれてしまう。
 面白いのは、初の白髭ご隠居役という長谷川一夫のキャラクター。助さんが行方不明だというのに、「海のもくずと消えたかも」と意外に冷静。天下の副将軍という身分が発覚(ちなみに印籠シーンはありません)すれば、「とうとうバレたな」とここでも冷静。さらにクライマックスでは、助さん、格さんたちに悪人たちを「かまわん、斬りなさい」とあっさり指令。かなりクールですよ、ご老公!
しかし、そこはさすがに天下の二枚目長谷川一夫。ご老公ともうひとつ大事な役を二役で演じているのだ!
 蝦夷の地には、エキゾチック美人のノサップ(野添ひとみ)がいて、重症に陥った彼女に格さんは決死の救出術を編み出す。「座頭市」でアウトロー役が定着する以前の勝新太郎の二枚目の魅力にも注目したい。それにしても助さんは大丈夫なのか?結末は放送で!

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。