ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2007年11月22日

『森の石松』中村勘三郎が、時代劇の人気者を熱演
おっちょこちょいの石松に思わずほろり。

(もりのいしまつ) 1992年

掲載2007年11月22日

清水一家にいわれのない罪をかぶせた上に、恩人を拷問で殺させた憎い相手・保下田の久六をたたっ斬った清水次郎長(古谷一行)は、森の石松(中村勘九郎/現・中村勘三郎)と松五郎(火野正平)だけを連れて、長いたびに出る。親分思いのふたりだが、旅は困窮を極め、つらいものに。それでも歯を食いしばって耐えて、やっとの思いで清水に帰り着くことができた。親分に四国の金比羅様に刀を奉納するよう頼まれた石松は、大張り切り。あぶなっかしい石松を皆は心配するが、なんとか無事に役は果たした。ところが、その帰路に旧知の吉兵衛(石橋蓮司)に騙され、亡き次郎長のあねさんの香典をとられた上に、なぶり殺しの運命に…。
 ご存知、次郎長一家の中でも、人気者の石松。勘三郎は、威勢のいいふんどし姿もいとわず(大河ドラマ『元禄繚乱』でもふんどしを締めるシーンがあった。これも役作りのポイントなのかも?)、街道を走り、清水の町を走り、最後は土砂降りの中、敵に囲まれ、泥だらけで鬼気迫る大熱演を見せる。
 石松の遺品には、たどたどしい手で「おやぶんへ」と書かれた土産の扇子や、でべそに悩む親友松五郎への「でべそにきく」薬が。ぐっとこらえる親分。号泣する松五郎。根っからのお人よしで愛嬌のある石松に泣かされる長編。

掲載2007年03月15日

『南町奉行事件帖 怒れ!求馬Ⅱ』ホームドラマの楽しさと事件探索のスリル、若き原田龍二が走る!走る!青春時代劇。

(みなみまちぶぎょうじけんちょう いかれきゅうま2) 1999年

掲載2007年03月15日

名奉行と評判の根岸肥前守(田村高廣)の孫である根岸求馬(原田龍二)は、一本気で気のいい若者だが、次男ゆえに出世とは無縁で自由な立場。家を出て、そば屋「千鳥」に居候しながら、江戸の町に起こる事件の探索にあたっている。
 岩崎ひろみ、原田の実弟の本宮泰風をゲストに迎えた「妹は可愛い小悪魔」の回では、卑劣な辻斬りを追いつつも、求馬の亡き父隠し子?騒動で大騒ぎに。
 凄腕の辻斬りに六人も犠牲になり、町奉行所の姉崎(田中健)、女岡っ引きのお京(持田真樹)らも必死に捜査をするが手がかりがつかめない。そんなとき、求馬は長吉(本宮)と組んで、美人局をする若い娘およし(岩崎ひろみ)と知り合う。反抗的で強気なおよしは「あたしの親父は侍なんだ」、なんとその“父親”が求馬の亡き父だと言い出す。「それなら父親の名前を全部漢字で書いてみろ」と迫る求馬。およしの話には真実味があり、すべてを知るはずの肥前守もはっきりと断定できない。そんなとき、長吉が辻斬り事件に巻き込まれ、怒ったおよしは、危険な男の後を追うが逆にさらわれた!?
 亡き夫の“疑惑”も知らずとぼけた味を出す求馬の母(野川由美子)、芸者姿ながら銀かんざしを飛ばして戦う豆千代姐さん(野村真美)もかっこいい!

掲載2007年01月22日

『武蔵坊弁慶』チャールズ皇太子・ダイアナ妃もご観覧!中村吉右衛門の“でっかい弁慶”に注目

(むさしぼうべんけい) 1986年

掲載2007年01月22日

平安末期。寺を炎上させた疑いでお尋ね者になるほどの暴れ修行僧・武蔵坊弁慶(中村吉右衛門)は、京の都で夜な夜な人々から刀を強奪していた。しかし、五条大橋で源義経(川野太郎)と運命的な出会いをし、義経の従者として生きる決意をする。やがて伊勢三郎(ジョニー大倉)ら、義経を慕う者たちと協力して、義経を源氏の武将として盛りたて、平家との戦いに命がけのはたらきをするが、鎌倉の源頼朝(菅原文太)からは、義経追討の命が出てしまう…。
 テレビでの活躍が少なかった吉右衛門が、堂々の演技を見せ、実際の身長の何倍にも見えるのが印象的。歌舞伎「勧進帳」でも知られる安宅の関での脱出譚、平泉での壮絶な立ち往生の大熱演も、吉右衛門らしい様式美で泣かせる。さらに義経と静御前(麻生祐未)、弁慶と玉虫(荻野目慶子)の悲しい恋もからめて、女性ファンからも人気になった。
 また、放送当時、世界中から注目を集めていたチャールズ皇太子・ダイアナ妃が来日。揃って、渋谷NHKのスタジオ収録を見学されたのも大きな話題に。白いスーツに帽子姿のダイアナ妃が、白い頭巾の僧服の弁慶と歓談する写真も残っている。その背景には、当時の大河ドラマが現代劇だったため、やはり日本的ドラマとしてこの作品が選ばれた?との説も。いろいろな意味で時代を感じる名作。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。