ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2006年07月20日

『またも辞めたか亭主殿〜幕末の名奉行・小栗上野介〜』勝海舟のライバルは短期・損気の男、命がけで日本を守った“一人プロジェクトX”

(またもやめたかていしゅどの) 2003年

掲載2006年07月20日

名門に生まれた幕臣・小栗上野介(岸谷五朗)は、遣米使節として渡ったアメリカから帰国。江戸では、開国か攘夷で大騒動が続いていた。アメリカで見聞したことをふまえ、これからは、日本に本格的な造船所が必要だと考えた小栗は、勘定奉行に就任するや、計画を実行に移そうとする。しかし、幕末、疲弊した幕府にそんな余裕はない。小栗は、巧みに上司を操り、奇跡的に費用を捻出。しかし、やり方はかなり強引で、周囲とは始終もめていた。もめてうまく立ち回るどころか、「うーっ!!」と感情を爆発させ、ついには「辞める!!」と言ってしまう小栗。妻の道子(稲森いずみ)は、ため息をつきつつ、「またですか…」。ちなみに小栗は勘定奉行だけで、四回も就任したり、辞めたりしている。才能はあるが、世渡り下手。現代にも通じるなーと感心する。
「船酔いだったが、やらねばならないことがメニーメニーよ」と小栗が言えば、従者(石橋蓮司)が「ハワイはワンダホーでございました」などと応えるやりとりの場面、ちょんまげに洋装など幕末のエリートらしい小栗の日常、ライバル勝海舟(西村雅彦)との友情。短期&損気ながら、どこか人をひきつけた小栗だが、やがて意外な結末に。最期まで造船所を守るために奔走した小栗の生き方と、「広い世界でそちとわしは出会った。それで十分じゃ」という道子への深い愛情にも胸打たれる。

掲載2006年05月18日

『壬生の恋歌』最終回「旅立ち」朝敵となった幕府軍と新選組の運命は。平隊士が見た幕末、最終回へ。

(みぶのこいうた) 1983年

掲載2006年05月18日

飯を食うため、武士になりたい一心で新選組に入った入江伊之助(三田村邦彦)。だが、そこに待っていたのは、法度に違反すれば即刻切腹という厳しい世界だった。会津藩とのつながりで羽振りのよかった新選組も、倒幕勢力の拡大で、次第に追い詰められていく。近藤勇(高橋幸治)、土方歳三(夏八木勲)が作り上げた鉄壁の結束も崩れ、戦場で傷つき、ばらばらになっていく隊士たち。砲撃の最中、伊之助が思うのは、時雨綱太郎(赤塚真人)、千石静馬(笑福亭鶴瓶)、山田峯太(内藤剛志)、畑中三郎(渡辺謙)、鶴橋多喜人(金田賢一)ら、若き平隊士仲間の顔だったのか…。
 物語はいよいよクライマックスへ。
 当チャンネルで、三田村邦彦さんインタビューをした際、スタジオ撮影が基本だったため、戦場シーンもすべてNHK大阪のスタジオにセットを作ってしまったことに俳優陣も驚いたという。しかも、下草のひとつひとつにまで心を配ったていねいなセット作りに感動する出演者も多く、鳥羽伏見の戦いなど、おおいに気合が入ったシーンになったとか。
 ちなみに当時「必殺仕事人」と掛け持ちで出演していた三田村さんは、「とにかく寝る時間がなかった。若かったたらできたということもあるけど、まったくタイプの違う作品で、しかもどちらも素晴らしい人たちに支えられたことが励ましだった」とのこと。納得。

掲載2006年04月20日

「壬生の恋歌」 若き三田村、渡辺謙、内藤剛志、遠藤憲一… 無名の新選組隊士の過酷な青春ドラマ

(みぶのこいうた) 1983年

掲載2006年04月20日

幕末、倒幕派浪士に騒然となる中、結成された新選組。その新隊士募集に、はるばる応募してきたのが、入江伊之助(三田村邦彦)、時雨綱太郎(赤塚真人)だった。本当は、田舎育ちの彼らには、「尊皇攘夷」も「公武合体」も関係ない。あるのはただ『武士になりたい。腹いっぱい食べたい』それだけだった。新選組屯所に到着したふたりが見たのは、自分たちと同じ若者たちと、彼らを厳しく試験する、近藤勇(高橋幸治)、土方歳三(夏木勲)だった。
 新選組の有名人ではなく、無名の若者が経験する過酷な現実。伊之助らは、インテリ同志(笑福亭鶴瓶)に知恵を授かり、なんとか入隊できたものの、隊の規律に背いた者は即切腹という厳しい現実が彼らにのしかかる。初回から、いきなり人間の裏表を見たり、祇園の芸妓(名取裕子)に「とっとと帰れ!」と玄関払いされて大ショックの伊之助。このあたりは、現在ドロドロ昼ドラマで活躍する中島丈博の鋭い脚本らしい。当時、「必殺シリーズ」と掛け持ちで寝る時間もないほどだったという三田村邦彦はじめ、ほとんど時代劇初出演だった渡辺謙、内藤剛志、金田賢一、当時さわやか路線だった(?)遠藤憲一らの若さがはじける新選組青春ドラマ。あの杉田かおるも伊之助を慕うけなげな娘として登場。時代は変わりました…。鶴瓶の嫌味な演技もなかなか。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。