ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2005年11月17日

「松平右近事件帳」町医者“藪太郎”が医学知識を駆使。里見浩太朗ならではの華麗な剣さばき。

(まつだいらうこんじけんちょう) 1982年

掲載2005年11月17日

松平右近は、十一代将軍徳川家斉の弟でありながら、長崎で医学修行。江戸に帰ってからは、町医者の藪太郎として、市中に暮らしている。その人柄を見込まれて、事件の検死も頼まれるため、いつのまにか探索の先頭に立っているのだった。
 医師が主役の時代劇は結構多いが、これだけ身分のあるドクターは珍しい。しかも、腰の刀は、名刀“一文字”。よく見ると、とても長い!この刀を華麗に操り、「俺は殺生は嫌いだ」と名セリフを言いつつ、悪人たちを成敗する姿は、時代劇のベテラン里見浩太朗ならでは。が、その右近も、実母の親友で大奥の実力者・弥生局(淡島千景)にかかると、「まあ、大きゅうなられて!」などとまるでこども扱いなのが面白い。右近様、いったいおいくつなのでしょうか。
 また、右近はいまだ独身。老中(芦田伸介)の姫(若原瞳)が、清純なラブ光線を送っていても、いまひとつ心が動かない。慎重なのか、堅物なのか。このあたりも弥生局の頭の痛いところとなりそう。
 このほか、右近の乳兄弟で威勢のいい梅吉(渡辺篤史)、色っぽいお銀(佐藤友美)、隠密の清太郎(松山英太郎)など明朗時代劇には欠かせない顔ぶれが揃う。「とざい、とーざいー!」と、ナレーター芥川隆行の名調子も耳に心地よい。

掲載2005年09月15日

「毛利元就」 「三本の矢」でおなじみの智将・毛利元就。松坂慶子のキョーレツ側室様も見もの。

(もうりもとなり) 1997年

掲載2005年09月15日

舞台は戦国時代の初期。当時の中国地方は、出雲の尼子経久(緒形拳)と山口の大内義興(細川敏之)という強力なふたつの一族が支配していた。その間で苦労しながら領主としてがんばっている父・毛利弘元(西郷輝彦)の苦労を見ていた元就だったが、家督は兄元興(渡部篤郎)が継ぐはずだった。その兄と遺児が亡くなり、急遽跡取りとなった元就は、やがて知力、武力、政治力を活かして、西日本最大の勢力を持つ大大名になっていく。
 主人元就が「松寿丸」と呼ばれた少年時代を演じたのは、V6の森田剛。まだあどけなさの残る森田は、あぐらが大の苦手だったが、役を演ずるうちに上達したらしい。森田の評判がよかったため、成人した元就役の中村橋之助はかなりのプレッシャーだったという。
 また、この作品では、女性パワーに注目が集まった。中でも自分の美しさに自信満々。常に美容に気を使い、若い女子には露骨に嫌な顔をする弘元の側室杉の方(松坂慶子)のコミカルな存在感は、内館牧子脚本ならでは。元就の正室・美伊(富田靖子)も夫には言いたいことははっきり言う。こんな女子たちに尻をたたかれたから、元就は出世したのか。本当は矢よりも強いのは女子だったのかも?人間ドラマとしても楽しめる大河ドラマ。

掲載2005年07月06日

「無宿侍」忍者装束の隙間からのぞく天知の苦悩!五社英雄企画のハードボイルド時代劇。

(むしゅくざむらい) 1973年

掲載2005年07月06日

厳格な掟に縛られた忍者集団「陰」。実は彼らは、「陰公方」と呼ばれる謎の人物に操られる暗殺集団であった。首領(西村晃)に命じられるままに使命を果たしてきた実力派忍者のゲン(天知茂)と弥藤次(山崎努)だったが、庄屋の娘さと(宇都宮雅代)と出会ったことで運命は大きく変わってしまう。さとに恋して起きて破りの「抜け忍」になった弥藤次と、「陰」の娘きらら(松岡きっこ)との結婚を迫られるゲン。苦しみながら、掟どおりに弥藤次を斬ったゲンだが、「自分はいったい何なのだ」と迷った末、ついに自ら抜け忍になり、追われる身に。
 「男の苦悩」を表現させたら、右に出る者はない俳優・天知茂。忍び装束の隙間から、トレードマークの眉間のしわが垣間見える。くーっ、渋い!一方、彼を裏切り者として追撃する側のかなりの渋さ。目をつぶされた露口茂が「死ね!!」とばかりに迫ってくる。茂VS茂。さらには「抱け」と裸で迫ったのにゲンに逃げられた女忍者きららも変装して追ってくる。松岡きっこは、なかなかのくノ一ぶり。
 五社英雄が企画を担当。田中徳三、中川信夫といって名映画監督が参加して、特撮も駆使した独自の映像を展開。夏八木勲、芦屋雁之助ら、豪華な顔ぶれもうれしいハードボイルド時代劇。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。