ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2001年04月21日

無用ノ介

(むようのすけ) 1969年

掲載2001年04月21日

 高額の賞金のかかった“首”を求めて旅をする隻眼の浪人、無用ノ介。原作は『ゴルゴ13』のさいとう・たかをの人気劇画だ。
 時代劇の賞金稼ぎというキャラクターは、みんなすごく個性的なのだが、この“無用ノ介”もそれに輪をかけて強烈。どこの土地へ行っても余所者の野良犬扱い。そもそも名前からしてこれほどまでに悲惨な男も珍しい。なのに、ただギラギラした男かと思えば、意外と“いいヤツ?”と思わせるシーンも出てくるのがミソ。かの内田吐夢監督も
“いままでにない現代の主人公がいるような気がする”
と評した。一筋縄ではいかない奥深さが、また見たいというファンのこころをくすぐり続けてきた。主題歌を歌っているのは、なんと歌謡界の女王、美空ひばり。この豪華さも“また見たい度”を高めているのかも。
 主演の伊吹吾郎は、一万人以上もの応募者の中から選ばれたのだが、ペリーは以前、さいとう・たかお先生ご本人にそのオーディションの様子をうかがったことがある。伊吹吾郎の第一印象は、
“風貌があまりに劇画的”
だったという。確かに、がっちりした体と彫りの深い顔立ち。太い眉毛に低い声。もちろん体躯を生かした殺陣も豪快。劇画さながらの迫力だ。しかし、伊吹吾郎本人の性格は、当時から“格さん”的で、いたって真面目。その真剣な役作りは『無用ノ介』の画面からもほとばしっている。
 ちなみに本作が放送されたのは、69年。しばらくしてスタートしたのが、あの『水戸黄門』だった。後にそちらで長く格さんを演じることになろうとは、当時23歳の伊吹吾郎は知る由もなかったろうな。

掲載2001年01月24日

むっつり右門捕物帳 鬼面屋敷

(むっつりうもんとりものちょう きめんやしき) 1955年

掲載2001年01月24日

 むっつり右門こと無口で知られる同心、近藤右門は居合と柔術の達人。右門とは正反対のおしゃべりな岡っ引き伝六と、奇怪な事件の探索に乗り出す。
 「鞍馬天狗」と並ぶ、往年の時代劇スター、アラカンこと嵐寛寿郎の代表作。喜劇王エノケンと息のあったコンビで志村喬らが共演している。連続殺人の影にちらつく黄金の謎は解明できるのか!?アラカン“右門”の名推理をお楽しみに。
 NHK朝の連続テレビ小説「オードリー」でも見直される“御大”のあたり役。佐々木味津三の原作は、江戸川乱歩も賞賛した謎と美学、そして右門のさわやかな活躍が光る。アラカンで右門を、と最初に思いついたのは、29歳の若さで戦死した天才監督、山中貞雄であった。山中貞雄脚本による右門シリーズ第一作は1929年に制作され大ヒット。以降、アラカンは35本に主演した。本作は監督、脚本、山中嘉次郎で55年公開。アラカンの円熟期の作品。右門シリーズは一度見るとクセになる。

掲載2001年01月18日

源義経 総集編

(みなもとのよしつね そうしゅうへん) 1955年

掲載2001年01月18日

 平家がわが世の春を謳歌していた平安末期の京都。牛若丸は、五条大橋で乱暴者の僧、弁慶と対決しこれを打ち負かす。やがて平家と源氏は戦いの渦へ…。
 歌舞伎界から父の反対を押し切って映画界のアイドルとなった中村錦之助の美男義経。弁慶、月形龍之介は貫禄の名演。弁慶の忠義、母、常盤の苦悩、華麗さと哀しみをたたえた錦之助義経がいい。映画界入りを反対した父も喜んだという秀作の総集編だ。
 昨年公開された、浅野忠信主演の映画「五条霊戦記」でも主役として描かれた源義経。義経モノには宿敵から家来となった弁慶や、兄の頼朝、母、常盤御前とのかかわりなどを描く人間ドラマと、どこか幻想的な絵巻のような面白さを併せ持った不思議な魅力がある。
 昭和28年に21歳で映画界に入った錦之助は、もともと大の映画ファン。当時、映画誌の編集長だった淀川長治さんにファンレターを出したという逸話もある。本作での錦之助は、大好きな映画界で、思う存分羽ばたこうという時期。元気もよければ姿も美しい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。