ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2000年08月22日

宮本武蔵 10時間ぶっとおしクライマックス

(みやもとむさし じゅうじかんぶっとおしくらいまっくす) 

掲載2000年08月22日

 ただただ強くなりたい単純さから、剣の奥義「五輪書」をまとめるまでにでっかく豪快に成長した武蔵。今も実業界、スポーツ界までファン多数。とにかく魅力的な男なのだ。とくに錦之助の武蔵と、高倉健の小次郎の死闘には息を飲む。巨匠、内田吐夢監督の珠玉の名作5部を10時間一挙放送。お見逃しなく。
 内田吐夢監督は撮影に入るにあたり
“一年一作、五年で武蔵と錦之助の成長過程を撮りたい”
と宣言したという。ドキュメンタリーを思わせる撮り方で、いま考えれば、とてもぜいたくな製作スケジュールだった。しかし、現実は厳しく、映画界の潮流は時代劇から仁侠モノへと移っていく。当然のように製作予算も下方修正を余儀なくされる。でもってシリーズ最終作・巌流島の決闘のシーンは、最初の予定の海ではなく琵琶湖で撮影したというエピソードも残っている。いずれにしても、よくぞ最終話までがんばって作ってくれました!という出来栄え。やっぱり小次郎の高倉健は見ものでっせ。

掲載2000年08月14日

宮本武蔵ニ刀流開眼

(みやもとむさしにとうりゅうかいがん) 1963年

掲載2000年08月14日

 木刀一本もって修行に出た武蔵は次第に腕を上げ、天下の柳生家と勝負!と思ったら、己の身の程を悟る結果に。その後、京で名門の誉れ高い、吉岡道場一門と対決。その場には後に出会う佐々木小次郎の姿もあった。本作はじめ全5部作とも、内田吐夢監督が中村錦之助を主役に名伯楽ぶりを発揮した。男の苦悩や因縁、一騎討ちなど目が離せない展開の数々、小次郎役の高倉健にも注目。
この作品の武蔵が魅力的なのは、なんといってもスーパーマンではないところ。ちょっと修行して強くなると自分の腕を過信しちゃったり、油断も隙もないはずなのにオババに吹き矢でやっつけられたり、いざ対決というときにも相手が強そうだと、反射的にささっと隠れたりと、人間臭い共感できる部分をいろいろ持っているのだ。
それに対して、いかにもエリート然としていて沈着冷静に
“私は先生より強くなった”
なんぞと嫌味なことばかり言う小次郎の存在は対照的で面白い。また、それを高倉健が演っているのもナイス。だって今じゃ考えられないでしょ、あの独特の渋い語り口で
“不器用ですから”
なんて言いながら、男の哀愁を背中で目一杯演じちゃう健さんが嫌味なエリート役だもの。
 そんなこんながありながら、いよいよ誰もが知っている二人の対決へと期待が高まるわけだが、そこへ行き着くまでの様々なエピソードを知ってこそのお楽しみってものなのだ

掲載2000年08月07日

宮本武蔵

(みやもとむさし) 1961年

掲載2000年08月07日

話(吉川英治)よし、役者(中村錦之助)よし、そして何より「宮本武蔵」という男そのものがいい。関が原の戦いで自分の腰抜けぶりを痛感した17歳が木刀一本抱えて修行の旅に。数々の戦いを経て、成長する姿を描く。泥田を転がるリアルな殺陣や剣に悩む男の生々しさも見事に描かれる。巨匠、内田吐夢監督が五年を費やした武蔵映画の決定版。
現在、武蔵を描いた井上雄彦の劇画「バガボンド」のコミックが講談社から発売され、通算で850万部も売れているという。それだけ武蔵という男には魅力があるってことだ。この映画でも、挫折してひたすら修行して、それでも悩む武蔵には、スーパーヒーローではない、人間くさい魅力がある。また、この映画のもうひとつの話題は豪華共演者。三国連太郎、月形龍之介、東野英治郎、里見浩太郎、片岡千恵蔵…、永遠のライバル、佐々木小次郎は、なんとあの大スターが!(これが誰かは次回をお楽しみに)

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。