ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2004年03月19日

「日本犯科帳 隠密奉行」錦之介の出張隠密捜査!内助の功・岸田今日子との名コンビで、痛快に事件解決。

(にほんはんかちょう おんみつぶぎょう) 1981年

掲載2004年03月19日

朝比奈河内守(萬屋錦之助)は、明朗快活な人物。大目付として武家の取締りに当たるのが、表向きの仕事だが、実は「隠密奉行」という秘密の任務も命じられていた。
 ある時、寺社奉行・小笠原佐渡守が何者かに暗殺される。何やら複雑な事情ありとにらんだ朝比奈は、早速、讃岐に出張。そこで事情通の鳥追い女・お紋(野川由美子)と出会う。実は、琴平一帯は寺社領。藩の支配も、幕府の管理も及ばないことをいいことに、質の悪い連中の横暴が続いていた。しかも、まだ何か裏もある様子…。
 金比羅参りに出掛けた途端、ならず者たちにからまれた朝比奈は、牢に入れられてしまう。が、そこでめげる朝比奈ではない。潜入捜査のはずが、なぜかとても目立ってしまう、大胆不敵な隠密奉行の活躍が始まる。
 錦之介のおおらかな魅力と、潜入捜査の面白さが楽しめる作品。なぞの出張ばかりしている夫と暮らす、朝比奈の妻りん・岸田今日子の名演技にも注目したい。萬屋&岸田の組み合わせは、錦之介の“破れシリーズ”「破れ新九郎」でもいい味だった。また、共演の新克利は、やはり錦之助主演の人気作「長崎犯科帳」の奉行と部下の名コンビ。他に御木本伸介、浜田寅彦、和崎俊哉、小池朝雄ら、時代劇ではおなじみの面々が揃う。痛快時代劇の楽しさいっぱいの一本。

掲載2003年02月21日

「忍者カムイ外伝」“抜け忍”カムイに次々襲いかかる刺客。時代の空気も漂わせる白土三平の傑作アニメ。

(にんぷうかむいがいでん) 1969年

掲載2003年02月21日

 四代将軍家綱の治世。徳川の地盤もほぼ固まったかと思われる頃。人知れず厳しい掟に縛られて生きる忍びの者たち。その中で、天才的な才能を持つ忍者カムイは、非情な忍びの掟に耐えられず“抜け忍”となる。掟を破れば即、死。首領にカムイ抹殺を命じられた刺客たちと、カムイの壮絶な戦いが始まった・・・。
 いつ、どこで襲われるかもわからない極限の緊張感。自死をも恐れない驚くべき忍術の数々。その中でも人間味を失わないカムイ。毎回最終回のような哀感が漂うのに、また見たい。強烈な魅力のあるアニメだ。
 原作は64年に雑誌「ガロ」で発表された白土三平の「カムイ伝」のカムイが抜け忍になってからの物語。ちなみに「カムイ伝」は、当時の大学生たちに熱狂的に支持されたマンガであった。さらに「カムイ外伝」放送当時は、日本で学生運動の嵐が吹いた頃。荒涼とした平原にカムイに破れた忍者の軀が風にさらされる、まさに「死して屍拾う者なし」な風景は、どこか時代の空気を感じさせる。
 ナレーションの城達也、時代劇でもおなじみの俳優で、カムイの声担当の中田浩二、主題歌「忍びのテーマ」を歌うレコード大賞歌手・水原弘。彼ら「男の低音三人衆」も物語にぴったりくる。忍者アニメの傑作。

掲載2001年12月28日

年末特別企画「剣」志村喬傑作選 志村喬が、伝説の名作シリーズで見せた演技の数々。このチャンネルならではの傑作選。

(ねんまつとくべつきかく「けん」しむらたかしけっさくせん) 

掲載2001年12月28日

「剣」は、銘はないが切れ味はすさまじい一本の刀を主人公にした異色の時代劇。小沢栄太郎が「剣」の声を担当し、切れすぎる刀を手にした男たちの浮沈を物語る。黒澤映画を支えた脚本家(橋本忍、菊島隆三、小國英雄、井手雅人)らのオリジナル作品を、小道具にまでこだわる映画なみの予算とキャスティングで制作された伝説の名作シリーズだ。
その中でも、今回は特に「志村喬」が出演した9作品をピックアップ。志村喬といえば、1905年兵庫県に生まれ、舞台役者としてスタートしたが、トーキーの到来で映画に転向し、初期にはエキストラや悪役。黒澤映画「姿三四郎」での熱演などで、人気を得、「七人の侍」など黒澤映画には欠かせない俳優となった人。(82年没)
この「剣」のシリーズは、一話完結なので毎回役柄は違うが、たとえば「山犬ともぐら」では、粗暴な山犬(三國連太郎)と小心者のもぐら(緒形拳)が「剣」を得て、お互い奇妙な友情を感じつつ、一攫千金を狙う。志村喬はふたりをそそのかしつつ、なんとか姫を無事陣地に送り届けようとするが、それには裏がありそうで・・・というお話。最後まで緊張感にあふれ、見た後、心にしみてくる感覚は、緻密で優れた作品だけの味。志村喬のさまざまな演技を楽しめるこの年末企画は、まさにこのチャンネルならではのお楽しみといえる。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。