ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2001年02月26日

人形佐七捕物帖

(にんぎょうさしちとりものちょう) 1984年

掲載2001年02月26日

 将軍家の姫君がお忍びで市中に祭り見物に出かける。その目の前で倒れた人形の中から、女の死体が! 金色の爪を持つ猫、怪しげな武家屋敷、登場する謎の御前… 金田一耕助シリーズを手がけたの横溝正史原作らしい奇怪な連続殺人事件に、片岡孝夫(当時)扮する“人形のようにいい男”佐七が挑む。
 二枚目佐七の孝夫はまさにはまり役。江戸情緒と推理、時代活劇のすべての要素がそろった見ごたえある長編。
 しょっぱなから、佐七の子分、豆六(下條アトム)と岡場所の女とのからみの場面。露出度もなかなかで、おとなの時代劇という雰囲気だ。このアトムのからみのシーン、サービスカットと思いきや、その女が殺されて人形に埋め込まれるという猟奇殺人の導入部だった。そして物語は一気に横溝ワールドに突入していく。権力者が黒幕となった大事件に、佐七はじめ、老練な岡っ引き(花沢徳衛)、佐七のライバル(田中浩)らが一丸となってぶつかる様は迫力がある。将軍本人に、
“てえそう話のわかる上様じゃねえか”
と一席ぶつ孝夫の役者ぶりは見もの。

掲載2001年01月22日

俄(にわか)=浪花遊侠伝

(にわか=なにわゆうきょうでん) 1970年

掲載2001年01月22日

 司馬遼太郎の原作を木下恵介が演出、山田太一が脚本を執筆した。このコンビで面白くないわけがない。
 幕末の大坂で、商家の丁稚から日本一の侠客になった明石家万七の、破天荒で愉快な半生を描く痛快作。けったいな暴れん坊、万七に林隆三、ストーリーテラーの美人芸者に藤村志保、子供賭博の胴元に白木みのるなど、芸達者が熱演している。専門チャンネルならではのお宝時代劇。
 ちなみに“俄”とは、辻辻で演じられる即興喜劇のこと(もともとは即興の意味で、今でも“俄か仕立て”とか“俄か仕込み”は言うでしょ)。万吉の人生が、俄芝居にたとえられている。父親に捨てられ、母と妹を守るために丁稚を辞め、子供ながらに博打(子供博打っていうのがまたスゴイ)の金に目をつける万吉。悲惨なのにどこか笑ってしまうユーモア、銭に対する嗅覚やガッツはさすが大坂というカンジで、江戸を舞台にした時代劇とはひと味違うどろ臭さがいい。制作は1970年っつうことで、なんと「クイズハンター」の柳生博が若だんな役!当時は「木下恵介・人間の歌」という枠で放送された。ストーリーテラーの藤村志保のきりっとした美しさも光る。

掲載2000年12月26日

眠狂四郎 無頼剣

(ねむりきょうしろう ぶらいけん) 1966年

掲載2000年12月26日

 忌まわしい出生の秘密を抱え、投げ込み寺で孤独に生きる剣豪、狂四郎。この虚無の男の前に、江戸を火の海にしようと企む強敵が現れる。 柴田錬三郎の原作を、脚本・伊藤大輔、監督・三隅研次の豪華コンビで映像化。主演はもちろん市川雷蔵! 没後30年以上たった現在も、ファンクラブが存続しチャンネルへのリクエストが絶えない、雷蔵“狂四郎”の円月殺法。対決する天知茂の存在感たっぷりの演技も圧巻。
 大目付の祖父を恨んだオランダ人の狼藉によってうまれた狂四郎。母を失い、祖父からも捨てられた境遇で己の剣だけで生きていくニヒルなヒーローだ。愛刀は無双正宗。切っ先で円を描く独自の“円月殺法”は、円を描ききるまで生きていた者がいないという必殺剣… と、書くのは簡単なのだが、さてこの必殺剣を具体的にどう映像化するか。三隅監督も市川雷蔵自身も頭をひねり、生み出されたのが本作でも披露している“円月殺法”なのだ。苦心のかいあって、雷蔵以降の狂四郎役者にとってのスタンダードになった。本作では、円月殺法”本家・雷蔵の技を堪能したい。とくに、雷蔵がもっともこだわったという、切っ先の向きの工夫を見逃すな!

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。