ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2009年05月29日

『忍法かげろう斬り』
渡哲也のニヒルな忍者が走る、斬る!
太地喜和子、范文雀の美人くノ一にもご注目

(にんぽうかげろうぎり) 1972年

掲載2009年05月29日

将軍家光就任。世にはまだ不穏の空気が漂っており、青年将軍は海千山千の諸大名を治めるのに、苦心をしていた。その将軍を補佐するのが、知恵伊豆といわれた松平伊豆守。彼は強力な忍者を使い、公にできない事件を人知れず解決させ、各地の動きを探らせようとする。しかし、彼の前には「闇公方」という謎の存在が立ちはだかる。
 伊豆守(高橋悦史)に見込まれたのが、鷹(渡哲也)だった。しかし、伊賀・甲賀の一派とは違い、主君を持たない「不知火」の一族。秀吉に滅ぼされた筑紫の者だった。一族のリーダーとして期待されてはいるものの、あまり仕事やる気がない。記念すべき第一話では、なんと伊豆守に「うまい酒」を出されて、ついうっかりと肥前の国加藤家と庇護の国大村家の婚礼に隠された陰謀を探るはめに。差し出された守り袋を「要らない。必要なのはあんたたちだ」と突き返す鷹。これは彼なりの心配りなのだ。鷹は美人腰元に弱い!?
「大門軍団」など刑事ドラマでは熱血リーダーを演じる渡哲也が「酒に惹かれてつい引き受けちまった」と苦笑しながらも、大村家の幼い姫を守るために必殺のかげろう斬りを使う。男っぽさは刑事ドラマと同様。彼を助けるくノ一・朱鷺(太地喜和子)、百舌鳥(范文雀)の凛とした美しさにも注目。

掲載2009年05月22日

『鼠小僧次郎吉』
林与一が鼠小僧と悩めるニヒル浪人の二役
新藤兼人脚本・三隅研次監督のテンポよい鼠

(ねずみこぞうじろきち) 1965年

掲載2009年05月22日

怪盗鼠小僧(林与一)は、町方の必死の探索わかいくぐり、大名や豪商のもとから金を盗んでは貧しい庶民にばらまく、英雄のような存在だった。その鼠の危ういところを救ったのが、浪人小谷新九郎(林二役)。新九郎は貧乏人の味方をする鼠に共感し、「オレはねずみ教の信者だ」などと言って、助け合う。そこに新九郎とも関わりが深い市谷の貧民窟を買占め歓楽街にしようと企む悪徳親分・凡字の安五郎(神田隆)、その上前をはねる大田黒喜平次(須賀不二男)が出てきて、事件は複雑になっていく。
 当時、長谷川一夫主演の大河ドラマ「赤穂浪士」で大人気となった林与一と大映の時代劇の名手・三隅研次監督が組んだ娯楽作。
まず、みどころは立体的に造られた貧民窟のセット。迷路のように入り組んだ貧民窟に鼠小僧が逃げ込む様はとてもリアルだ。そして、そこに暮らす面々も、夢路いとし・こいしはじめ、どこかとぼけた顔で、役人や悪人たちを煙に巻く。悪女お滝の長谷川待子はキレがいいのに対して、鼠小僧にマゲを切られ「この顔をどうしてくれるんだ!!」と八つ当たりする悪役・須賀不二男はどこか笑える。これも新藤兼人の脚本のセンスだろう。林与一のニヒルで美形な浪人姿は、後に「必殺仕掛人」の西村左内を彷彿とさせ、ファンにはうれしいかも。

掲載2008年09月19日

『逃亡者おりん』
美しき暗殺者おりんが走る!戦う!
話題の超セクシー衣装にも注目。

(のがれものおりん) 2006年

掲載2008年09月19日

江戸中期。将軍の指導力のなさに付け込み、江戸城では陰謀が渦を巻いていた。その暗殺にからんでいる闇の組織こそ、「手鎖人」。首領は、恐ろしい非情さで組織を引っ張る植村道悦(榎木孝明)だった。手鎖人のひとり、おりん(青山倫子)は、道悦に指示されるまま、サイボーグのごとく暗殺をしてのける生活だったが、あるとき、死んだと聞かされた自分の娘が生きていることを知る。道悦に乱暴されて身ごもった子どもであったが、自分が騙されていたことを自覚したおりんは、組織の掟を破って脱走。「逃亡者(のがれもの)」として命を狙われながら、娘の姿を求めて、旅を続ける。
 車のCMで佐藤浩市に魅惑の微笑みを見せていた美人女優・青山倫子が、初の時代劇で過激なアクションに挑戦。スタイルのよさを存分に発揮したレオタードのセクシー衣装も注目の的だ。道なき道を進むおりんの立ち回りは、足場が悪いところばかり。私はご本人にインタビューした際、「生傷が絶えない。でも、楽しい」と微笑まれ、この役に対する意気込みがなみなみならぬものだと感じた。また、キラー・カンはじめ、敵方も個性派が揃い、あおい輝彦、田中健、小林隆らがいつもとは違う「怖い顔」を見せるのも見物。
 合言葉は、おりんの必殺技「手鎖御免!!」
 ニュータイプのヒロインを応援したい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。