ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2008年08月22日

『日本怪談劇場 第8話 「怪談 首斬り浅右エ門」』
栗塚旭が恋に狂い、仕事に苦悩する
テレビ史上、稀にみる怖さのシリーズ

(にほんかいだんげきじょう) 1970年

掲載2008年08月22日

1970年に東京12チャンネルで放送され、怪談映画の名手中川信夫らが参加して、本格的な怖さで評判になったシリーズ。凝った映像、音楽も印象的。
山田浅右衛門(栗塚旭)は、親代々、首斬り役人として黙々と仕事に励んできた。しかし、役所の人間からは軽蔑され、心の中ではこの仕事に深いコンプレックスを抱いている。ある日、夜釣りに出かけた浅右衛門は、心中を図った娘を助ける。それは、かつて恋人だったおよう(長谷川稀世)だった。山田家の稼業を嫌って自分を見捨てて、小栗新之助(高津住男)といっしょになったが、小栗家は改易となり、生活苦からおようと新之助は心中を図ったのだった。おようへの未練から、首斬りに失敗し、亡霊にも悩まされる浅右衛門。山田家を逃げ出したおようと浅右衛門の運命は…。
物静かな中に狂気をはらむ男を、栗塚旭が渋く熱演。運命に逆らい、もがく姿は痛々しくも怖い。また、はかない美しさを見せる長谷川稀世界、彼を取り巻く悪いやつらの動きからも目が離せない。
ストーリーは、「水戸黄門」などで知られる宮川一郎のオリジナル。一旦は、仕事を辞めようと決意した浅右衛門に、過去の因縁がからんでがんじがらめになる展開など、巧みな設定になっている。

掲載2008年08月15日

『人魚亭異聞 無法街の素浪人』
さらば、ミスターの旦那!
世界の三船、小川眞由美のマダムにも注目。

(にんぎょていいぶん むほうがいのすろうにん) 1976年

掲載2008年08月15日

洋行帰りの謎の浪人・通称ミスターの旦那(三船敏郎)が腰を落ち着けたのは、維新直後の横浜。元上流階級のお嬢様・北小路冴子(小川眞由美)が経営するハイカラなホテル兼レストランに用心棒として居ついた浪人は、スーツ姿の拳銃使いで実は新政府の密偵ともうわさされる・千鳥弦之進(若林豪)、なんでも屋の平助(大村崑)、新聞記者志望の譲治木村(夏夕介)らとともに、事件に遭遇する。
 第一話が「駅馬車暁の襲撃」とあるように、物語には、ピストル、葉巻、テンガロンハット、トランプ、ドレスなど、文明開化の時代らしい雰囲気と西部劇のようなムードが漂う。また、話題になったのが「人魚亭」の名前にふさわしい水中レビュー。海外から輸入された強化ガラス製の巨大水槽の中で、美女が華麗なショーを見せる。脚本陣も「木枯し紋次郎」などで活躍した大野靖子はじめ、池田一朗、津田幸於ら実力派が揃っている。
 最終話「さらば、ミスターの旦那」は、かなりミステリアス。霧の中、人力車を襲った黒い影はサソリ柄の「スピードのエース」のカードを残していく。謎の殺し屋「スコーピオン」は町の名士を襲撃。警察署長(前田吟)は必死に捜査するが、愛妻(葉山葉子)と自分の過去が関わっていることを知る。事件解決後、ミスターの旦那がした決断とは?最後まで見逃せない展開に。

掲載2008年02月01日

『眠狂四郎殺法帖』
記念すべき市川雷蔵版狂四郎第一弾。
先ごろ亡くなった田中徳三監督との出会い

(ねむりきょうしろうさっぽうちょう) 1963年

掲載2008年02月01日

今なお人気の高い市川雷蔵。その代表作のひとつ「眠狂四郎」シリーズは第一作の監督・田中徳三の熱意があって実現した企画だった。私は先ごろ、世を去った田中監督ご自身に当時のエピソードを取材したことがある。
 歌舞伎界から映画界へ転身した雷蔵は、生後まもなく養子になるなど私生活では苦労が多く、気さくな人柄の中にどこかシニカルでいたずらっぽいところがあった。田中監督は、助監督時代、雷蔵が初めて京都の撮影所に来たとき、たまたま所内を案内した縁で親しくなった。初監督した小作品「化け猫御用だ」に雷蔵が例のいたずら心からこっそり出演し、大映の幹部ににらまれたこともあったという。その監督が気合を入れた「眠狂四郎」だが、原作者の柴田錬三郎は当初、雷蔵の配役が気に入らず、「円月殺法を見せろ」と迫る。とっさに刀をくるくる回すと、原作者は厳しい顔で「とんぼとりじゃないか」。しかし、雷蔵は「勉強してきます」と次に面会したときには、しっかり技を工夫していた。田中監督との縁があったからこその熱意だったに違いない。
 伊賀忍者に襲われた狂四郎が、加賀前田藩の奥女中(中村玉緒)と関わり、少林寺拳法を操る唐人(若山富三郎)と戦うというストーリー。残念ながら、まだ練りが足りなかったと監督ご本人も笑っていたが、これが記念すべき雷蔵狂四郎第一弾なのは間違いない。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。