ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2007年10月04日

『信長 KING OF ZIPANGU』緒形直人演じる国際人信長!GO、マイケル、トオルなど斬新キャストも。

(のぶなが きんぐ おぶ じぱんぐ) 1992年

掲載2007年10月04日

長い大河ドラマの歴史の中で、意外にも「信長」を主人公にしたのは、92年の本作が初めて。起用されたのは、信長(緒形直人)、木下藤吉郎(仲村トオル)、松平元康(家康・郷博美)、濃姫(菊池桃子)、お市(鷲尾いさ子)、ねね(中山美穂)など、主に現代ドラマ、恋愛ドラマで活躍してきた面々だ。
 天正13年(1534)、信長が生まれた年は、ヨーロッパではイエズス会が設立され、宣教師たちが世界に派遣され始めた年でもあった。日本に来たポルトガル宣教師ルイス・フロイスは、天才的な武将と出会い、その物語をつづることになる。母るい(高橋恵子)から疎まれた少年期から、結婚、弟信行(保坂尚希)の謀反という波乱を経験しながら、いよいよ駿河の実力者・今川義元との戦いへ。「桶狭間の戦い」前後編だ。
 白馬にまたがり「敵は疲れて果てておる!」と自軍を鼓舞する信長は、「うつけ」と呼ばれた時代があったとは思えぬほど、鋭い感覚を持つ武将になっていた。圧倒的な兵力を持つ今川勢と戦うために「敵をおびき寄せ、鉄砲で撃つ」作戦を考えた信長は、側近に「長い間世話になった。さらばじゃ」と潔い言葉を残し、自ら先頭に立って、走り出す。一方、多勢を信じておっとりとしていた今川勢は…。信長勝利を祈祷する加納随天(平幹二朗)の怪演にも注目。

掲載2007年08月16日

『人情紙風船』山中貞雄監督の最後の作品。暗さの中に不思議なパワーがあふれる

(にんじょうかみふうせん) 1937年

掲載2007年08月16日

舞台は江戸深川の貧乏長屋。そこで老侍が自ら命を絶つ。腹を切ろうにも、生活のために刀は売り払い、首を吊ったのである。
しかし、長屋の連中は、悲しむどころか、「どうもこうも朝から嫌なもんを見ちまった」だの、「侍のくせにこんな死に方を」などと騒ぐばかり。弔いでも、大家のおごりだと大騒ぎを繰り広げる。まず、この勢いに驚かされる。
その長屋には、もうひとり、暮らしにつまった侍・海野又十郎(河原崎長十郎)がいた。女房のおたきが紙風船を作る内職をしてなんとかしのいでいるが、ただひとつの望みは、唯一の知人毛利様を頼って、仕官の道を開くこと。しかし、相手はなんだかんだと逃げ回る。強気で頼み込むこともできない又十郎。そんな折、遊び人の髪結い新三が、大店白子屋の娘をかどわかし、大金をせしめる。又十郎は、その一件と関わりを持ってしまった…。
 タイトルからは、人情いっぱいの物語のようだが、展開は明るくはない。公開は1937年。この映画の封切りの日に、まだ二十代だった山中貞雄監督のもとに召集令状が届き、そのまま戦地で戦病死することになった。この映画には、名もない人間の死が描かれると同時に、底辺で生きる庶民の姿が延々と出てくる。おたきの作った「紙風船」が何を暗示しているのか。戦争一色になりつつある時代に監督が何を思ったのか。余韻が残る。

掲載2007年04月20日

『忍者がえし水の城』「第五回時代小説大賞」小説の映像化作品 壮絶な忍者戦の裏には滅んだはずの豊臣が!?

(にんじゃがえしみずのしろ) 1996年

掲載2007年04月20日

福島家の世継・正勝の近習・高月彦四郎(市川染五郎)は、おおらかでりりしい若者。実はその正体は、豊臣秀吉の忘れ形見・秀頼の異母弟であった。やがて正勝が死去。彼のいる福島家の陣屋はしばしば忍者に襲撃を受ける。かといって、厳重な改築は徳川に謀反の疑いをかけられる心配が。そこで、彦四郎が考えたのは、陣屋の周囲をすべて水で囲い、地元民に田を作らせるという「水の砦」作戦だった。これなら、陣屋は丸見えだが、その分、敵もすぐに発見できる。意表をついた作戦に敵方も戸惑うが、それで引っ込む相手ではない。火矢など、大人数での攻撃は激しさを増す。生き抜くために彦四郎が立ち上がる。
 原作は第五回時代小説大賞作品の大久保智弘の「水の砦」。監督は降旗康男。激闘の中にも希望を持つ人々を描き出している。
 「ここを水の砦に」と語る染五郎は自らの育ちのよさが役柄とマッチして、適役。平幹二朗、丹波哲郎、石橋蓮司、金田龍之介などこわもての面々が、徳川VS豊臣の暗闘を盛り上げる。蟹江敬三が、忍びとして出ているのも面白い。つい先日、「鬼平スペシャル一本眉」でも大活躍した宇津井健が、熱血漢の福島正則で登場。二役もこなし、その役柄のギャップは見もの。また、独自の存在感で人気のあった田村英里子も影のある美女役で登場。田村ファンはお見逃しなく。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。