ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2006年11月30日

『菜の花の沖』江戸時代商人版の秀吉的大出世男・嘉兵衛!日焼けした竹中直人が大海原に夢を追う。

(なのはなのおき) 2000年

掲載2006年11月30日

今も多くの読者を魅了する作家・司馬遼太郎。その命日2月12日「菜の花忌」の由来ともなったのが、本作。
 1769年、淡路島の貧しい農家に生まれた高田屋嘉兵衛(竹中直人)は、故郷の菜の花畑と目の前に広がる青い海を愛していた。やがて、裸一貫で島を出た嘉兵衛は、大海原を疾走する夢を果たすために走り出す。
 度胸と商才は誰にも負けない嘉兵衛は、アクの強い先輩商人や水夫たちと渡り合い、やがて北洋の新航路を開拓。日本一の大船主となっていく。美人妻(鶴田真由)も娶って、各地に支店も置くなど、人生順風満帆かに見えたが、ロシア帝国と日本は紛争状態に。嘉兵衛も捕らわれてしまう…。
 大河ドラマ「秀吉」でも大出世を演じた竹中直人が、秀吉以上に日焼けした海の男になって登場。言葉や理屈が通じない相手にもどかんとぶつかる、その度胸と鋭い商売の勘には拍手を送りたくなる。一方で、各地を飛び回り、家庭を顧みる時間がほとんどなく、妻子とうまくいかなくなる現実。人間ドラマとしても現代に通じるところがありそう。
 いい味を出しているのが、妻を世話する女中役の藤田弓子と、豪商役の江守徹。「はい、おにぎり」とどんなピンチにものほほーんとした藤田と、プライドが高く白目で嘉兵衛をにらみつける江守。ベテランの演技がさえる。

掲載2006年01月19日

「眠狂四郎勝負」シリーズ第二作にして本当の原点。本作の裏にあった狂四郎シリーズの裏話。

(ねむりきょうしろうしょうぶ) 1964年

掲載2006年01月19日

ご存知市川雷蔵の「眠狂四郎」シリーズ第二作。
 正月でにぎわう江戸愛宕神社の境内で、狂四郎が偶然助けた勘定奉行の朝比奈伊織(加藤嘉)。朝比奈は、将軍家斉の息女・高姫(久保菜穂子)の超高額化粧料の支給停止を画策し、退廃した幕政改革に取り組む人物であった。高姫と越後堀家の用人白鳥主膳(須賀不二男)は、朝比奈を逆恨み。抹殺しようと腕のたつ刺客を放ったのであった。
 実はシリーズ第一作は、柴田錬三郎の原作をかなり忠実に再現したものであったが、狂四郎のキャラクターが描ききれていない部分が多かった。しかし、当時は人気俳優の作品は毎月のように製作されており、「狂四郎」も第一作公開以前に第二作公開が決定していたのであった。それまで時代劇の脚本の経験がほとんどなかったという星川清司は、第一作に続いて二作目も担当。一作目の反省から思い切って原作とは違う設定(狂四郎のねぐらが投げ込み寺だったりすること)を考案。原作者に激怒されることを覚悟で、これは一種の賭けだったという。が、結果的には大成功。
 細身ながらピンシャンと改革を進める一方で、虚無に生きる狂四郎とも妙に気が合う朝比奈、高慢にして妖艶な高姫など、キャラクターが活きた「勝負」は、まさにシリーズとしても「勝負」だったのだ。

掲載2004年04月02日

「女忍かげろう組《参》」多岐川裕美率いる美人忍び集団。鮎川いずみの体当たり演技と伊吹吾郎の活躍にも注目。

(にょにんかげろうぐみ) 1991年

掲載2004年04月02日

 「かげろう組」とは、表沙汰にできない陰謀を阻止すべく結成された女忍び集団。その黒幕は、大奥の実力者・春日局(藤間紫)だ。忍びのリーダーは陽炎こと多岐川裕美。他は、由美かおる、清水美砂、鮎川いずみなど、美形が揃う。
 今回は伝説の埋蔵金を目当てに、藩主(にしきのあきら)の双子の兄弟を事故に見せかけてすり替えた悪人集団と対決する。しかし、敵にはフランケンシュタインのような風貌の恐ろしい忍者(内田勝正)らがついている。どうする、かげろう組?と思ったら、出た!得意のお色気作戦。悪商人の目の前で「持病が・・・」と倒れてみせた鮎川。まんまと敵の屋敷に担ぎ込まれて、ねっとりした視線で誘惑する。そして、とどめは入浴だ!てっきり由美かおるの役割だと思っていたが、今回は鮎川が大活躍する。そして、異色なのが清水美砂。すっかり人が変わって(すり替わったのだから当然だが)美人とみると、すぐにお手つきにしようと企む悪殿様の寝所に、身代わりで潜入。捕らえられ、どんなに責めつけられても「すべては御仏のおぼしめしのままに・・・」と、ビクともしないのである。妖艶にしてタフなくノ一たち。そこに影のように登場する謎の男(伊吹吾郎)。柳生十兵衛?いえいえ、柳生十市兵衛!微妙な名前の吾郎の活躍にも、ぜひ注目を。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。