ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2010年08月13日

『浪人八景 雪太郎風流剣』
杉良太郎がコミカル浪人に初挑戦。
殺陣も迫力!山手樹一郎原作の幻の名作

(ろうにんはっけい ゆきたろうふうりゅうけん) 1982年

掲載2010年08月13日

杉良太郎の魅力のひとつは、「喧嘩屋右近」などでも見せる、どこかとぼけたコミカルな演技だが、その浪人版の「元祖」ともいえそうなのが、この作品。原作は、山手樹一郎、82年の地上波放送以来、どこにも放送されていなかった「幻」の名作だ。
わけあって、姫路藩を脱藩した比良雪太郎(杉良太郎)は、気ままな浪人となって江戸へと旅していた。その途中、からんできたゴマのハエ?の吉松(湯原昌幸)と浪人・三井鐘太郎(夏木陽介)と道連れになる。箱根の関所でわけあり風の美女(山口いづみ)に「夫婦のふりをしてくれ」と頼まれた雪太郎は、その願いを聞いてやるが、彼女は謎の一団に追われていた。その裏には、郡山藩のお家騒動が。郡山藩には、雪太郎が大切に思う露姫(MIE)が嫁ぐことになっていた。
当時、杉自身が「十手持ちや旅がらすの役が多かった自分にとって新境地」と語っているように、湯原・夏木とのやりとりなどは、からっと楽しく笑わせる。一方で、「念願の山手樹一郎作品で全力投球したい。今までにない杉良太郎を」と殺陣には力を入れ、郡山藩士に襲われる場面では、本物の日本刀で、根回り30センチもの孟宗竹を一刀両断してみせる迫力。本格的ワイド時代劇には初出演のMIEが可憐なお姫様に、歌手の渚まゆみが艶っぽい女将になっているところも面白い。

掲載2010年07月30日

『竜馬におまかせ!』
竜馬が新撰組と江戸城でジャズセッション!
三谷幸喜脚本・浜田雅功主演の超幕末ドラマ?

(りょうまにおまかせ!) 1996年

掲載2010年07月30日

大河ドラマ「龍馬伝」が人気を集め、またまた幕末、龍馬に感心が高まる昨今、多くのファンが放送を希望した、いわば伝説の作品が、この「竜馬におまかせ!」である。
その伝説その1は、人気脚本家・三谷幸喜の連続時代劇作品であること。「幕末好き」を公言する脚本家は、後に大河ドラマ「新選組!」を執筆することになるが、このドラマですでに新撰組を描いていた。
伝説その2は、キャスティング。主人公の竜馬にダウンタウンの浜田雅功。土佐出身の人物なのに、なぜか浜田竜馬はいつもの関西弁。それを清河八郎(西村雅彦)に「なんで」と突っ込まれたりする。彼らをリードする勝海舟が内藤剛志、千葉道場の主・定吉に伊東四朗、重太郎の別所哲也、さなに緒川たまき、岡田以蔵に反町隆史。浜田の相棒・松本人志が、ちらっとカメオ出演しているのも話題になった。
伝説その3はハチャメチャストーリー。異国を打ち払うことなど無謀だと、将軍にわからせるために、勝、竜馬が仕組んだのは、なんと江戸城でのジャズセッション! こんな音楽がある国と戦っても勝てないと諭そうとするが…。最終回、歴史の渦に巻き込まれた竜馬らの最期がしっかり描かれる、と思ったら、またまた大逆転? 三谷マジックを存分に楽しめる「フィクション」時代劇。

掲載2009年06月27日

『竜馬がゆく』
錦之介が企画・制作・主演した渾身シリーズ
正月12時間ドラマの人気を決定付けた竜馬

(りょうまがゆく) 1982年

掲載2009年06月27日

土佐の坂本竜馬(萬屋錦之介)は、江戸で剣を学び、のびのびと成長していた。時は幕末。文久元年、竜馬は土佐勤皇党に加わるも脱藩して、江戸に出る。幕臣で開国論者の勝海舟(若林豪)を斬ろうと邸を訪れるが、国の未来を読み取る勝の力に心酔して弟子入り。ともに神戸に海軍塾を開く。京で生涯の伴侶おりょう(大谷直子)に出会い、亀山社中、海援隊を作る竜馬。大政奉還を成し遂げ、開かれた日本を夢見るが…。
竜馬の波乱の一生を「ライフワークに」と企画・制作・主演をした萬屋錦之介が貫禄十分に演じる。面白いのは、新撰組相手に「本業は千葉仕込みの剣術使いじゃ!」と一歩もひかない剛毅な竜馬が、姉乙女(岸田今日子)には、さっぱり頭が上がらないこと。まめに手紙をやりとりし、ときに弱音まで見せるが、パワフルな姉に励まされ、意思を貫く。萬屋・岸田の顔合わせは、「破れ新九郎」、「銭形平次」などでもおなじみ。親しかった武智半平太(伊吹吾郎)が、「あとは竜馬いる」と言い残して最期を迎え、岡田以蔵(目黒祐樹)が「どいつもこいつも死にくされ」と悲劇的な生き方を熱演。西郷吉之助に中村富十郎、桂小五郎の竜崎勝、お登勢の淡島千景など、豪華キャストが揃ったのも、錦之介の力あってこそ。正月名物になった長時間時代劇の人気を決定付けた記念碑的作品でもある。

掲載2009年02月27日

『竜馬がゆく(大河ドラマ)』
大河ドラマで放送された貴重な一本。
犬パパでも人気の北大路欣也の男っぽい竜馬。

(りょうまがゆく) 1968年

掲載2009年02月27日

土佐の郷士の子として生まれた坂本竜馬(北大路欣也・当時23歳。メイクで眉毛極太)が、幕末の動乱期に、新しい日本を目指して全国を走り回り、豪快に活きた姿を描く。原作は司馬遼太郎。演出は和田勉。NHK大河ドラマ第六作として昭和43年4月21日に放送された第16話、現存する貴重な一本。ナレーションを名優・滝沢修が務めている。
 薩摩が大軍を率いて京にのぼるという情報が入り、土佐では藩士・郷士の間で動揺が起こる。「機は未だ熟せず。わしの言うちょることがわからんか!」というリーダー格の武智半平太(高橋英樹)の動きは鈍いと批判の声もあがる中、土佐に残るか、脱藩するか、竜馬も悩む。脱藩すれば一族みんなに迷惑がかかる。特に竜馬の母親代わりの姉乙女(水谷良重/現・八重子)は離縁されるかもしれないと説得される竜馬。しかし、乙女は、「どこにいても手紙だけは欠かさんようにしてつかあさい。あて先は坂本屋敷に」離縁するつもりと思い切った発言をして、竜馬を励ますのだった。
 この回は、水谷良重の熱演が光る。周囲が猛反対し、竜馬が路銀を工面できないよう妨害までする中、乙女だけは竜馬の心意気を理解し、応援する。「女子に手出しをする亭主に嫌気がさした」と笑いながら泣き出すシーンに思わず胸が熱くなる。名場面。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。