ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2010年04月09日

『新はんなり菊太郎』
菊さんが女を連れて帰ってきた!?
強いのに泣き虫菊さん、どう決着つけるか。

(しん はんなりきくたろう〜きょう・くじやどじけんちょう) 2007年

掲載2010年04月09日

京都東町奉行所同心頭の長男でありながら、父が祇園の女に産ませたことを考えて、弟に跡目を譲り、ふーらふーらと生きる田村菊太郎(内藤剛志)。民間の訴訟を扱う公事宿鯉屋の居候として、数々の事件に関わってきたが、三年前、ふらりと旅に出たきり、なんの音沙汰もなかった。その菊太郎が戻ってみると、彼の後を追って、娘お凛(星野真里)が登場。菊太郎には、お信(南果歩)という恋人がいる。
彼を取り巻く人々は、気をもむが…。
このシリーズから、菊太郎の父役が、宍戸錠に。浮気の過去に引け目を感じつつも、事件となると、やたら元気がよくなるのが面白い。たとえば、ある大風の日。お信が勤める料理屋に大黒様の掛け軸が飛んできた。人のいい店の主人徳兵衛(ばんばひろふみ)は、「これはおめでたい」と掛け軸の持ち主米蔵(遠藤憲一)に譲って欲しいと金を出す。しかし、菊太郎らは、この話にどこか胡散臭さを感じる。
京都の町にさわやかな風が吹くようなストーリー。菊太郎は、剣の腕は確かだが、弱い者のためによく泣くのである。
鯉屋の主人の渡辺徹、その妻多佳に東ちづる。ふたりの掛け合いも楽しい。徳兵衛が、お信に求婚したり、お凛に追っ手がいたりと目が離せない展開に。菊太郎、お信のおとなの恋行方を見守りたい。主題歌を忌野清史郎が歌っているのも印象的。

掲載2010年03月19日

『禅 ZEN』
今なお響く道元禅師の静かな教え。
彼の生涯を、中村勘太郎がじっくりと演じる。

(ぜん) 2009年

掲載2010年03月19日

乱世の鎌倉時代。八歳のときに「人々の苦しみを救う道を見つけて」と言い残して亡くなった母の言葉を守り、24歳の道元(中村勘太郎)は、海を渡って宋の国に入った。しかし、ここでも仏道は腐敗し、さまよった末に道元は、如浄禅師と出会う。彼のもとで修行を積んだ道元はやがて悟りを得て、帰国。教えを広め、共感も広がるが、比叡山からは邪教の烙印を押され、僧兵から襲撃を受ける。彼を救ったのは、幕府六波羅探題の波多野義重(勝村政信)だった。波多野の勧めで越前に移った道元は、永平寺でひたすら座禅を組み、弟子たちに仏の道を教える。
 注目すべきは、静かな道元と対象的な二人の人物。ひとりは遊女おりん(内田有紀)。子を失い、ダメ亭主に虐げられるおりんは、仏の道に目覚めていくが、彼女の美しさは、ストイックな修行を始めたばかりの若い僧には…。哀川翔のダメ亭主ぶりがいい。また、もうひとりは、時の執権・北条時頼(藤原竜也)。
権力の頂点にいながら、殺した人々の亡霊に悩まされ、道元に救いを求める。道元は、彼に「救われたいと願いながら、何ひとつ捨てる勇気がないのだ!」と時頼を一喝。
 世の中の汚れも描きながら、どこかに涼しい風が吹くような作品。悟りを開く瞬間の、ハスの花の描写など、あとからじわじわと思い出されるシーンも多い。

掲載2010年02月05日

『最後の忠臣蔵』
赤穂浪士のただひとり生き残り寺坂吉右衛門
彼の過酷な運命を追った、感動の名舞台。

(さいごのちゅうしんぐら) 2010年

掲載2010年02月05日

苦難の日々を乗り越えて、見事、主君・浅野内匠頭の仇討ち本懐を遂げた、赤穂の四十七士。ところが、寺坂吉右衛門(中村梅雀)は、大石内蔵助(西郷輝彦)に呼ばれ、これから皆と別れ、残された家族のもとを廻り、事の次第を話し、相談に乗ってくれと命じられる。身分が低いから、皆と切腹が許されないのか。つらい思いで、その場を離れた吉右衛門。臆病者とそしられ、ときに命まで狙われながらも、内蔵助に対する忠義の心で、ひたすら遺族のもとを歩きまわる彼に、心優しい女(櫻井淳子)が声をかける。しかし、彼にはさらに過酷な運命が待ち受けていた。
09年末、東京明治座で上演された舞台作品。梅雀は、明治座初座長を務めた。ペリーは、梅雀ご本人にこの作品についてインタビューしたが、そこで知ったのは、「脚本の徹底した研究」と「座長としての責任感」だった。吉右衛門は、足軽ゆえに、舞台では中腰、平伏の姿勢でのセリフが多く、体力的にはきついが、梅雀は、早着替えも含め、タフに走り回り、疲れを見せない。稽古では、若手の自主稽古を皆で応援するなど、とてもいい雰囲気だったという。後半は、ともに討ち入るはずだった吉右衛門の盟友・孫左衛門(原田龍二)が失踪した理由が明らかに。観客から、すすり泣きの声が絶えなかった名舞台。田村亮、長谷川悕世、青山良彦ら名優の演技の見もの。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。