ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2009年12月11日

『四十七人の刺客』
追悼!森繁さん。上杉家家老を渋く見せた。
高倉健が大石内蔵助を演じた武闘派「忠臣蔵」

(しじゅうしちにんのしかく) 1994年

掲載2009年12月11日

元禄14年3月。赤穂藩主浅野内匠頭(橋爪淳)が高家筆頭吉良上野介(西村晃)に殿中で刃傷におよんだ。柳沢吉保(石坂浩二)は、事件の理由を問わないまま、内匠頭の即日切腹を決める。藩の筆頭家老・大石内蔵助(高倉健)は、城明け渡しなど従順な姿勢を見せる一方で、幕府、吉良、柳沢、上杉家家老色部又四郎(中井貴一)に対して、周到な情報戦を仕掛ける。対する吉良方も屋敷を城塞のような堅牢な造りにするなど、守りを固める。
“昼行灯”的人物として描かれることが多い大石内蔵助を、「悪というなら、悪に徹しよう」「全員斬って捨てろ!」「真実など知りとうない!!」と号令をかける軍人のようなキャラクターにしている。吉良屋敷の仕掛けを打ち破りつつ進む討ち入りシーンは迫力。
本作には、森繁久彌さんが、上杉家累代の筆頭家老・千坂兵部役で出演。吉良・上杉陣を陰で支える人物として、渋いところを見せる。市川崑監督のイメージでは色部又四郎ついては、「色白で目が吊り上った官僚タイプ」だったが、森繁の千坂は、ひげもそのままの老練な印象。多くの時代劇に出演した森繁さんが贔屓にした店は京都にも数多い。筆者もそのうちの一軒に案内それたことがあったが、大将が黙々と腕を振るう小さな和食店で、森繁さんは楽しげに食していたという。

掲載2009年11月06日

『続・木枯し紋次郎』
ハイビジョンで素晴らしい映像が蘇った!
故・大原麗子のすごい悪女ぶりにも感動

(ぞく・こがらしもんじろう) 1972年

掲載2009年11月06日

72年に放送された「木枯し紋次郎」がハイビジョンに!と話題のシリーズ。その作業は、軍手でフィルムの汚れをひとつひとつ落とすという手間のかかる仕事から始まった。ラッキーだったのは、当時の撮影監督ご本人による監修が実現したことで、それによって、画面の比率が変わっても、撮影意図やフォーカスがずれることなく、新しい画面が作り出されたのだった。その結果、それまで暗くてはっきりしなかった建物の影の人物などもクリアに見え、画面に奥行きが出る結果に。その映像を観た主演の中村敦夫さんの感想は「まるで撮れたて!俺も若いなあ」…って、若いのはハイビジョンの効果ではありません!
今回、放送されるシリーズにも、元気のいい馬子の娘役で出演する新藤恵美、剛腹の母親北林谷栄はじめ、市原悦子、緑魔子、吉田日出子ら個性的な女優陣が出演。中でも印象的なのは、「水車は夕映に軋んだ」の大原麗子。
農民の水争いをきっかけに、次々人が殺される村。酒乱女に茶店でからまれた紋次郎。女の妹(大原)は謝罪するが、その姉妹には裏があった。殺しの現場に遭遇しても、「あっしには…」と通り過ぎようとするが、相手が見逃さない。否応なく長脇差を抜くはめになる。女子どもにも容赦ない人殺しが横行する裏には、恐ろしい女の業が。悪女は美女に限る!大原麗子の悪女が光ってます。

掲載2009年10月30日

『続・道場破り 問答無用』
若殿長門勇がご乱心!? その意外な真相とは
山本周五郎原作。若き日の菅原文太も出演。

(ぞく・どうじょうやぶり もんどうむよう) 1964年

掲載2009年10月30日

田宮神剣流道場の跡取り、大炊介高央(長門勇)は、心技ともに優れ、心優しい人柄で、門弟からも慕われる青年だった。ところが、父高茂の還暦祝いの夜、高央は、妹みぎわ(鰐淵晴子)の許婚・吉岡進之助(菅原文太)を斬殺する。いくら理由を問われても「無礼討ち」と言うだけの高央は、人が変わったように乱暴を働き、父や家中のものを悩ませる。苦悩の末、父は息子を紀州の田宮家に蟄居させる。しかし、そこでも有力な町人の手足を斬るなど、恐ろしい事件を起こし、家中はいよいよ騒然となる。
「三匹の侍」でとぼけた槍の遣い手の浪人・桜京十郎役で人気となった長門勇の主演第二作。異常な行動を起こしながら、村娘を相手ににこにこと川魚を食べる姿には、やっぱりどこか飄々としており、それだけに剣をとって人を斬る様子には恐怖が漂う。
そんな若殿をついに成敗することになり、その討ち手を引き受けたのが、征木兵衛(丹波哲郎)。諸国修行から帰り、親友高央を斬ることになった兵衛は、なぜ、こんな乱行を働くのか調査を開始。剣豪でありながら、どこか大物探偵のような風格があるのは、さすがボス! 山本周五郎は、高央乱行に意外な真相を用意していた。男たちの悲しみと、道場乗っ取り騒動の始末。若き日の菅原文太の立ち回りにも注目。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。