ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2009年10月16日

『新選組血風録』
いよいよ最終回!舞台は五稜郭。
土方が出あった「京の女」とは

(しんせんぐみけっぷうろく) 1965年

掲載2009年10月16日

明治期。土方歳三(栗塚旭)の実家をひとりの男が訪ねてくる。土方家では、維新後も新選組に恨みがあると称する者の来訪が続き、警戒していた。しかし、その日、やってきたのは、歳三のかつての盟友・斎藤一(左右田一平)であった。苦しい時代を生き抜いた斎藤。そこから、歳三の回想が始まる。
鳥羽伏見の戦いなど、敗戦が続き、散り散りになった新選組の中でも、土方歳三は、函館五稜郭で戦いを続けていた。しかし、圧倒的な戦力を持つ官軍は次第に包囲網を狭め、五稜郭の軍は追い詰められて行く。作戦もたてられず、息詰まった幹部から意見が求められた土方は「戦いあるのみ」と、敵の軍艦を奪うというゲリラ作戦を実行するが…。
洋装の土方の姿がカッコイイ。その彼の前に現れたひとりの女。京から来たという女(森光子)が、函館に流れてきた真意とは。
土方と沖田総司(島田順司)との物言わぬ再会は感動的。時代を駆け抜けた土方の命運が決まる最終回。
この作品の根底には、脚本の結束信二、監督の河野寿一、プロデューサーの上月信二ら、戦争経験のあるスタッフの「戦いとは何か」「生きるとは、死ぬとは」という問いかけがある。厳しい時代に翻弄され、進むしかなかった男たちの生き方を、亡き戦友たちに捧げたとしたら、思いの深さは計り知れない。

掲載2009年09月04日

『尻啖え孫市』
錦之助が、戦国のスナイパー雑賀孫市に!
勝新太郎の織田信長の敵か味方か?

(しりくらえまごいち) 1969年

掲載2009年09月04日

元亀元年二月。織田信長の城下に不思議な男が現れる。真っ赤な袖無羽織に白い革袴、黄金作りの大小、さらには背丈ほどもある鉄砲を担いだ超派手スタイルのその男こそ、三千人という最強の鉄砲集団“雑賀衆”を率いる頭領・雑賀孫市(中村錦之助)だった。
「戦は銭じゃ銭じゃ」と価値観がはっきりしている傭兵集団のリーダー孫市は、自分たちを少しでも高く売ろうと町を歩く。実は彼は、京で足の美しい女を「うまそうな女子じゃな」と見初めて、追っているのだった。そのことを知った木下藤吉郎(中村嘉津雄)は、にせものの姫をその女だと思わせて、まんまと味方に引き入れたつもりだったが、スナイパー一流の眼力を持つ足フェチ孫市をだませるはずもなかった。
原作は司馬遼太郎。
錦之助は、得意の豪快な演技を見せる一方、手紙を読んだだけで女の人相を言い当てるなど、ユニークな男を楽しげに演じている。孫市のことを「ええ男じゃが、やっかいなやつじゃ」という藤吉郎との友情の場面は、弟嘉津雄との共演だけにのびのびと見せる。
対照的なのは、勝新太郎で、冷徹な信長を抑え目に演じて、なかなかの貫禄。
監督は三隅研次。戦国を一気に突っ走るようなスピーディーな演出と、どこかもの哀しく、美しいラストシーンが心に残る。

掲載2009年07月17日

『十手無用〜九丁堀事件帖』
高橋英樹が豪快に悪を斬る!
千恵蔵、桜木健一、栗田ひろみも活躍

(じってむよう-きゅうちょうぼりじけんちょう-) 1975年

掲載2009年07月17日

九丁堀端の稲荷に依頼文と頼み料が投げ入れられると、人知れず事件解決に動き出す。その中心人物は、元南町奉行所同心・榊夢之介(高橋英樹)。彼は寺に居候して、金魚の飼育をして生計をたてているが、剣の腕は一流で独自の人間観察力を持っている。仲間は、元大泥棒の頭で今は植木屋の棟梁仁左衛門(片岡千恵蔵)と屋根職人の鉄平(桜木健一)、妹のおくみ(栗田ひろみ)、老いた女形の菊造(木田三千雄)。彼らは弱いものの訴えを聞き届け、巨悪にもひるまない。
 高橋英樹は得意の飄々とした浪人の味を出しつつ、いざ悪を前にすると、鬼のような強さを発揮。「貴様らごとき、悪党には十手無用!」のキメセリフも鮮やかだ。「八百八町連続爆破」の回では、爆弾事件で幼子を失った母から依頼がくる。いつもは温厚な仁左衛門までが「だんな、たまには乱暴なことをやりやしょう」と怒りをあらわにする。ちなみに当時は、企業連続爆破事件で世間が騒然としたころ。70年代は、世相を繁栄した時代劇が多かったとつくづく実感できる。「十手無用」の中には、テロを企てる学者とその一派が出てくるが、その裏には汚い犯罪が仕掛けられていたのだ。その一味?と思われる若い侍(河原崎建三)と親しくなったおくみが、哀しい決断を。アイドル栗田ひろみの熱演に注目。
 独特ムードの主題歌「都忘れ」も耳に残る。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。