ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2009年07月10日

『戦国武士の有給休暇』
ジェームス三木の笑い&シビアな戦国物語
忍びルックの小林薫のとほほ演技はお見事!

(せんごくぶしのゆうきゅうきゅうか) 1994年

掲載2009年07月10日

戦国末期。信長の天下統一が目前に迫ったころ。主人公の榊信久(小林薫)は、戦続きの日々につくづく嫌気がさしていた。忍びの術に通じ、人付き合いもそこそこの信久は、愛する妻夕紀(若村麻由美)とゆっくり過ごすことも出来ない。結婚5年にして、子どもも授からないのではたまないと、ある日、信久は「辞表」を提出。しかし、受理されないばかりか、それを知った義父(佐藤慶)から、きつく叱られてしまう。
 戦国武士の世界にも、家庭第一主義の男がいた!? そんな視点から戦国を見てみると、深夜残業、長期出張、厳罰主義に強引な上司など労働という面では、戦国はとっても大変なことがわかる。脚本は軽妙にしてシビアな作品では定評のあるジェームス三木。主演の小林薫は、忍び姿や立ち回り、情けない武士のとほほ顔など、現代劇とは一味違う顔を見せて、楽しませる。特に「わしには男の哀愁がある」などととぼけた義父佐藤慶と信久の会話は見物のひとつ。他にも中村梅雀、阿部寛、斎藤晴彦ら達者な面々が人間臭い戦国武将で登場。彼らのわがままにキレた信久が「いい加減にしろ!」と叫ぶシーンには共感する人も多いはず。終盤は、信長が本能寺の変で急死して、事態が一変。天下をとった明智光秀に味方した信久の一族の運命は…。

掲載2009年05月01日

『座頭市物語(TVシリーズ)』
北大路欣也、太地喜和子、石原裕次郎・・・
豪華ゲストの熱演と勝新太郎がぶつかる!

(ざとういちものがたり) 1974年

掲載2009年05月01日

天保年間。盲目の渡世人の座頭市(勝新太郎)は、揉み療治をしながら博打三昧の旅を続けていた。映画で大ヒットしたシリーズのテレビ化で、森一生、三隅研次、田中徳三、井上昭、安田公義ら大映時代の名監督、勝自身も演出を手がけた。豪華ゲストも話題で、今週は北大路欣也、太地喜和子、勝の親友・石原裕次郎の貴重なテレビ時代劇出演作も。
 北大路欣也がゲストの「祥月命日いのちの鐘」では、冒頭、市が老女の肩をもむシーンから始まる。実は老女は地元の親分の女房だったが、夫亡き後、強欲な隣町の中森一家と決死の一戦の直前だったのだ。老女の味方は弱虫の跡取り息子(青山良彦)ひとり。殴りこまれた瞬間、市は敵方の浪人を斬る。しかし、そのとき明け六つの鐘が。市は母親の祥月命日だけは明け六つから暮れ六つまで仕込みを抜かないと誓っていたのだ。抵抗できず中森一家に簀巻きにされて川に放り込まれた市を助けたのは、渡世人の紋次(北大路)。「お前さんの居あい抜きが見てえ」とどこまでも追いかけてくる紋次に閉口しながら、市は悪党一家と向き合う。近頃CMで犬役などユニークな活躍をする北大路の無鉄砲ぶりが面白い。川でぷかぷか浮きながら平気な顔をする市と紋次の珍妙なやりとりなどユーモアと裏社会に生きる悲しみがあふれる一編。ラストの寂しさも心残る。

掲載2009年04月17日

『新選組(主演:鶴田浩二)』
鶴田浩二の近藤勇と栗塚旭の土方歳三。
名監督内出好吉の人情味ある「新選組」

(しんせんぐみ) 1973年

掲載2009年04月17日

幕末の京都。幕府の治安部隊となった新選組。そのドラマは伝説的な人気を誇る「新選組血風録」はじめ、数多く描かれてきた。今回放送される「新選組」は、土方歳三といえばこの人!栗塚旭に、映画界のスター鶴田浩二の近藤勇という顔合わせ。脚本は東映の名シリーズを手がけてきた結束信二らが手がけ、監督は内出好吉。このシリーズは大きな特長は、血なまぐさい事件が多い史実だけでなく、新選組の中に人間のあたたかさを盛り込んでいる点である。規律重視で粛清も致し方なしという“非情”な土方に対して、「歳さん、それでいいのか」と考える近藤が対照的だ。
形が整いつつある新選組だが、内部抗争は続く。幹部の芹沢一派が無謀な振る舞いをして庶民を困らせ、やがて近藤勇(鶴田浩二)らと対立することになる。うどん屋の小娘に乱暴を働こうとした芹沢の鉄扇を止めたのは、沖田総司(有川博)と近藤らだった。「芹沢さん、乱暴はやめたほうがいい」あくまで紳士的。しかし、後半、伊東甲子太郎一派との油小路の対決あたりは、さすがに人間の業を感じさせる。「池田屋では刀を折るまで戦った藤堂くんが」とかつての仲間を斬ったことを悔やむ近藤。倒幕・佐幕関係なく薬を出す太っ腹薬種問屋女将に中村玉緒らゲストも豪華。左右田一平の斉藤一、島田順司も顔を出す。森光子のナレーションも味わい深い。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。