ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2009年01月30日

『素浪人 花山大吉』
近衛十四郎と品川隆二の名コンビが登場!
とぼけた会話と立ち回りでスカッと痛快。

(すろうにん はなやまだいきち) 1969年

掲載2009年01月30日

氏素性は定かではないが、どこか貫禄のある素浪人・花山大吉(近衛十四郎)と、お調子者だが曲がったことは煙管の雁首でも許せない焼津の半次(品川隆二)が、旅先で悪をやっつける痛快時代劇。この花山大吉。剣の腕は素晴らしいが、酒が大好きでどこの宿場でもまずは一杯。しかも、肴は「おからが一番」。酒が切れると弱くなって落ち着きがなくなるばかりか、品も悪くなり、しゃっくりが止まらなくなる困った人。一方、半次はクモが大の苦手で、威勢がよかったのがクモ一匹でひっくり返る始末。このズッコケぶりに、おとなもこどもも大笑いしながら、ふたりの旅を応援するのでる。
 第六話「若様はおからが好きだった」では、半次が「二日酔いのたぬき」のような顔をした女子に追いかけられ、ひと騒動。なんとか宿に逃げ込むと、妙な渡世人と相部屋に。「下々では左様あいなるか」など言い出すおかしな渡世人(沢本忠雄)は、実は若様。高慢ちきな姫君との見合いが嫌で城を逃げ出したのであった。そんな若様に大吉は「くよくよ考えるより、おからで一杯やったほうがいい知恵が浮かぶ」とまたまた酒を薦めるが…。
「だんな〜」「バカたれが!」と絶妙なふたりの掛け合いと、剣戟スターらしい近衛の豪快な立ち回りで、スカッと事件解決。この楽しさは、何度見ても飽きない。

掲載2009年01月23日

『すっとび仁義』
橋幸夫がやくざ者と若様の二役で歌いまくり
中村玉緒の豪腕&上品腰元にもご注目

(すっとびじんぎ) 1961年

掲載2009年01月23日

浅草観音の境内。やくざ姿のすっとびの新三(橋幸夫)は、柄の悪い地回りと喧嘩三昧。幼なじみのお雪(姿美千子)はハラハラする毎日だった。そんな折、奥州松平家では、若殿新之助(橋)が重病で大騒動。跡継ぎを巡って、御家騒動にも発展しそうになっていた。そこで忠臣たちが思いついたのは、赤子のころに乳母に託した新之助の双子の弟。その弟こそ、新三であった。出生の秘密を聞かされ、兄の危機を救うためならと屋敷で殿様修行を始めたはいいが、堅苦しくてうんざり。その新三のお目付け兼師匠となったのが、用人甚兵衛(益田キートン)の娘・八重(中村玉緒)だった。腰元を集めて丁半やりだす新三を居合いでひっくり返し「失礼仕りました」と平然としている八重。やがて新三は、御家にまつわる陰謀に立ち向かう。
映画デビュー当時、大映のスター市川雷蔵に似ていると言われてうれしかったと語る橋幸夫にとって、初めての主演カラー作品。カラッと爽やかな青年やくざは、名曲「潮来笠」のイメージと重なる。主題歌「すっとび仁義」はじめ、歌に立ち回りに痛快な活躍ぶりだ。
また、相手役の姿美千子は、相手役公募で1万6000人から選ばれ、この作品でデビューした“シンデレラ娘”。下町育ちの新三の行状に呆れて「あー、もう切腹する!!」と大騒ぎする益田キートンも見物。

掲載2009年01月16日

「SABU〜さぶ〜」
大河ドラマ「天地人」の妻夫木聡主演。
山本周五郎の人情味あふれる名作

(さぶ) 2002年

掲載2009年01月16日

2009年の大河ドラマ「天地人」が初回高視聴率を獲得。時代劇でも大物ぶりを発揮しはじめた妻夫木聡。(ちなみに大河ドラマは初出演)その主演映画として若い世代にも人気となったのが、「SABU〜さぶ〜」である。
江戸の下町で、兄弟のように育った栄二(藤原竜也)とさぶ(妻夫木)。二枚目で仕事もできる栄二は、弱虫のさぶをいつもかばい、ふたりは信頼しあっていた。しかし、ある日、栄二に盗みの疑いがかかり、仕事を失ったばかりか、寄場送りになってしまう。事情を知らないさぶは必死に栄二を探すが、そこにいたのは「復讐」を誓った栄二だった。
小さな行き違いが若者の運命を狂わせる。ひたすら栄二を思うさぶの真心が通じる日はくるのか。妻夫木は、心優しい弟分を好演。田畑智子、吹石一恵ら若手女優が重要な役割を果たす。寄場で荒れ狂う栄二に淡々と人生の奥深さを知らせる役人役で出演している沢田研二もしみじみとした味を出して光る。
それにしても、妻夫木聡は、「泣き」のシーンが多い男優だ。先日、ご本人にインタビューした際、「特別こう泣こうと思ったことはない。スタッフ、共演者みなさんが雰囲気を作ってくれるので、脚本の泣きでないシーンで泣けることもある」と語っていた。「SABU」の監督は、パワフルな撮影で知られる三池崇史。泣きのシーンにも独特の強さがある。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。