ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2008年10月24日

『笹沢左保「峠」シリーズ』
「木枯し紋次郎」の危機を救った佳作四篇。
高橋悦史、河津祐介、天知茂、松橋登登場!

(ささざわさほとうげしりーず) 1972年

掲載2008年10月24日

1972年、平均視聴率30パーセント強の人気作「木枯し紋次郎」に大きな危機が訪れた。主役の中村敦夫がアキレス腱を断裂するケガをしたのだ。そこで急遽制作されたのが、同じ笹沢佐保原作の「峠シリーズ」だった。
 第一話「中山峠に地獄を見た」は生きて帰れないという佐渡から逃げて12年前の許婚を探し続ける渡世人・長次郎を高橋悦史が熱演。第二話「狂女が唄う信州路」は誤って娘の右腕を切り落とした渡世人・丈八(河津祐介)の苦悩と戦い、第四話「鬼首峠に棄てた鈴」では松橋登が姉への思いを断ち切る渡世人が描かれた。
 第三話「暮坂峠への疾走」は、草津で嫌われ者の綱五郎を懲らしめた銀次(天知茂)。騙されて掛け合いにいったところ、農民たちに襲われて、相方の小三郎(倉丘伸太郎)が瀕死の状態に。渡世の暮らしに嫌気がさしたところに、処刑される国定忠治の晒し首を盗んでほしいと依頼される。
「あっしらの世界には三つの掟がある。死んだ者を思い出すな。てめえが長く生きるな。かたぎの娘さんに惚れるな」
 厳しく自分を律してきた銀次だが、一途な娘(梶芽衣子)に心が動き、「龍舞」と言われた俊足で走りだすが…。夕暮れの峠を走る男の姿は哀しく美しい。天知茂は筋の通った男を見事に演じている。見ごたえある一本。

掲載2008年10月17日

『新・御宿かわせみ』
1000万部突破の平岩弓枝の名作捕物帳
沢口靖子のるいと村上弘明の東吾の恋物語も

(しん・おんやどかわせみ) 1997年

掲載2008年10月17日

平岩弓枝原作「御宿かわせみ」は、1973年に連載が開始され、一時中断をはさみ、現在も続く大人気シリーズ。2007年からは明治時代を描く新シリーズがスタートし、江戸から時代を超える名作として話題になった。
 大川端で小さな宿屋「かわせみ」を営む女性るい(沢口靖子)には町奉行所与力・神林家の次男坊東吾(村上弘明)という恋人がいるが、身分違いという悩みがある。元同心の娘るいと八丁堀で岡っ引きをしていた番頭嘉助(笹野高史)らのいる「かわせみ」には、さまざまな事件が持ち込まれ、東吾と親友の同心・畝源三郎(平田満)が解決に乗り出す。
 第五話「美男の医者」では、かわせみに得体のしれない美男が宿泊したことからひと騒動。寒井千草と名乗るその男(橋爪淳)は、医師のようだが、どうやら偽名らしい。そんなとき、十手持ち長助(石倉三郎)の親類が倒産した呉服屋から手間賃がもらえず、難儀しているという話を持ってくる。呉服屋の母子は店を売り、つましい暮らしをしているが、一方で計画倒産だったというウワサも。東吾は美男の医者と協力して、ある仕掛けを思いつく。医者の意外な秘密とは…。
 娘らしい沢口とべらんめえの村上は、さらりとした恋仲という印象。早口の女中お吉役の藤田弓子がいい味を出す。橋爪淳は古手川祐子版「御宿かわせみ」で東吾を演じている。

掲載2008年06月20日

『上意討ち 拝領妻始末』
理不尽なお家のやり方に父三船敏郎が怒る!
小林正樹監督・橋本忍脚本の骨太映画作品

(じょういうち はいりょうづましまつ) 1967年

掲載2008年06月20日

会津藩士・笹原伊三郎(三船敏郎)は、口うるさい妻すが(大塚道子)に閉口しながらも、実直に勤めに励んでいた。ある日、伊三郎は、上司から長男・与五郎(加藤剛)の妻に主君の側室おちの方(司葉子)を拝領せよと命じられて仰天する。大それたことと辞退するが、藩は半ば強引にことをすすめ、また、与五郎もおいちを迎えると言い出し、おいちは笹原家に入る。しかし、うわさでは、おいちは殿に殴りかかるという騒ぎを起こしたという。何かとおいちに辛くあたるすがをかばいながら、ひとり娘をも生まれて仲むつまじい夫婦となった与五郎らを見守る伊三郎。ところが、おいちの産んだ藩主の子が世継ぎになったことから、再びおいちは城へ上がるように命じられる。
「生木を裂く」と理不尽な藩のやり方に怒る父子、命がけで決断をするいち。
小林正樹監督が封建的な武士の世界の非情を描き、ヴェネチア映画祭国際批評家連盟賞を受賞した作品。
 伊三郎の親友・浅野帯刀(仲代達矢)は、事情をすべて知りながら、藩との間に入り、苦悩する。また、手伝いに入った娘(市原悦子)が、武士の家に降りかかった悲劇を見つめる語り部のような存在として光っている。
なお、加藤剛は後年、テレビ長編で伊三郎役を演じ、本チャンネルでも放送されている。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。