ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2008年05月23日

『雑兵物語』
寄せ集め雑兵たちのタフな戦い。
勝新太郎と仲間たちのずっこけ人情戦国話

(ぞうひょうものがたり) 1963年

掲載2008年05月23日

戦国時代。田畑を荒らされ、ただでさえ困っている農村に、突如「足軽徴兵」のお達しが来る。人数不足を補うため、流れものの茂平(勝新太郎)はじめ、女丈夫だが臨月のおたつ(太平洋子)と亭主の仙太(堺駿二)、男のふりをしている於菟(藤村志保)まで駆り出され、全体にやる気はなし。もともと給料目当てで、どっちが勝ってもかまわない連中は、早速勝敗を博打にする体たらくだ。いざ、戦場でもわいわいがやがやで役に立たないばかりか、なんとおたつは戦場の真中で出産!?
金がいるとなれば、適当に戦場を走り回って、金目ものを盗品買いのおばば(ミヤコ蝶々)に売りつけたりする。
 しかし、その要領のよさを見込まれ、小田信長(小林勝彦)から、「大砲の弾丸運搬」というでかい仕事を任された。ところがブツが何か知らない連中は、「火気厳禁、取り扱い注意」と弾丸を「南蛮渡来の竜の目玉」などと言い出して、またまた大騒動。
 もともと市川崑監督の企画だったこの作品。メガホンをとったのは、市川監督の愛弟子ともいわれる池広一夫だった。脚本は黒澤映画などでも活躍した小国英雄。勝新太郎は、持ち前のパワーと人懐こさで、コミカルさと明るさを発揮。少年のような藤村志保のチャーミング。音楽も浜口庫之助が担当し、モダンな印象に仕上がっている。

掲載2008年03月07日

『刺客請負人』
森村誠一が描く江戸の闇の世界。
村上弘明が陰と陽、ふたつの魅力を見せる。

(しかくうけおいにん) 2007年

掲載2008年03月07日

元六郷藩徒士頭・松葉刑部(村上弘明)は、ある事情で藩を追われ、今は得意の剣の技を活かして大道芸で生計をたてている。が、裏では、「助っ人屋」の徳松(柄本明)から依頼されて人を斬る刺客であった。やみくもに人を斬るわけではなく、「義」を重んずる刑部の存在に一目置いているのは、同じ「助っ人屋」稼業の闇猫のお吉(若村麻由美)。また、六郷藩は、国家老(西田健)を中心に刑部暗殺がしばしば協議されていた。わざわざ困難な殺しを刑部指名で依頼したり、ワナを仕掛けたりと策略を練る藩幹部。最終的に刑部抹殺を命じられたのは、かつて同じ道場で「竜虎」と評された葛又五郎(永島敏行)だった。刑部と又五郎の男の友情も背景となっている。
 村上弘明が、表ではおっちょこちょいの浪人、裏では凄腕の刺客というふたつの顔を使い分ける。彼にからむ徳松も白首のおろく(小沢真珠)も明るいのに暗い、不思議な闇を感じさせて面白い。一方、ダーク一色なのがドスのきいた声の闇猫様。手下のお役者信次(西村和彦)とともに異様な存在感をかもし出す。
 原作は「人間の証明」などで知られる森村誠一。保身に走る藩の人間たちのエゴと、藩のために生きるしかない男、藩を捨てた男。それぞれの生き方を交錯させる手腕はさすが。
村上弘明のダイナミックな殺陣にも注目したい。遠藤憲一のナレーションもいい味を出す。

掲載2008年02月22日

『水滸伝』
いよいよ大詰め!梁山泊の未来は!?
73年当時で総制作費六億円の大作

(すいこでん) 1973年

掲載2008年02月22日

「今を去ること900年前。中国が太宗と呼ばれていたころ」と、芥川隆行の名調子で始まる「水滸伝」。大宗国の皇帝から疫病平癒のために、霊山に派遣された高求(佐藤慶)は、伏魔殿の封印を強引に破る。すると、大音響とともに地の底から百八つの流星が飛び出す。それはやがて、悪政を思うがままにする高求と戦う梁山泊の百八人の豪傑となるのだった。
 梁山泊の首領は、元近衛軍刑部の宋江(大林丈史)。彼を助けるまとめ役が元近衛軍師範の林中(中村敦夫)だ。梁山泊には虎退治の大男武松(ハナ肇)や若く威勢のいい史進(あおい輝彦)、潜入が得意の三兄弟(品川隆二、常田富士男、渡辺篤史)らが続々と集結。彼らは「義」によってつながり、結束は固い。しかし、高求は、陰謀、脅迫、拷問などあらゆる手を使って、揺さぶりをかける。
 主役クラスのキャストだけで30名、中国の町並みオープンセットを当時(73年)の費用で5000万円で製作、衣装・小道具まですべて特注。総制作費が実に6億円というテレビドラマでは空前のスケールで描かれた英雄ロマン。日本の時代劇とは一味違う中国武芸の殺陣と岩山で繰り広げられるチャイニーズ・ウエスタン調の武器・脱出劇も斬新。最終回のタイトルは「野望砂漠に果つ」いよいよ大詰めで高求との直接対決はなるか。林中の颯爽とした戦いぶりが光る。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。