ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2007年02月22日

『銭形平次捕物控 人肌蜘蛛』蜘蛛の入れ墨が事件の鍵!死体入れ替わりの謎に長谷川一夫平次が挑む

(ぜにがたへいじとりものびかえ ひとはだぐも) 1956年

掲載2007年02月22日

長谷川一夫の人気シリーズに、市川雷蔵がゲスト出演。当時の女性映画ファンを喜ばせた一本。ある日、行商人・新次郎(雷蔵)は、ワケありげな娘お絹を救い、宿に連れて行く。しかし、お絹は失踪。お絹を見たはずの宿の人間もそんな娘は知らないといい、書いたはずの宿帳からもその名前が消えていた。一方、広重の浮世絵「東海道五十三次」に白い龍が描かれた謎めいた絵をもった男が殺され、事件には島抜けしたもうひとりの男がからんでいるらしい。下手人らしい男の背中には「蜘蛛の入れ墨」があったという。新次郎の背中にも蜘蛛の入れ墨があったことから、新次郎はピンチに。その上、平次が探索していた家の葬式では、死体が入れ替わった!? 
 親分得意の変装で葬儀屋に紛れ込んだり、もちろん、得意の「銭投げ」も炸裂。シリーズ後期には銭を投げるたびに「ぴゅっ」と音がついているが、ここではまだない。八五郎は堺駿二。「親分、また飯をくいっぱぐれるよー」と、おっちょこちょいながらまじめな子分ぶりを見せる。美人目明しお品(山本富士子)の「あたしは稼業の上での親分の女房」という切ない告白も登場する。クライマックス、映画全盛期ならではの壮大なセットで繰り広げられる「天下祭り」は圧巻。その先頭に立つ悪人こそ、後に国民的時代劇に主演する、あのお方!当時の名悪役ぶりを楽しめる。

掲載2007年02月08日

『新・座頭市3』郷ひろみも驚いた勝新太郎の撮影現場!今月も原田芳雄らギラギラ演技が光ります。

(しん・ざとういち) 1979年

掲載2007年02月08日

先日、「郷ひろみロングインタビュー」を担当した際、「忘れられない先輩」として筆頭に出てきたのは、「勝新太郎」の名前だった。
 仕事場とは関係ないところで、意気投合した勝・郷。当時、アイドルとして多忙の極みだったが、「ぜひ、『新・座頭市3』に。京都で共演を」と勝に声をかけられ、出かけていった。しかし、例によって「今日は天気がいいなあ。じゃ、撮影中止!」などと勝流の撮影方針に面食らうばかり。「普通、天気がいいから撮影するんじゃ?」などと疑問はさしはさめないのが、「座頭市」の世界なのだった。結局、謎めいた美形浪人の役をぎりぎりの日程で撮影。無事オンエアになったが、勝の豪快さと繊細さには感動したという。
 「新・座頭市3」も、浅丘ルリ子、緒形拳、いしだあゆみら勝にほれこんだ共演者が多数登場。女のために故郷を捨て野良犬のように生きる男(原田芳雄)が、地元ヤクザに市をワナにはめろと誘われる「人情まわり舞台」、市の大切な仕込み杖を盗もうとする女(中村玉緒)との物語「虹の架け橋」など、しみじみした話が多い。
 濡れた手ぬぐいで刺客の剣を制したり、転がりながらの立ち回りなど得意の殺陣は冴える。一方で座頭市の風貌は、映画に初登場したころの男臭さから、このころには白髪がまじり、人生の哀歓が出ている。円熟の座頭市。

掲載2006年12月14日

『蝉しぐれ』内野聖陽主演の人気作品がいよいよ登場。命をかけた恋と友情、男の人生を描く。

(せみしぐれ) 2003年

掲載2006年12月14日

東北の小藩・海坂藩普請組の武士・牧助左衛門夫婦(勝野洋・竹下景子)の養子・文四郎(内野聖陽)は、実直な父を尊敬していた。
しかし、藩内の内紛で父は、切腹させられ、残された文四郎たちは謀反人の家族という汚名を着せられる。牧家の隣に住むふく(水野真紀)と淡い心を通わせた文四郎だが、家禄を減らされ、家を追われて長屋住まいの身に。やがて、文四郎は、ふくが江戸に奉公にあがり、藩主の側女になったと知らされる。そのふくが再び内紛で命が危うくなり…。
 今年、「武士の一分」が映像化され、ますます人気が高まる藤沢周平が、とても大事にした作品といわれる「蝉しぐれ」。その作品にほれ込んだ脚本家・黒土三男が自ら熱のこもった脚本に仕上げたという作品だ。
 お互いを思いながらも別れなければならなかったふたり。内野、水野ご両人は、再会して見詰め合う場面では、本当に静かな環境がほしいとスタッフにも雰囲気作りを願い出るほどの集中を見せた。
 また、もうひとつの見せ場が、剣の師匠・石栗弥左衛門(石橋蓮司、渋い!素晴らしい剣客ぶり)が、文四郎に授ける「秘剣村雨」。小説には詳しく解説されていないが、アイデアのこもった必殺剣が、ふくとその子を守りぬく。若手脚本家・宮藤官九郎が文四郎の親友役で出ているのにも注目。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。