ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2005年11月24日

「十六文からす堂」渋い天知茂が意外なお茶目演技で味を出す。推理あり、粋な展開ありの隠れた名作。

(じゅうろくもんからすどう) 1982年

掲載2005年11月24日

江戸の町角で「一見十六文」で手相観相を観る“からす堂”(天知茂)は、町の人気者。亭主に怒る女房には、「仲良くすれば、子も授かりますぞ」などと夫婦喧嘩の仲裁(?)までして見せるが、それが案外いい加減なものでなく、どうやら霊感などは本物っぽいのが興味深いところ。しかし、お客がちゃんと見料を払っていかないのが悩みの種だ。そんなからす堂は、浪人者に斬られた町人の金を預かった浪人・豊作(金田賢一)と知り合う。豊作自身にもなにやら秘密がありそうなのだが、その金をめぐって、なにやら巨悪がうごめいている様子。しかし、うっかり動くと、からす堂の実家(実は唐津家というりっぱな武家の跡取りなのだ)にも圧力がかかるというすさまじさ。さて、からす堂はどう動く?
 ニヒルなイメージの天知茂が、自ら明るい三枚目を志願して実現したというこの作品。悪人相手には、「死相が出ています」「そういう人相です、この人は」などととぼけた「ですます調」で味を出す。が、いったん黒い着流しで笠をかぶればムードも満点。独自の推理と剣の力で、悪に挑む。山手樹一郎の隠れた名作と呼びたいシリーズ。続編の「十六文からす堂2初夜は死の匂い」とともにお楽しみに。

掲載2005年08月04日

「さむらい探偵事件簿」高橋英樹バラエティ進出のきっかけ?どうにも止まらない異色作。

(さむらいたんていじけんぼ) 1996年

掲載2005年08月04日

高橋英樹といえば、「ぶらり信兵衛道場破り」「桃太郎侍」「遠山の金さん」など、多くのテレビ時代劇の人気作品を生み出したスター。最近では、「慶次郎縁側日記」などで、隠居の渋みも見せたりするが、その芸歴の中でも特に異色作といえるはず。
 元敏腕同心の本間五月(高橋英樹)は、わからずやの上司とぶつかって、とうとう奉行所にいられなくなってしまう。独り者の気軽さでホイホイ探偵稼業をはじめたものの、商売上がったり。仕方なく、浮世絵師の涼花の家の前の小船でぷかぷか浮き草生活だ。たまに迷い込む仕事も、ワケありのモノ探しに人探し。どうも胡散臭い話ばかりで、首を突っ込むたびに事件に巻き込まれる。
 「教えちゃおっかなー」などと腰をくねくね、キラキラビーズの首飾りをした遊女(洞口依子)や、やたら下っぴき(有薗芳記)の頭をポカポカやる同心(石橋蓮司)など、共演者の顔ぶれも異色な上に、小林克也のハイテンションなナレーションも響き渡り、もはや無礼講状態。イメージは松田優作の「探偵物語」だったという。もちろん、主演の英樹もいつもの浪人のとぼけモードをさらに発展させて突っ走る。どうにも止まらない英樹!近年のバラエティ番組での活躍は、この番組から始まっている? 最終回のオチにも注目。

掲載2005年06月15日

「10週連続!必殺スペシャル」

(じゅっしゅうれんぞく ひっさつすぺしゃる) 1981〜1989年

掲載2005年06月15日

この夏は、毎週土曜日は必殺スペシャルの日! ということで、今月も三本が登場。
 その一本目、工藤栄一監督の「必殺スペシャル恐怖の大仕事」は、なんと中村主水(藤田まこと)が奉行所から誘拐されることから一大事に。バイト気分で元旦の奉行所の留守番をしていた主水は、薬を仕掛けられた酒と料理で身動きがとれなくなる。気がつくと、見知らぬ小屋で、不気味な商人市三(中条きよし)とふたりきり。主水の裏の顔を知る市三に、「徳川御三家の家老殺し」というとてつもない仕事を「千両」で依頼される。しかし、この市三も恐ろしい顔を持っていた…。伊吹吾郎、三田村邦彦らおなじみのメンバーに、上方の裏社会で生きる男(フランキー堺)、米相場に命をかける女主人(松尾嘉代)、さらに後にシリーズの主人公となる仕事人・坂東京山(京マチ子・色っぽい!)も登場。特に中条きよしの最期のシーンには注目。
 また、25日放送の「必殺スペシャル仕事人アヘン戦争へ行く」は、本格的香港ロケを敢行。100歳を超える平賀源内が登場したり、アグネス・チャン、クロード・チアリがゲストに出るなど話題もいっぱいだ。ちなみに主演の藤田まことの回想によれば、「そりゃ、仕事もするけど、自由時間もばっちり。いい時代だった」とのこと。おおらかにして、自由な発想がいかされた「必殺スペシャル」の世界が堪能できる。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。