ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2004年10月22日

「佐武と市捕物控」石ノ森章太郎の名作時代劇をアニメと実写のW放送!若い三浦友和と梅宮パパの熱演。

(さぶといちとりものひかえ) アニメ:1968〜69年 TV長編:1981年

掲載2004年10月22日

石ノ森章太郎のアニメ作品の隠れた名作とも呼びたいのがあるが、この「佐武と市捕物控」。元気のいい下っ引き・佐武と居合貫の名手・松の市のコンビが、江戸の難事件に挑む。
 若者の佐武やスキンヘッドの市のキャラクターは、どこか人気作品「サイボーグ009」を彷彿とさせるものがあるが、その放送形態はかなり異色だ。まず、監修が片岡千恵蔵の「忠臣蔵」など大作を手掛けた東映時代劇の大御所・松田定次。墨絵タッチの画面や実写との合成、静止など思い切った手法を駆使し、本格的な時代劇としてのアニメを目指した。放送時間も午後9時。68年当時は、こんなおとな向けのアニメも作られていたのだと感心する。主題歌も秀逸。ナレーターは「仮面ライダー」ゆかりの小林昭二だ。ちなみに同時期他局では白土三平の「サスケ」もオンエア中。こちらは午後7時の放送だった。
 一方、実写では三浦友和の佐武と梅宮辰夫の市が大活躍。佐武が思いを寄せる娘みどりが初々しい名取裕子で、当然ながら友和&裕子は若い!また、熱演するのが梅宮辰夫。シリーズ第二弾「佐武と市捕物控2斬る」では、市がなぞの女(野川由美子)に執拗に命を狙われる。敵が野川由美子じゃ市は命がいくらあっても足りないだろう。そして、意外な結末が・・・。実写とアニメで楽しめるという貴重な作品。ぜひ見比べを。

掲載2004年10月15日

「地獄変」白塗り貴族の錦之助と鬼気せまる天才絵師仲代が激突!芥川龍之介の名作は迫力満点。

(じごくへん) 1969年

掲載2004年10月15日

 下々の者は飢えているというのに、毎夜鯛やヒラメの舞踊り状態の平安貴族の館。その中でももっとも権勢をふるっていたのは、堀川の大殿(中村錦之助)だった。ある日、大殿は当代きっての天才絵師・良秀(仲代達矢)に、無量寺院の壁面に「極楽を描いてみよ」と依頼する。しかし、「私はこの目で見たものしか描けません」という超写実派の良秀は、極楽絵を拒否。お互いのプライドがぶつかりあい一歩も譲らないふたり・・・。
 だいたいいつも思い詰めたような顔をした仲代先生に「極楽」が描けると思う方が無理なのである。が、懲りない大殿は、たまたま迷い込んだ良秀の愛娘・良香(内藤洋子)を自分のものにしてしまう。怒り心頭の良秀を「フフン」鼻であしらう白塗り貴族の錦之助の厭味な態度!ある意味、新しい芸風を見せた錦之助だ。
 「ならば地獄絵を描け」と言われた良秀は、「この目で見なくては」といつもの癖で、弟子を鎖で縛って大量のヘビに責めさせたりするが、まだ描けない。ついに「大殿を乗せた牛車に火をつけて灼熱地獄を見せてくれ」と言いだす。なんとその気になった大殿が用意した牛車に乗っていたのは、なんと良香だった・・・。ああ、恐ろしや恐ろしや。もはや悪霊なのか本人なのか、仲代先生からは悪気がプンプン!「人生は地獄より地獄的」とは芥川先生のお言葉。おっしゃる通り!!

掲載2004年10月01日

「さむらい探偵事件簿」高橋英樹が木っ端みじん!?どうにも止まらない異色時代劇。石橋蓮司もトバしてます!

(さむらいたんていじけんぼ) 1996年

掲載2004年10月01日

本間五月(高橋英樹)は、元は一目置かれる敏腕同心だが、ダメな上司ににらまれ、ついにクビに。世の中の矛盾に嫌気がさした五月は、なんでも屋の探偵を開業。しかし、元手はないわ、人脈は乏しいわで、仕方なくやり手の浮世絵師・涼花(萬田久子)の家の前に浮かぶ小舟をねぐらに仕事をしている。
 彼に持ち込まれるのはわけのわからない依頼ばかり。とりあえず、知り合いの遊女(洞口依子)やドジな同心(石橋蓮司)と岡っ引き(有薗芳記)らを巻き込みながら捜査を開始するが、一見チャチな事件が、実は意外な悪と結びついていたりするのだった・・・。
 言葉は現代語(小林克也も出演)、遊女たちのアクセサリーもガラス玉にプラスチック!?とにかく頭が固くては理解できない場面の連続だ。中でも自分のことを棚に上げて、いつも手下の岡っ引きを「ドジ!!」と十手でたたいていた石橋蓮司の同心の存在感はさすが。ちなみにいつも本気でビシビシ叩いていたため、有薗のカツラはすぐにズタズタになってしまったという。
 14日の最終回は五月が木っ端みじん!?の大ピンチ。この番組であっと驚く幕切れを迎えてから、高橋英樹は、しばらくテレビ時代劇シリーズの主演をしていない。ある意味、「時代劇スター英樹」としてのターニングポイントになった番組ともいえる。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。