ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2003年07月25日

七衛門の首 極限状態なのに、なぜか笑える!ヤングシナリオ大賞特別賞脚本をナンチャン主演で。

(しちえもんのくび) 1993年

掲載2003年07月25日

 戦国時代。三輪軍の総大将・三輪正則(火野正平)は、ついに禿(かむろ)軍の城を落とした。勝利の喜びも束の間、肝心の禿の主・禿七衛門の首がないにの気づく。
 その混乱の中、引き上げる三輪軍の兵に混じって、禿の残兵・孫(南原清隆)が重い足を引きずっている。負け戦も情けないが、もともと百姓で戦なんかに行きたくなかった孫だが、とうとう三輪軍に捕まってしまう。
しかし、孫は、落ちこぼれ侍(石橋蓮司)と組んで、「七衛門の首」を使って、したたかに生き延びる術を考える・・・。
 戦国ものらしい荒涼とした場面もあるが、どこかユーモラスで、風刺的でもある。脚本は、フジテレビのヤングシナリオ大賞で特別賞を受賞した作品。その作家、早野清治はかつて黒澤明監督の「乱」で、助監督を務めた人でもあるという。さすがに戦国にうごめく人間の描写がうまい。
 特筆すべきは、主演の南原清隆の熱演。時代劇出演は本人の希望であったという。その後、バラエティでは落ち武者風ゲームなどもやってるし、意外に時代劇好きだったのか・・・。
 カッコよくやっつけるだけじゃなく、ユーモアセンスのあるヒーローは時代劇に不可欠。再びの出演を望みたい。
 一時間に悲劇も喜劇、笑いも皮肉も込められた濃い内容。短編の面白さはここにある。

掲載2003年07月04日

「参上!天空剣士」目黒祐樹自らデザインの衣装にもシビれる。ペリーも感動の天空剣士様のすごい技!

(さんじょう!てんくうけんし) 1990年

掲載2003年07月04日

 長屋住まいの桔梗月太郎は、一見、気のいい傘張り浪人。しかし、事件と聞くと、白頭巾の「天空剣士」に大変身。悪と戦う正義の人なのだ。
 原作は北園孝吉の「江戸の陰法師」。
 浪人が実は正義の味方、というのはよくあるが、特筆すべきは、天空剣士のスタイル。白い袴に銀の陣羽織という衣装だけでも目立つのに、白い頭巾の額には、くっきり「月」のマークがペッタリ。口元も白布で覆われて、かすかに「涼しい瞳」だけがのぞいている。この人はいったい?と思えば、目黒祐樹その人だった!
 なんと、このスタイルは、目黒祐樹自身のデザイン。撮影現場である京都への新幹線の中でひらめいたという。さすがキラッと光っている。さらに長屋では三枚目、剣士ではバリバリの二枚目、というきっちりした役作りも本人が意識して作っていたとか。主役としての意欲があふれているってことですね。
 天空剣士が手をかざせば、ボワーッと月のパワーが光輝く。どんな悪にも屈しない正義の味方は、まさに娯楽時代劇の王道。しかも、どんな難事件も30分で解決してしまう腕のよさ。ちなみに制作コンセプトは「バットマンの時代劇版」。コンセプトもすごいが、スタイルもすごい。ペリーも感動の天空剣士。ぜひ、月曜深夜のお楽しみに!

掲載2003年06月27日

「清水次郎長物語」松平健の貴重な親分姿!役所広司、西岡徳馬の男気もカッコいい。石松にも注目。

(しみずのじろちょうものがたり) 1995年

掲載2003年06月27日

 松平健というと、どうしても「上様」の印象が強いが、今回はビシッと精悍な次郎長親分に。そういえば、「暴れん坊将軍」の中でも、渡り鳥姿に変装する回があった。結構、健さん、お気に入りのスタイルかも?
 ストーリーは、清水港に一家をかまえた次郎長が、お尋ね者になってしまう。仕方なく草鞋をはいた一家は、腹黒い保下田久六(渡辺哲)に裏切られて、あやうく捕縛されそうに。その難儀を救ったのが、小川の勝五郎(役所広司)だ。所持金も減り、困った一家を助ける深見の長兵衛(西岡徳馬)夫婦。しかし、長兵衛は殺され、次郎長は仇討ちに立ち上がる。
 堤大二郎、田中実、沖田浩之、林与一、寺尾聰、火野正平などキャストは豪華。子分の中では少々おっちょこちょいだが、愛嬌のある森の石松に、元アイドル諸星和己が扮しているのも注目したい。石松は、親分の代参を言いつかって、大喜びの道中で非業の最期をとげる。石松のため、強敵・黒駒の勝蔵(石橋蓮司)との対決がせまる。
 博徒ながら、個性豊かな子分に慕われる次郎長親分。いつも姿勢が正しい親分が、ふと軽口をたたいたり、笑顔を見せる瞬間がいい。(素顔の健さんに近い印象です)
 次郎長モノを見たことのない女性にもお勧めの長編。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。