ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2001年05月12日

素浪人天下太平

(すろうにんてんかたいへい) 1973年

掲載2001年05月12日

 ペリーは、会う人には必ず
“あなたの心の時代劇はなに?”
と、問い掛けてしまうクセがある。
 知人、友人、編集者、カメラマン、インタビューした俳優…。その“心の時代劇”アンケートのベスト3に入るのが、この近衛十四郎作品なのだ。
 1916年生れの近衛十四郎は、もともと日活京都などから、松竹、東映という足跡をたどった剣劇スター。代表作には『柳生十兵衛』シリーズなどがある。後に大映に移って『座頭市血煙街道』(67年)なんかにも出演。豪快できれいな殺陣が売り物であった。
 しかし、ペリーをはじめテレビ世代にとっては、『素浪人』シリーズこそ、近衛十四郎なのである。
『素浪人月影兵庫』、『素浪人花山大吉』。とぼけた渡世人、焼津の半次(品川隆二)と旅をしながら悪人退治。半次との絶妙なやりとりは、近衛十四郎の意外な?コメディー的センスを光らせた。近衛に負けず劣らず品川隆二もいい味を出していて、主役の近衛十四郎じゃなくて
“焼津の半次が出ていた時代劇が見たい”
という名指しのリクエストを寄せてくるファンもいるとかで、その人気がうかがい知れようというもの。
 ところで本作は、『素浪人』シリーズの第3弾。近衛十四郎扮する太平は、オープニングと本編中に登場するアニメの小鳥と言葉を交わしたりして、なかなかメルヘンチックな素浪人として描かれている。相棒の渡世人は品川隆二から“仮面ライダー2号”の佐々木剛にバトンタッチ。太平が苦手とする女借金取りに加茂さくらというのもナイス。細かいことは気にしない、ダーッと解決、すっきり旅立ちという時代劇ロードムービーの王道。子供でも安心して見られる明るさが、今も人気のある秘密だろう。
 ちなみに近衛十四郎が、松方弘樹、目黒佑樹兄弟の実父であることは有名。目黒はこのシリーズにゲスト出演も果たしている。

掲載2001年03月26日

新・座頭市3

(しん・ざとういち さん) 1979年

掲載2001年03月26日

 勝新太郎一世一代のあたり役、盲目の渡世人、座頭市。
 賞金首となった市に、汚い手口で襲いかかる刺客と弱い者を必死でかばう市。人生の裏街道で命をさらして生きる市の非情さと優しさが胸を打つ。わが子と詐欺を働く哀しい女(藤村志保)、義理のために市をつけ狙う若い渡世人(にしきのあきら)、ほかに中村玉緒、原田芳雄、郷ひろみ、緒形拳ら豪華なゲストが次々登場するのも本作ならでは。
 見るたびに、これほど密度の濃い番組が毎週放送されていたことに感心する。シリーズも3作目となり市は白髪頭になったが、ゲスト出演者も前述のとおり豪華なまま。けど、“スターにしきの”も出演していたとはちょっと意外な感じも。
 ちょっと渋みをました市は、自分を渡世人(にしきの)の刃からかばって傷を負った犬を、豪気な獣医(小野進也)に預ける。敵を討ち果たした市は、自分をかばった犬の幸せは獣医の飼い犬といっしょになって、子供を産むことだと悟りひとり去っていく。時折、流れる勝新が自ら唄う挿入歌「カラスの子守唄」の切ない歌声も泣かせる。

掲載2001年02月21日

銭形平次

(ぜにがたへいじ) 

掲載2001年02月21日

 抜群の推理力と行動力。百発百中の投げ銭で、天下の名親分と今もファンの多い大川橋蔵の平次。今週は、凶悪盗賊とお上を恨む越中富山の薬売りに扮した坂上二郎が関わる殺人事件がおきる「人情渡り鳥」。父親を殺したのは、北村総一朗扮する許婚では?と苦悩する女を、いしだあゆが演じる「鶴が殺した」など、豪華ゲストが続く。橋蔵を師と慕う京本政樹がレギュラー出演しているのも注目。
 坂上二郎出演の「人情渡り鳥」は、スパルタ同心役に森次晃嗣(「ウルトラセブン」のダンね)、殺されるチンピラ役に黒部進(「ウルトラセブン」のハヤタね)、つまり歴代ウルトラマン役者が共演。そこにウルトラマンマニアの京本政樹までもが出演していたという珍しい回。
 また、いしだあゆみの「鶴が殺した」では、清楚というより、年増女の哀しさが出ている。大ブレイクした「踊る大捜査線」の湾岸署署長役で、一気に若い世代にも認知された北村総一朗は時代劇にも欠かせない存在で、当時は女をだます役など、結構いろいろやっていた。
 本作のように長く放送していると、こんな楽しみ方もあるから時代劇っておもしろいのだ。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。