ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2001年02月08日

不知火検校

(しらぬいけんぎょう) 1960年

掲載2001年02月08日

 盲目の鍼医杉の市は、強請、乱暴、人殺しと悪の限りを尽くして金を貯め、ついには師匠をも殺害して検校の地位まで上りつめる。
 勝新太郎が二枚目から脱皮し、後に「座頭市」へと発展させたダーティー・ヒーローの原点がこの作品なのだ。名伯楽の森一生がモノクロ画面いっぱいに悪のムードを漂わせる。可憐な中村玉緒、苦みばしった阿部徹ら共演陣にも注目。
 本作は、勝新にとって73本目の出演作。それまでいわゆる“白塗りの二枚目”(見ればそれなりにきれいなのだが、『座頭市』を見慣れた者には、やっぱ違和感があるのよね〜。ペリー的にもそうなのだ)で、今ひとつ伸び悩んでいたのが、このギラギラした悪漢役で思い切った演技と役柄に開眼。宇野信夫の原作の面白さもあいまって、欲に溺れ、悲劇を迎える男から目が離せない。勝新も、この作品はお気に入りで、晩年、自ら脚本、演出をこなし舞台で上演しているほどなのだ。

掲載2001年01月30日

新座頭市・破れ唐人剣

(しんざとういち・やぶれとうじんけん) 1971年

掲載2001年01月30日

 勝新太郎一代のあたり役「座頭市」のなかの異色作。
 瀕死の唐人から子供を預かった市は、子供の知り合いをたずねるうちに唐人剣士、王剛と知り合う。金目当てに王を狙う一味と戦った市だが、誤解から王と対決することに…。
 王を演じるのは「片腕ドラゴン」などで知られる香港のアクションスター、ジミ―・ウォング。迫力たっぷりの殺陣に息を飲む。
 因みに、本作は香港でも公開されたのだが、なんと香港公開バージョンは結末が違っている。ジミ―・ウォングがいかに香港で人気があるか、窺い知れるエピソードだ。香港に行けば見れるかも。
 さて、「座頭市シリーズ」は、映画が26本、テレビが100本以上制作されて、今も多くのファンを魅了している。逆手の居合斬り、独特の下駄さばきなどは、勝新太郎のアイディアによるところが大きい。まさに勝新そのもののキャラが「座頭市」だったのだ。往年のファンなら、なんといっても第一作「座頭市物語」(1962年)の、天知茂との決闘シーンがいいという人が多い。しかし、本作で異種格闘技戦みたいなことをやっちゃうところに、エンターテイメントとしての「座頭市」の偉さがある!とペリーは思うのですが、いかがでしょ? 

掲載2001年01月29日

銭形平次

(ぜにがたへいじ) 

掲載2001年01月29日

 ご存じ大川橋蔵主演「銭形平次」。全888話中、今週は脂の乗り切った770話代の作品が登場。
 二年続けて同じ日に悪徳医者の屋敷に押し入った盗人は、平次の子分、八五郎の友人だった。医者に陥れられて死んだ女房に瓜ふたつの女に出会った男の運命はいかに。
 ゲストの桜木健一(元祖スポ根ドラマ「柔道一直線」とか、放送時間の30分内で必ず事件を解決する敏腕刑事ドラマ「刑事くん」が懐かしい)が一途な男を熱演すれば、友を信じる八五郎の純粋さにもほろっとさせられる。はてさて平次親分の十手は、この事件をどう裁く?
 大川橋蔵の平次に、香山美子のお静、林家珍平の八五郎、遠藤太津朗の三輪の万七と不動のレギュラー陣はもちろん、居酒屋の女将に市毛良枝(当時、お嫁さんにしたい女優ナンバー1!)、小女に桂木文(元祖グラビアアイドル的存在)、若き同心に森田健作(いまや国会議員のセンセイ)など、若手レギュラーがチームワークのいいところを見せる。大川橋蔵主演「銭形平次」後期の作品群。ペリー的には、三浦布美子となべおさみの悲しい出会いの物語がオススメ。けっこう泣けます。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。