ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2010年12月10日

『翔べ!必殺うらごろし』
怪奇現象続発!!必殺シリーズの異色作。
21世紀の今、改めて面白さが倍増するかも?

(とべ!ひっさつうらごろし) 1978年

掲載2010年12月10日

必殺シリーズ第14弾。特徴は、主役の中村敦夫が太陽を信仰する行者の格好で「先生」と呼ばれ、仲間の怪力の女(和田アキ子)が「若」、記憶喪失だがすれ違いざまに相手を刺し殺す怖いおばさん(市原悦子)がそのまま「おばさん」と、匿名性を持っていること。マネージャー的存在の正十(火野正平)だけが名前を持ち、現世にいて、異世界にいる他のメンバーをつないでいるような構造だ。
彼らは、旅をしながら各地で怪奇現象に遭遇。その裏にある悲劇を知り、悪党を退治する。その技でもっとも驚くのは、先生だ。いつも担いでいる大きな旗を槍投げのごとく放って、相手に突き刺す。この放送が始まった昭和54年当時、ペリーは個人的にその三年前にヒットした映画「オーメン」の塔のポールが落下して人に突き刺さるシーン思い出した。とにかく怖い。
木像の目から血の涙が出たり、人形がしゃべったり、オカルトムード満点。第9話「家具が暴れる恐怖の一夜」では、うらごろしメンバーと、凶悪犯を護送する一団、盲目の巡礼らが暴風雨の夜、一軒の農家に閉じ込められた。その家の女房は数年前から行方不明。そして連続殺人が。サスペンスタッチの推理劇と意外な結末が見事。
現場ではスタッフと意気投合したそうで、いい思い出の番組になっていると和田アキ子も語っている。

掲載2010年11月12日

『徳川慶喜』
悪役にも描かれる慶喜の苦悩と決断
司馬遼太郎「最後の将軍」に本木雅弘が挑む

(とくがわよしのぶ) 1998年

掲載2010年11月12日

2011年大河ドラマ「龍馬伝」では、倒幕派の薩長などを憎み、まるで悪役のように描かれていた、第十五代将軍徳川慶喜。水戸藩主徳川斉昭の七男として生まれた彼が、一橋家の当主となり、どのような経緯で将軍となって、徳川幕府の幕引きをしたのかを描いたのが、98年の大河ドラマ「徳川慶喜」だった。原作は、坂本龍馬の生き方を描き、広く親しまれる小説「竜馬がゆく」の原作者・司馬遼太郎の短編「最後の将軍」
徳川慶喜(本木雅弘)は、正室美香(石田ひかり)と静かな暮らしをしていた。しかし、黒船来航以来、世情は不安定。町火消し・新門辰五郎(堺正章)とも親しい彼は、町人たちの不安も察していた。第十五代将軍に就任した彼は、日本を内戦から守るため、大政奉還を決意するが…。強気のハリスに「わざと日本で不自由させれば帰るんじゃ?」などとのんきなことを言う幕府重役、流産した美香を気遣う慶喜など、幕末の人間像が描かれる。複雑な難しい役は、クールで知的な役がうまい本木雅弘だからこそできたもの。彼の側近で女と間違いをおこす新三郎に藤木直人、世話係りに小野武彦、威勢のいい火消しの若い衆に山下真司、強気篤姫に深津絵里と、キャラクターも多彩。中でも、侍女松島の岸田今日子は、ときに厳しく、ときに優しく、出てくるだけで「何かある」予感をさせて楽しい。

掲載2010年04月02日

『大佛開眼』
実物大の迫力大仏のセットに驚愕!
大仏建立に陰謀と愛と憎悪が渦巻く

(だいぶつかいげん) 1952年

掲載2010年04月02日

奈良遷都1300年の記念の年。再び注目される「奈良の大仏さま」建立の過程を描いた、昭和二十七年芸術祭参加の大作映画。監督は、衣笠貞之助。
聖武天皇によって計画された大仏建立だったが、その影では、藤原ノ仲麻呂と橘ノ奈良麻呂との熾烈な政治抗争があった。そうとは知らず、純粋に大仏作りに夢を持ち、仕事に熱中する彫刻の天才青年・盾戸ノ國人(たてとのくにひと・長谷川一夫)。彼は、情熱的な美女麻夜寶(まやめ・京マチ子)に愛されながら、工房にこもっていた。しかし、彼の美貌に目をつけたのが、橘派の前大納言の未亡人(水戸光子)。彼女は権力にものを言わせて、「ほほほ、きっととりたてようぞ」などと國人を誘惑する。その二人の姿に嫉妬した麻夜寶は、いよいよ大仏のお顔の造営というときに、大仏破壊をたくらむ連中にそそのかされそうになるが…。
とにかく驚くのは、大仏のセット。手のひらで京マチ子が官能的な踊りができるくらいの規模で、なんと「五丈三尺」の実物大を実現してしまったのである。まさに遷都1300年のキャラクターせんとくんもびっくりの大迫力。「銅はむかでとなって、流れ出る」など、印象的なセリフも数多く、命がけで大仏を守ろうとする長谷川一夫の姿には神々しささえ感じられる。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。