ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2009年05月08日

『十時半睡事件帖』
島田正吾89歳にして名作に主演!
「ほっとけ」の名セリフに内野聖陽も感嘆?

(とときはんすいじけんちょう) 1994年

掲載2009年05月08日

一度は隠居しながら、藩の皆に慕われ「総目付」として再出仕した十時半睡(島田正吾)。彼のもとにはさまざまな藩のもめごとが持ち込まれ、人生の達人ならではの解決を見せる。
 第三話「刀」では、藩で実力者と言われる勘定奉行の中川(高橋長英)の嫡男がささいなことから刃傷事件に巻き込まれ、相手を討ち果たした。筋を通すため中川は、息子に切腹を命じ、自ら職を辞す決意をする。しかし、藩内では慰留を求める声が強く、中川当人は「ならば、藩の若者に竹光を持たせてほしい」と提案。藩では「それは名案」とする者と「武士の魂を持たなくては」とする者の意見が対立。町人たちまでが騒ぐことに。例によって相談を持ち込まれた半睡は「武士とは残酷なもの」と語りながら、意外な意見を出す。
 見所のひとつは半睡と人々のやりとり。大事件と思われる一件にも「ほっとけ」と名セリフを言い放ち、目付筆頭(河原崎長一郎)や若侍(内野聖陽)を驚かせる。しかし、それは、やがて時が解決したり、当事者が自然に道を見つけていくことを知った上での「ほっとけ」なのだ。次第に半睡の深慮が理解でき、若い内野青年は感嘆するのである。
また、芋を囲んで「わしが」「わしが」と身分を超えて笑いあうなど、下男役の坊屋三郎とのとほけた会話は、そこだけ見てもうれしくなるほどの名場面。名優ならではの深い味わいと余韻を楽しめる名作。

掲載2009年03月13日

『同心暁蘭之介』
杉良太郎が番組製作に力を注いだシリーズ
推理・アクション・主題歌すべて見せます!

(どうしんあかつきらんのすけ) 1981年

掲載2009年03月13日

北町奉行所定廻り同心・暁蘭之介(杉良太郎)は、世俗の流行や出世には興味がなかったが、鋭い推理力と剣の腕、悪事に対しては強い怒りをもって戦う男だった。
 第四話「地獄のお告げ」では、人間の寿命を無料で予言し、的中させるという谷中の“お告げ寺”の上人(川合伸旺)が登場。蘭之介の手下で少々ミーハーな目明しの辰吉(伊東四朗)は、さっそく長い行列に並び、「あっしは88まで生きられる」と大喜びする。一方で、お告げで早死にを予言された商人たちは次々に亡くなる。しかし、殺人などの痕跡は残っていない。蘭之介は、「数日の命」と言われた若旦那(江木俊夫)のところに泊まりこむが、そこで思わぬ事態に巻き込まれる。
「人間は一寸先のことはわからねえ」
 仕事に対しては熱いが、蘭之介の中にあるクールさは、どこか杉良太郎本人のイメージに重なる印象でもある。恐ろしいワナに陥りながら死闘を繰り広げるのは、杉作品らしい。
 原作は「木枯し紋次郎」などでも知られる笹沢佐保。共演に杉の代表作「右門捕物帖」でもいい味を出した高品格、与力・榊原主計に岡田英次、小田土佐守に島田正吾、さらにいきつけの蕎麦屋主人に伴淳三郎と芸達者が揃う。自ら起こしたプロダクションで製作にも関わった杉良太郎は、推理・アクション・主題歌と大活躍。座長の貫禄を見せる。

掲載2009年03月06日

『太平記』
真田広之の颯爽とした若武者ぶりが光る
武田鉄矢の楠木正成の泥臭いリーダーも

(たいへいき) 1991年

掲載2009年03月06日

それまで大河ドラマがスポットを当てることがなかった鎌倉後期に頭角をあらわし、室町幕府を開く足利尊氏(真田広之)の波瀾万丈の人生を描く。
 関東の足利貞氏(緒形拳)の三男として生まれた後の尊氏(真田)は、元服して北条氏に仕えるが、すでに鎌倉幕府は腐敗しきっていた。やがて北条と対立することになるが、尊氏はいわれのない罪で牢獄に送られてしまう。なんとか牢獄から出ることができた尊氏は、北条方の赤橋守時(勝野洋)の家に父とともに挨拶に行く。「ようこそ」と尊氏らを歓迎し、投獄の非礼をわびる守時の態度に好感を持った尊氏は、彼の妹(沢口靖子)との婚儀を意識する。しかし、彼にはかつて契った藤夜叉(宮沢りえ)という女がおり、しかも、彼女が身ごもったという知らせを受けて動揺する。
 一方、楠木正成(武田鉄矢)は、農民たちとともに大地を耕し、こどもらと遊ぶ。みんなに慕われる大将だった。
 見事な流鏑馬を見せる尊氏と「この栗の木は毎年実をつける。えらいえらい!」と泥臭く金八先生のような正成。対照的なふたりの運命がやがてからみあう。宮沢りえ、沢口靖子ら若手女優、「この口のうまさよ、ほっほっほ」と嫌味な北条武士を演ずる片岡鶴太郎など、人気者が揃うのもみどころ。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。