ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2009年01月02日

『天と地と』
カナダロケでエキストラはのべ65000人!
壮大なスケールで描く上杉謙信の川中島

(てんとちと) 1990年

掲載2009年01月02日

永禄4年夏。霧が晴れた早朝。武田信玄(津川雅彦)の前に現れた一万五千の騎馬兵。彼らわ率いるのは、右手に軍配、左手に数珠を持った越後の虎・上杉謙信(榎木孝明)だった。「目指すはただひとつ、信玄が首!!」
「車懸かりの陣」で迫る上杉軍を迎え撃つ二万の武田軍は「鶴翼の陣」で対抗。戦国最大の戦いと言われる川中島の戦が始まった。
 とにかく圧倒されるのは、カナダで50日間の大ロケーションによった撮影された合戦シーンのスケール。延べ馬二万頭、エキストラ65000人という日本では考えられない規模の人間たちが、武将の指示に従って、整然と陣を作る景色は圧巻だ。原作は海音寺潮五郎、脚本は、「男女七人」など数多くの名作テレビドラマや映画では「里見八犬伝」「戦国自衛隊」などを手がけた 鎌田敏夫と「オイディプスの刃」の吉原勲。
 キャストでは、謙信を見守る軍師・宇佐美定行に渡瀬恒彦、謙信を慕う乃美に浅野温子、山本勘介に夏八木勲、高坂弾正に沖田浩之、鉄砲商人の橘屋又三郎に大滝秀治ら手だれが揃う。中でも注目したいのは、信玄の側室・八重(財前直見)。女騎馬武者隊を率いて、謙信に堂々と戦いを挑む。
 血なまぐさい戦いだけでなく、日本に四季折々の美しい風景をまじえた大作。音楽を近年いろいろお騒がせの小室哲哉が担当した。

掲載2008年12月26日

大晦日「忠臣蔵」祭り
師走はやっぱり「忠臣蔵」!
先代幸四郎から2007年舞台版まで勢ぞろい。

(ちゅうしんぐらまつり) 

掲載2008年12月26日

時代劇の締めくくりはやっぱり「忠臣蔵」。
89年に地上波で放送されて反響を呼んだ「大忠臣蔵」は、元禄14年、赤穂藩主・浅野内匠頭(近藤正臣)が、勅使饗応指南役の高家筆頭・吉良上野介(芦田伸介)に殿中松の廊下で刃傷に及んだことから、物語が始まる。内匠頭は即日切腹。騒然となる赤穂城では、城代家老・大石内蔵助(松本幸四郎)による評定が行われた。大石りくに岩下志麻、主税に市川染五郎はじめ、豪華キャストが集結。ミステリー作品でも定評のある森村誠一原作らしく、全体がサスペンスタッチで目が離せない。芦田伸介の淡々とした吉良も出色。
 「大石内蔵助 冬の決戦」は、大河ドラマ「武田信玄」「信長」など骨太な脚本で知られる田向正健による作品で、赤穂事件に関わった人間の心理にするどく迫る。内蔵助の平幹二朗は、吉良上野介役の経験も。この二役を演じたキャリアは、平幹二朗ならではといえるかも。
 このほか、先代松本幸四郎の内蔵助に加山雄三の内匠頭「忠臣蔵 花の巻・雪の巻」など、「忠臣蔵」らしい豪華な作品が続く。また、舞台ファンには、石井ふく子演出による明治座の舞台公演「忠臣蔵いのち燃ゆるとき」を。りく(三田佳子)と主税の別れには思わず涙。

「大忠臣蔵」⇒番組詳細ページへ

「大石内蔵助 冬の決戦」⇒番組詳細ページへ

「忠臣蔵 花の巻・雪の巻」⇒番組詳細ページへ

「舞台 忠臣蔵−いのち燃ゆるとき−」⇒番組詳細ページへ

掲載2008年11月07日

映画『丹下左膳』
生誕110年大河内傳次郎が当たり役で大暴れ
マキノ雅弘のハイテンポの演出も冴える。

(たんげさぜん) 1953年

掲載2008年11月07日

刀剣に目がない殿様の頼みで、丹下左膳(大河内伝次郎)は、小野塚道場にある乾雲・坤竜、ふたつの名刀を奪うことにする。不敵にも道場に殴りこみ、看板を抱えて挑発する左膳は、小野塚鉄斎を倒して、乾雲を手にするが、鉄斎の娘・弥生(沢村晶子)が気になり、坤竜を置いて立ち去った。しかし、ふたつの刀は夜な夜な互いを呼び合い、左膳は、血を求める刀に操られるように辻斬りを繰り返すことに。一方、小野塚道場では、弥生が栄三郎(三田隆)に坤竜を託し、左膳を討ち、乾雲を取り返すように頼む。しかし、栄三郎には、事情があり…。
 大河内傳次郎の左膳は、ものまねにもされるとおり、独特の声で存在感は抜群。床に置いたさやに一瞬で刀をおさめるなど、左膳ならではの技も光る。ただし、考えてみると、いきなり道場に殴りこんで怒る相手に「おいでおいで」をしたり、辻斬りを重ねたり、凶悪犯に近い。その左膳捕縛のために動き出すのが、名奉行大岡越前。この正義の男を大河内傳次郎が二役でやっているのがミソ。また、だめ男左膳にほれているおふじ(水戸光子)のやさぐれと純情が同居したような女っぷりも見物のひとつ。早撮りで知られたマキノ雅弘が、見せ場満載で作った作品。翌週放送の「続丹下左膳」では、主君に裏切られた左膳の戦いが展開する。合わせてチェックを。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。