ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2008年09月12日

『痛快!三匹のご隠居』
合計年齢207歳!史上最高齢の三匹登場
剣豪・里見、殿様・丹波、忍者・谷の大活躍

(つうかい さんびきのごいんきょ) 1999年

掲載2008年09月12日

関屋勘兵衛(里見浩太朗)は、主君の命令で敵討ちを果たしたもの、お家断絶で失業した63歳。雲隠れ玄夢(谷啓)は、かつては霧隠れ才蔵をもしのぐといわれたほどの天才忍者と自称する67歳。乾三四郎(丹波哲郎)はさる西国の元藩主だが、家督を譲り諸国漫遊を続けるという77歳。偶然であった三匹が、お蝶(岩崎ひろみ)とともに旅をしながら、世直しをしていくという物語。
 面白いのは、三匹が正義の味方というよりは、それぞれ自分の生き方を持ったユニークな人物というところ。勘兵衛は、剣の腕をいかして蝦蟇の油売りなどしているが、古い武士の生き方にこだわるところがある。玄夢は「がちょーん」と調子がよく、金儲けに目がない。殿様の三四郎は、「今が青春」と美女に夢中。そんな三人なので、貧乏藩を救うために、盗賊の逃亡を助ける家老(大出俊)に対しても、成敗すべきか、宮仕えの苦しさを察するべきかで意見が分かれたりする。
 なお、当初は「二匹で」という企画もあり、三匹になった時点で「三匹の侍」の実績を持つ丹波哲郎が俄然張り切りだしたというエピソードも。「一枚の紙が二枚に、四枚に…」という縁日の場面で出てくる蝦蟇の油売りの口上は、里見浩太朗が京都映画村で特訓を受けたという。ご隠居パワーに元気をもらう、まさに痛快なシリーズ。

掲載2008年05月09日

『旅路』
原案・長谷川伸、脚本・監督稲垣浩。
股旅初挑戦の池部良はスタイル抜群の渡り鳥

(たびじ) 1955年

掲載2008年05月09日

旅がらす三日月直次郎(池部良)は、義理のために見殺しにしてしまった代貸政吉の妻おたか(岡田 莉子)と金之助(市川かつじ)を故郷に送り届けようとする。しかし、やくざと駆け落ちしたおたかを実家は受け入れてくれない。仕方なく、直次郎の故郷・信州に向う三人。そのうち、金之助は「おじちゃん」と直次郎を慕うようになり、直次郎もおたかに惹かれていく。そんな折、金之助が思い病にかかり、金がいる。直次郎は、自分の体を喧嘩場に売るしか、金を得る方法を思いつかなかった…。
 「直次郎というバカ野郎は、唄と博打と喧嘩のほかは何もできねえ」
原案は長谷川伸。得意のやくざと母子ものだが、脚本・監督の稲垣浩は、べたべたした書き方はせず、さらりと男の心情を描いてみせた。
 主演の池部良は、これが股旅映画初挑戦。すらりとした長い足で実に姿のいい渡り鳥ぶりを見せている。また、お調子者のちんぴらだんどり三太を加東大介が好演。「そばへ寄るな、油虫め!」と直次郎にののしられても、「そらひどい」とめげずについていく。親子を見守る居酒屋の親父・藤原鎌足、零落した親分・小沢栄も味がある。また、稲垣監督に見出された子役・市川かつじがいい表情を見せる。ラストシーンの余韻は、股旅ものならでは。

掲載2008年01月17日

『翔ぶが如く』
西郷吉之助の西田敏行はまさにはまり役!
篤姫教育係の幾島(樹木希林)も熱演。

(とぶがごとく) 1990年

掲載2008年01月17日

外国船がたびたび来航するなど、幕末の日本の行く末を憂う薩摩藩主島津斉彬(加山雄三)は、活動の最中に病に倒れる。斉彬に引き立てられた西郷吉之助(西田敏行)は、その本復を願い、庭先で祈り続ける。願いが通じたのか、斉彬はやっと回復。吉之助は涙わ流して喜ぶ。そして、再び動き出した斉彬が提案したのは、自分の養女・篤姫(富司純子)を十三代将軍家定に嫁がせることだった。
 私は先日、篤姫ゆかりの地を鹿児島に訪ねたが、現地では「西田さんの西郷さんはよかった」と今でも語り継がれている。確かにはまり役。また、市内には巨大な島津斉彬公の像があり、よくみると、それはちょっと太めの加山雄三にそっくり!! ちょいとキザに決めた大久保利通像もよく見れば、このドラマの鹿賀丈史に似ている気もする。そっくりさん大集合ドラマといえるのである。
 斉彬から「篤姫輿入れの物品を整えよ」と命じられて、「なんとわしが」と困惑する西郷と、篤姫の教育家係・幾島(樹木希林)のやりとりはとぼけているのか真剣なのかわからないほど面白い。
 一方で、結婚相手である家定との間にこどもが授かることが絶望的だと知りつつ、斉彬の「上様に次期将軍を徳川慶喜と推薦するように」と厳命を受けた篤姫。その哀しみと決意の表情が美しい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。