ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2007年01月11日

『立花登 青春手控え』若き中井貴一が牢医師として人生勉強。柔術を駆使して、難問に立ち向かう。

(たちばなのぼる せいしゅんてびかえ) 1982年

掲載2007年01月11日

医学を志して、北の羽後亀田から江戸に出てきた二十歳の青年・立花登(中井貴一)。しかし、江戸で寄宿する町医者の叔父・玄庵(高松英郎)は、指導をするというよりは、登を都合よく使うようなところがあった。叔父一家の家計を助けるために、小伝馬町の牢医師になった登は、そこで人の心の表と裏を体験。医師として男として成長していく。
 第一回は、仮病を使って登に、仲間から金を受け取って、愛する女おみつに渡してほしいという男(高岡健二)の話。「男と見込んで」とまで言われ、真っ正直に男の頼みを聞いた登だが、肝心の仲間は海千山千のやくざ系。しかも、おみつにも事情が…。
 原作は藤沢周平。青春ドラマの中にも、事件あり、人間模様ありの濃い物語になっている。中井貴一は「先生と呼ばれると尻が落ち着きません」と初々しい。叔父の家で使用人扱いされ、土間で食事しても、女中おきよ(塩沢とき)と冗談を言い合う。屈折しつつも明るい好青年。時には特技の柔術で戦う。人を斬らないのもミソ。登を呼び捨てにし、「だって約束があるんだもーん」とわがまま放題の玄庵の娘を宮崎美子、娘に手を焼く玄庵の妻に中原ひとみ、世の中の裏を知り尽くした親分藤吉に地井武男、お調子者の下っ引きにさくら金造、登を見守る牢役人平塚源三郎に篠田三郎など充実したキャストが登を支える。

掲載2006年12月21日

『忠臣蔵』天下の二枚目・長谷川一夫の大石内蔵助。雷蔵の浅野内匠頭、勝新の赤垣源蔵にも涙。

(ちゅうしんぐら) 1958年

掲載2006年12月21日

元禄14年、勅使饗応役の播州赤穂藩主・浅野匠頭(市川雷蔵)は、指南役の吉良上野介(滝沢修)から、執拗な仕打ちをうけ、ついに殿中松の廊下で、上野介に刃傷におよぶ。内匠頭は即日切腹。上野介にはおかまいなしという不公平な裁きは、波紋を呼ぶ。国元で知らせを受けた、浅野家家老・大石内蔵助(長谷川一夫)は、密かにある決意を固めていた。
 「忠臣蔵」初のカラー映画として、華やかさは天下一品。広大な松の廊下、吉良邸のセットなど、映画全盛期ならではの豪華版だ。長谷川一夫は、後に大河ドラマ「赤穂浪士」に主演。当時の視聴率で最高50パーセントを超えるという人気ぶりを見せたが、映画版では、抑えた演技の中にリーダーとしての貫禄、スターの華やかさを見せている。その動向を探ろうとスパイを放つ、上杉家の家老千坂兵部(小沢栄太郎)の「苦虫顔」にも注目。
 出色なのは、勝新太郎の赤垣源蔵。討ち入りの日、雪の中、兄を訪ねるが、あいにく兄は不在。仕方なく、座敷に兄の羽織をすえて、ひとり別れを告げる。愛嬌者の女中がくると、すかさず、涙を隠し、いつものお茶目っぷりを出して、「今度、ここにくるのは夏の盆のころか」などととぼけた対応をして去っていく。講談でもおなじみの場面だが、勝新太郎の芝居に思わずぐっとくる。

掲載2006年12月07日

『忠臣蔵 天の巻・地の巻』阪妻の内蔵助に嵐寛、月形、志村喬も!千恵蔵の内匠頭&立花左近二役もお楽しみ。

(ちゅうしんぐら てんのまき ちのまき) 1938年

掲載2006年12月07日

元禄14年。勅使饗応役を仰せつかった赤穂藩主・浅野内匠頭(片岡千恵蔵)は、儀礼一般の指導役である高家筆頭の吉良上野介(山本嘉一)に対して、殿中松の廊下で刃傷事件を起こす。内匠頭は、即日切腹。吉良にはお咎めなし。お家断絶、城明け渡しとなった赤穂の浪士たちは、国家老・大石内蔵助(阪東妻三郎)を中心に、殿の遺恨を晴らすため、吉良邸を目指す…。
 日本映画の父・マキノ省三没後10周年記念作品として、前編「天の巻」を息子であるマキノ正博が監督。目指したのは、「忠臣蔵の決定版!」
 阪妻のセリフは「まあず、亡君ご舎弟大学様をもって…」「申し上ぐるでござある」などとゆっくりながら、者狩りの展開は速い速い。なんと始まって9分で殿は切腹。総計二時間ほどで討ち入りも完了というテンポのよさだ。
 みどころのひとつは、内匠頭と立花左近の二役をこなす片岡千恵蔵。「立花左近」を名乗って、東下りの道中である内蔵助に、本物の左近(千恵蔵)が面会する。一触即発。双方の連れが刀の柄に手をかけて左右に控える中、内蔵助が差し出した白紙の道中手形を見て、誰だかさとる左近。そして、本物の道中手形を内蔵助に…。千恵蔵の、いい役全部お任せ!の貫禄演技。左近を前にしたピンチにも脇息にもたれ、悠々とした阪妻がカッコいい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。