ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2006年10月05日

『たけし×勝新 座頭市』金髪たけしVS58歳円熟勝新!共通点は、アイデアと即興性?

(たけし×かつしん ざとういち) 

掲載2006年10月05日

勝新太郎自らが、下母沢寛の原作から見出したキャラクター「座頭市」。盲目の渡世人で、酒と博打は大好きだが、弱い者と女にはとことんやさしい。弱い者いじめをするやつには、仕込み杖の居合いを駆使して、徹底的に戦う男。映画版で26本、テレビ版で100本もの「座頭市」に主演した勝新太郎が、自身で監督・脚本を担当し、見込んだ俳優たちを集めて製作したのが、1989年の映画「座頭市」だった。共演は樋口可南子、緒形拳、陣内孝則、片岡鶴太郎、泉谷しげる、三木のり平、川谷拓三、ジョー山中、安岡力也、内田裕也など。私かつて片岡鶴太郎ご本人から、この撮影現場の話を聞いたが、とにかく「勝新太郎の眼力」には驚かされたという。市として目を閉じているはずなのに、隅々の動きまでキャッチし、「ここはこうだ」と突如「監督」になる勝。「脚本は読んでこなくていい」とアイデアが思い浮かぶと変更は当たり前だった。
 一方、「金髪の座頭市」と話題になった北野武版も、浅野忠信、大楠道代、夏川結衣、ガダルカナル・タカ、石倉三郎、岸部一徳、柄本明らユニークな顔ぶれが集結。大衆演劇の「美女」橘大五郎も抜擢して、新鮮さも出した。勝・北野両作品に共通するのは、とにかくアイデア豊富、映像として面白さにこだわっているところ。既成のヒーロー像にない個性は「座頭市」ならでは。

掲載2006年03月23日

「徳川おんな絵巻」 日本の名城を舞台に女の愛憎劇が炸裂。#25「仮面の女」#26「悪霊の城」は極細眉毛の加賀まりこの女間者が!

(とくがわおんなえまき) 1970年〜1971年

掲載2006年03月23日

時代劇で女の愛憎劇といえば、「大奥」シリーズが代表作だが、この「徳川おんな絵巻」は、その地方キャラバン版というところ。名古屋城から始まって、日本各地の名城をとりあげ、その史実や言い伝えを基に女たちの秘められた悲喜劇に迫るオムニバスドラマだ。
 #25「仮面の女」#26「悪霊の城」の舞台は、宇都宮城。時代劇ファンなら「宇都宮」と聞いただけで、「吊り天井」を思い浮かべるとはずだが、ここではその伝説の裏側を描き出す。
 上様に屈折した思いを抱く本田正純(佐藤慶)は、タカビーな正室(村松英子)ともしっくりいかず、顔は暗い。そんな折、上様が日光ご参詣の途中に城に立ち寄るということに。そこで本田家のからくり師山口新八郎(中山仁)と大工の棟梁(村上冬樹)を巻き込んで、前代未聞の大からくりの陰謀が仕掛けられる。間者として忍び込んだ花野(加賀まりこ)は間者の権限を超えても、この陰謀を阻止しようとがんばるものの、敵は多勢。そうこうするうちに上様の頭上にどんどん下がる、吊り天井!! 花野ピンチ!!
 70年代らしい極細眉毛できりりとしたまりこは、立ち回りもなかなかの迫力。中山仁の好人物ぶりもいい。本当は殿を大好きだった正室の律子と正純の悲劇も織り込みつつ、歴史的大事件をどう救うのか。「おんな絵巻」シリーズ最大のスペクタクルをお楽しみに。

掲載2006年01月04日

「逃亡」無罪の罪で追われる上川隆也の運命は?市川崑監督の「光と影」の演出に注目

(とうぼう) 2002年

掲載2006年01月04日

江戸末期。甲州出身の無宿もの源次(上川隆也)は、岡っ引きの梅三郎(宅麻伸)に微罪で牢に放り込まれる。どうやら梅三郎は、源次に恨みのある様子。しかし、源次には思いあたることがない。そんなとき、江戸に大火が発生し、牢から出された源次は刻限までに戻らなければ死罪だと言い渡される。が、源次の行く先々に、梅三郎の罠が仕掛けられていた。
 原作は松本清張。人の心の暗い奥底を描き、最後の最後までなぞめいた展開は、さすが。また、第一話、二話の演出をした市川監督の濃厚な「光と影」にも注目したい。
 私は先日、主演の上川隆也にインタビューした。この番組の撮影は、「市川監督の演出はミリ単位。とにかく全力疾走」だったという。それまで時代劇では大河ドラマの「毛利元就」など武士の役が多く、無宿者は初だったため、当初市川監督に「それじゃ、武士の歩き方だ」と繰り返し注意を受け、「必死に逃げる」ことを要求された。確かに源次はよく走る。シーン撮影のたびに全力で走り、倒れこむほどの勢いだった。また、敵役の宅麻伸の役への集中力はものすごく、普段は陽気な人柄が、本番では「鬼気迫るほど」だったらしい。
 ほかにも原田美枝子、浅丘ルリ子、石橋蓮司、神山繁ら豪華キャストが終結。中でも、源次をかばう井川比佐志との男同士のやりとりや、ヒロイン野波麻帆とのシーンは新鮮。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。