ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2003年09月12日

「田村正和祭り」美剣士・腕下主丞の「乾いて候」から「子連れ狼」まで!マネのできない正和的世界。

(たむらまさかずまつり) 

掲載2003年09月12日

田村正和。こう書いただけで、何か一般人とは異なる世界を感じさせる。
名優・阪東妻三郎の息子という立場でありながら、他の兄弟とまったく違う雰囲気のゴーイングマイウェイ。「ニューヨーク恋物語」といったラブストーリーでも、「パパはニュースキャスター」といったコメディでも、そして「古畑任三郎」といったミステリーでさえも、ファッションもヘアスタイルも統一。その正和が唯一、いつものファッション&ヘアから離れるのが時代劇なのだ。
 将軍・吉宗の子でありながら、父に捨てられ、その毒味役となった悲運の男・腕下主丞を描く「乾いて候」。暗い過去を持つ美剣士は、まさに正和のためにあるような役。そこに高廣、亮も共演した三兄弟が勢ぞろいというのも楽しみ。今は女優業から離れた宮崎ますみの姿が見られるのも貴重かも。
 また、妻を惨殺され、一子大五郎とともに冥府魔道に生きる拝一刀に扮した「子連れ狼その小さき手に」でも、例の低ーい声の中に子を思うやさしさがにじむ独特の拝一刀像を作った。柳生烈堂(仲代達矢)との死闘でさえも、どこか華麗な感じがする。
 こうして見ると、正和の場合、それが時代劇であっても、そこに独自性が必ず存在する。その意味でも他者にはマネのできないムードの俳優なのである。

掲載2002年12月06日

「忠臣蔵」今年は討ち入り300周年!里見浩太朗祭りで、正統派「忠臣蔵」をご堪能あれ。

(ちゅうしんぐら) 1985年

掲載2002年12月06日

 「紅白を脅かした男」あえてこう呼ばせていただきたい。なんたって、毎年、大晦日に大型時代劇に主演。かの「紅白歌合戦」を堂々と向こうに回し、その好評ぶりで話題になった、里見浩太朗の「大型時代劇シリーズ」が、今年、このチャンネルで「里見浩太朗祭り」として、蘇る!
 まずは「忠臣蔵」に注目。繰り返し映像化されてきた作品だけに、期待するのは、そのキャスティング。大石内蔵助に里見浩太朗、浅野内匠頭は、「若殿」というよりは、嫌な上司にいびられる中間管理職のようなイメージだったが、目に力を込めた怒りの演技はさすがの迫力。さらに、激することなく淡々としながらもイヤーな親父ぶりを見せる森繁上野介は、もうひとつの「芸」と感じ。
 辛い運命に翻弄されながらも、ひとつの道へとまっしぐらに進む四十七士たちの姿を、オーソドックスに描いた「忠臣蔵」だ。
 見逃せないのが、番組最後の「里見浩太朗インタビュー」。撮影の裏話や、出演者の意外な顔など、聞き逃せない話から、温和な里見さんが、鋭い観察眼を持った人だとよくわかる。
 討ち入りから300年。「忠臣蔵」好きな人も「忠臣蔵」初心者も、じっくり味わいたい作品。

掲載2002年11月15日

「忠臣蔵赤垣源蔵 討入り前夜」嫌われ者の弟の秘めた熱い思い。講談で人気の男泣きストーリーを阪東妻三郎が熱演。

(ちゅうしんぐらあかがきげんぞう うちいりぜんや) 1938年

掲載2002年11月15日

 今年は忠臣蔵討ち入り300年。これまでにも数多くの「忠臣蔵」が映像化されてきたが、本作品は、その中でもひとりの赤穂浪士の生き方にスポットをあてたしみじみとした名作。
 主家・浅野家が断絶してから、兄・伊左衛門(香川良介)のところに居候している赤垣源蔵(阪東妻三郎)は、鬱屈した日々を飲んだくれて過ごしている。あまりの変貌ぶりに兄嫁(中野かほる)や下男下女にまで蔑まれた源蔵は、兄の家まで追い出されてしまう。
 しばらくしたある雪の夜、源蔵はふらりと兄の家を尋ねてくる。兄の不在を知った源蔵は、兄の羽織を借りて、羽織を相手に杯を交わし、去っていく。
 タイトルの通り、討ち入りの前夜、最後の挨拶に訪れた男の姿である。原作は滝川紅葉。講談では「赤垣源蔵徳利の別れ」としてもよく知られている人気作。身内にも討ち入りの真実を明かさず、ただひとり兄の羽織と語りあう姿に、涙を誘われる。泣ける!
 阪東妻三郎は、単純明快、ストレートな正義の味方というよりは、放蕩、暴れん坊、だが実は熱いものを持った男、という役がよく似合う。
 共演は原健作、市川百々助、志村喬ら。仇討ちだけではない「忠臣蔵」の魅力がふくらむ一本。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。